「基隆の聖人」石坂荘作が好んだクルミ入り「岩櫃餅」復活プロジェクト

 本誌では、台湾との縁が深い群馬県のことを紹介することが多い。

 今でも台湾の人々から「台湾図書館の父」や「基隆の聖人」と尊敬されている石坂荘作(いしざか・そうさく 1870年3月6日〜1940年1月18日)のことも何度か紹介しています。

 本誌5月26日号でも、『石坂荘作と顔欽賢』の著者で、本会理事でもある手島仁・群馬地域学研究所理事長の協力もあり、石坂荘作を埋葬したお墓が石坂の姉の子孫によって発見されたことや、東京都内に住む石坂の弟の子孫が位牌を継承していたことなどを、上毛新聞の記事を基に紹介しました。

 石坂は群馬県吾妻郡東吾妻町(ひがしあがつままち)原町の出身で、日本人と台湾の人が席を並べて学ぶ初の夜間教育機関「基隆夜学校」や後の市立図書館となる「石坂文庫」、「和洋裁縫講習所」を創設し、人々が教育を受けることができるよう尽力しました。

 2018年には石坂の誕生日の3月6日を期して石坂荘作顕彰会(永井裕之会長)が発足しています。

 この石坂荘作顕彰会が石坂が好んだという「吾妻名産のクルミ入りの岩櫃餅(いわびつもち)」の復活プロジェクトを地元菓子店の協力の下に推進していて、このほど試作品を完成させたそうです。上毛新聞が「郷土の偉人ゆかりの銘菓を東吾妻町の特産品として活用したい考えで、年内の発売を目指す」と伝えています。

 ちなみに、東吾妻町の中澤恒喜(なかざわ・つねのぶ)町長も台湾との交流に熱心で、コロナ前の2018年2月に基隆市を訪問しています。中澤町長は「日台共栄首長連盟」にも加入しており、町を挙げての石坂荘作の顕彰活動が今後も展開されるようです。

—————————————————————————————–日本と台湾を結んだ石坂荘作(群馬・東吾妻町出身)が愛した味を再現 クルミ入り「岩櫃餅」が完成【上毛新聞:2023年6月29日】https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/306212

 台湾で活躍した群馬県東吾妻町原町出身の実業家、石坂荘作(1870〜1940年)が愛した「岩櫃(いわびつ)餅」の復活プロジェクトが進んでいる。クルミ入りの餅というわずかな情報を頼りに、地元有志でつくる石坂荘作顕彰会(永井裕之会長)が原町の菓子店と協力し、試作品を完成させた。郷土の偉人ゆかりの銘菓を東吾妻町の特産品として活用したい考えで、年内の発売を目指す。

 「吾妻名産のクルミ入りの岩櫃餅を送ってほしい」。荘作は古里の友人に宛てた手紙にこう記した。

 郷土のシンボルである岩櫃山の名を冠したとみられる餅は現代に伝わっておらず、食べたことがある人も、製法を知る人もいない。顕彰会は荘作が懐かしんだ味を形にしようと、数年前から検討。1年ほど前に地元の菓子店「藤井屋 政右衛門」に依頼した。

 同店の和菓子担当、上原芳文さん(43)は「戦前の食べ物なので素朴な感じがする。昔からあるシンプルな材料を生かしたい」と試行錯誤。国産餅粉とクルミ、しょうゆ、砂糖を主な材料に、クルミの食感を楽しめる軟らかな餅を完成させた。

 顕彰会は6月中旬に本年度総会を開催。その後、荘作研究の第一人者で元国立国会図書館副館長の宇治郷毅さんの講演を聞き、現代版岩櫃餅を試食した。味わった会員には「おいしい」「控えめな甘さがちょうどいい」などと好評だった。

 荘作は27歳で台湾に渡り、北部にある基隆(キールン)市で石坂商店を開業。はかりやたばこなど専売品の販売で成功した。台湾初の私立職業学校や近代図書館を設立するなど教育、文化の発展にも貢献。現地で「基隆聖人」と親しまれた。東吾妻町は荘作との縁で、台湾との交流事業に取り組んでいる。

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※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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