6月28日、アメリカの下院が米政府機関の幹部職員や軍人・軍属に対し、台湾当局との交
流を規制した国務省のガイドラインについて、規制の解除を求める超党派議員の議案を賛
成多数で可決した。
米国はこれまで「一つの中国」政策の下、政府当局者がホワイトハウスや国務省などで
台湾関係者と面会したり、台湾当局者と直接手紙のやり取りをすることなどを禁止し、国
務省や国防総省高官の台湾訪問も禁じていたが、上院でこの議案が可決されれば、規制は
解除されるという。
これは画期的なことだ。「台湾人公共事務会(FAPA)」も指摘するように、もし規
制が解除されれば「米台関係で歴史的な一歩」となる。
では、翻って同じく「一つの中国」政策を取り、国交がない台湾とは「実務関係」と位
置付けている日本はどうか。
外務省は昭和55年(1980年)に他省庁も拘束する内規を制定し、国家公務員の課長職以
上の訪台は認めてこなかった。これが日本の国益をも損ねてきた「一つの中国」政策の実
態なのである。
その後、22年を経た平成14年(2002年)に至り、外務政務官のときに訪台を希望したも
のの受け入れられずに辞任した水野賢一議員が11月22日の衆議院外務委員会でこの内規に
ついて取り上げた。この答弁の中で外務省側が内規の改定を約束したことで、ようやく課
長職以上の訪台が認められ、課長級以上でも、日台双方が正式メンバーとして加盟する国
際機関に関わる場合は柔軟に対応できるようになった。
しかし、訪台した課長が決断できる範囲などは極めて限られていると言ってよい。また
、課長職では政策決定や政策判断をすべき立場ではない。これでは日台関係の発展は望む
べくもなく、未だに「百年河清を俟つがごとし」の状態が続いているのが現状だ。
日本は台湾との関係を「実務関係」と位置付けるのであれば、その実務交流を拡大する
ためにも、局長や次官クラスが訪台することの方が理に適っている。アメリカに倣い、交
流規制を解除すべきなのだ。少なくとも、その声が国会議員の間から出て欲しいものであ
る。もちろん、将来的に日米が「一つの中国」政策を撤廃すべきは他言を要しまい。
(メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原正敬)
台湾交流規制 撤廃を米下院決議
【6月30日付 産経新聞】
【ワシントン=山本秀也】米政府機関の幹部職員や軍人・軍属に対し、台湾当局との交
流を規制した国務省のガイドラインについて、米下院は28日、規制の解除を求める超党派
議員の議案を賛成多数で可決した。規制解除には上院通過などが必要だが、共同提案者の
シャボット下院議員(共和党)は、「台湾を他の同盟国と同等に処遇すべきだ」と訴えた。
1979年に米政府が中国を外交承認したことで、国務省は政府幹部らの訪台や接触を規制
するガイドラインを政府機関や軍に通達。「ひとつの中国」という基本政策に沿って、日
常的な米台の交流や接触は、米国在台協会(AIT)など窓口機関を通じて行う状態が四
半世紀あまり続いてきた。
解除を求められているガイドラインの内容は、台湾の駐米職員とのホワイトハウス、国
務省庁舎などでの接触禁止▽双十節(実質的な台湾の建国記念日)レセプションへの米側
幹部の出席禁止▽大佐級以上の軍人や政府幹部の台湾への公用渡航の禁止−などだ。
共同提案に加わったタンクレド下院議員は、「規制を解除することで、台湾を自由と民
主に関する平等なパートナーとして処遇するよう国務省の官僚に迫ることが可能になる」
と、議案の意義を強調している。
台湾与党系の対米ロビー団体「台湾人公共事務会(FAPA)」では、「米台関係で歴
史的な一歩」と議案の下院通過を歓迎。ワシントンの中国大使館では、「米政府がひとつ
の中国政策を堅持するよう望む」として、表面的には慎重な構えをみせている。
米下院、台湾との外交規制緩和案を可決
【6月30日 日本経済新聞】
【ワシントン支局】米下院は28日、米政府当局者の台湾への渡航や台湾関係者との接触
などを制限した国務省の規制について、一部を撤廃する国務省関連予算案の修正案を可決
した。成立には上院での可決が必要だが、中国政府の反発が予想される。
米政府は1979年の中国との国交正常化以来、政府当局者がホワイトハウスや国務省など
で台湾関係者と面会したり、台湾当局者と直接手紙のやり取りをすることなどを禁止。国
務省や国防総省の高官が台湾を訪問することも禁じている。
下院の修正案はこれらの規制を撤廃する。ただ、台湾当局者の米国への渡航規制につい
ては触れていない。