豪とNZがソロモン諸島と中国の安保協定に「圧力と脅威」と反発

豪とNZがソロモン諸島と中国の安保協定に「圧力と脅威」と反発

 台湾は3月29日、ニュージーランド(NZ)、オーストラリア(豪)、カナダ(加)とともに、先住民族の経済、貿易、投資の問題を促進することに焦点を当てた初めての国際的な協力メカニズムである「先住民経済貿易協力協定」に正式加入し、発足メンバーとなった。

 このことを伝えた際、2019年9月に中国の介入で台湾と断交した南太平洋の島嶼国家であるソロモン諸島が、オーストラリアとニュージーランドとは重要な二国間関係にあるものの、中国と安全保障協定を結び、中国がソロモン諸島に軍事基地建設を計画していると取り沙汰されていることに触れた。

 またもや中国の「長い腕」がソロモン諸島にまで延び、歴史的に深いつながりがあり、主要援助国でもあるオーストラリア、ニュージーランド、米国などの危機感を募らせている。

 日本も米国に次ぐ第4位の援助国であり、近年、安全保障面から太平洋島嶼国家との関係を重視するようになっている。

 防衛省は一昨年4月5日、太平洋島嶼国で軍隊を保有するパプアニューギニア、フィジー、トンガの国防大臣や米・豪・英・仏など太平洋島嶼国と関係の深い国の代表者と安全保障上の課題などについて意見交換の場として「日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)」を開催する予定だった。防衛省が多国間防衛相会合を主催するのは初めてのことだ。

 しかし、新型コロナウイルス蔓延のため延期され、昨年9月2日にようやくテレビ会議形式で「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」を開催するに至っている。

 日本の岸信夫・防衛大臣をはじめパプアニューギニア、フィジー、トンガの国防大臣、そしてソロモン諸島の代表者も加わり、オーストラリア、カナダ、クック諸島、フランス、ミクロネシア連邦、キリバス共和国、マーシャル諸島共和国、ナウル共和国、ニュージーランド、ニウエ、パラオ共和国、ソロモン諸島、ツバル、英国、米国、バヌアツの21ヵ国が意見を交換した。

 この一角を占めるソロモン諸島は中国の働きかけで台湾と断交し、中国と国交を結び、さらには3月31日、中国との安全保障協定に仮調印し、基本合意したと発表した。

 時事通信は「ダットン豪国防相は先に地元テレビに対し、合意が成立すれば豪州沿岸から2000キロ以内のソロモンに、中国が海軍基地を構築する可能性があるとの認識を示した上、『インド太平洋の平和と安定にとって最良の利益だとは思わない』と強調。ロイター通信によると、米国務省も懸念を示している」と報じた。

 下記に紹介する読売新聞がさらに詳しく報じているように、中国が「海軍艦艇の補給拠点を築くことができれば、伊豆諸島からグアム、パプアニューギニアに至る『第2列島線』を越えた南太平洋での作戦継続能力を大幅に向上させることが可能になる」。

 中国が構想する第2列島線の内側に日本は入っている。ソロモン諸島に中国の軍事基地ができ、海軍艦艇の補給拠点を築くことになれば、日本にとっても安全保障上の大きな脅威となる。日本にも安閑としていられない事態が差し迫っている。

—————————————————————————————–中国が南太平洋の小国に接近、軍事拠点化を狙う?…豪首相「地域への圧力と脅威だ」【読売新聞:2022年4月3日】https://www.yomiuri.co.jp/world/20220403-OYT1T50048/

【ジャカルタ=川上大介、北京=大木聖馬】南太平洋の島嶼(とうしょ)国ソロモン諸島が近く、中国と安全保障協定を締結する。

 中国は、軍備や治安維持を他国に頼らざるを得ない小国のソロモン諸島に支援を通じて接近し、将来的な軍事拠点化も狙っているとみられる。南太平洋を「裏庭」とみなす地域大国のオーストラリアは危機感を募らせている。

■草案「治安維持 軍や警察要請」

 豪公共放送ABCなどによると、協定の草案には、▽ソロモン諸島が中国に対し、治安維持などのために軍や警察の派遣を要請できる▽中国は同諸島に海軍艦艇を寄港させ、物資を補給できる──などの内容が盛り込まれているという。ソロモン諸島は3月31日、協定の仮調印を済ませ、今後、両国外相が正式調印すると明らかにした。

 ソロモン諸島は人口約70万人の小国で、近年は中国からの経済支援が活発化している。2019年には台湾と断交し、中国と国交を結んだ。昨年11月に起きたマナセ・ソガバレ首相の退陣要求に端を発する暴動の後は、中国から警察関係者の派遣を受け入れるなど中国傾斜を強めた。

 南太平洋で長年影響力を維持してきたオーストラリアにとって、協定は受け入れがたい。ソロモン諸島を安保面で支援し、昨年の暴動でも軍部隊を派遣していたためだ。

 スコット・モリソン豪首相は、「地域の安全保障への圧力と脅威だ」と訴え、周辺国のニュージーランド(NZ)などの首脳らと対応を協議していく意向を示した。豪、NZ両国は、ソロモン諸島に派遣中の軍部隊の駐留延長を発表した。

 太平洋の島嶼国では、ソロモン諸島やトンガ、バヌアツ、キリバスなど10か国が中国と国交を結び、経済依存を強めている。豪調査機関「ローウィー研究所」リサーチフェローのミハイ・ソラ氏は、「(島嶼国に)中国軍が駐留すれば、豪州への監視や情報収集が強まる恐れもある」と話す。

 一方、中国外務省の汪文斌(ワンウェンビン)副報道局長は3月31日の記者会見で、「二つの主権独立国家の正当な権利だ。他国の干渉は許さない」と、豪州などをけん制した。

 中国は協定締結で治安面での関与を強め、台湾との外交関係を復活させないようにする思惑があるとみられる。また、海軍艦艇の補給拠点を築くことができれば、伊豆諸島からグアム、パプアニューギニアに至る「第2列島線」を越えた南太平洋での作戦継続能力を大幅に向上させることが可能になる。

 中国は、米英豪の安全保障協力の枠組み「AUKUS」(オーカス)を強く警戒しており、島嶼国への安保面での支援を進め、豪州へのけん制を強めていく狙いがあるとみられる。

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