米の対中政策 戦略的忍耐では生ぬるい

米の対中政策 戦略的忍耐では生ぬるい

 米国連邦議会の上院は1月26日、国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏(元国務副長官)を賛成78、反対22で承認した。

 それに先立つ1月23日、国務省が台湾に関する立場についての声明として「中国の台湾への軍事圧力は地域の平和と安定を脅かす」(PRC Military Pressure Against Taiwan Threatens Regional Peace and Stability)を発表し、「われわれは北京に対し、台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止し、台湾の民主的に選ばれた代表者と有意義な対話を行うことを要請する」と表明するとともに、「三つの米中共同コミュニケ、台湾関係法、6つの保証で示された米国の長年の責任を継続する」「台湾が十分な自衛能力を維持するのを引き続き支援してゆく」との立場を明らかにした。

 「米国の台湾への関与は盤石であり、台湾海峡の両岸や地域の平和と安定の維持に貢献していく」とも述べ、トランプ政権の「米台連携強化路線」を引き継いでゆく立場を明らかにした。

 一方、ホワイトハウスのサキ大統領報道官は1月25日の記者会見で、対中国政策について「われわれの中国への対応は過去数カ月と同じだ」と語り、トランプ政権の強硬路線を維持する考えを示した。しかし「新たな方針が必要になっている。戦略的忍耐を持ちながら臨みたい」とも述べ、オバマ政権時代に経済制裁などで圧力をかけながら変化を引き出そうとした対北朝鮮政策を中国に対しても選択する余地を残したようだ。

 この発言に「戦略的忍耐では生ぬるい」と噛みついたのが産経新聞「主張」だ。「主張」は「日米で急ぎ、方針を一致させたい」と、日本の出番であると主張する。同感だ。

 米国は中国と国交を結んだ1979年1月1日以降の歴代政権がとってきた「中国が経済的に発展すれば民主化が促進され、国際社会の一員として責任ある振る舞いをする」という幻想を捨てたのではなかったのか。「米国はもはや、経済的関与だけでは中国共産党の権威主義的体制を自由で開かれた社会に転換できるとは期待していない」(2019年10月24日、ペンス副大統領演説)のではなかったのか。

 中国にも台湾にもいい顔をしようという政策は必ずや米国の国益を損ね、中国がほくそ笑む。そして「自由で開かれたインド太平洋」は不安定になる。理由は明白だ。中国が「一つの中国」原則を捨てないからだ。

 日本も米国と同じく「中国と深刻な競争をしている」状況にあることを認識し、肚をくくらなければなるまい。

—————————————————————————————–米の対中政策 戦略的忍耐では生ぬるい【産経新聞「主張」:2020年1月27日】

 中国の習近平国家主席が、シンクタンク「世界経済フォーラム」(WEF)が主催するオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で講演した。

 習氏は米国を念頭に貿易戦争は「各国の利益を損なう」と指摘し、「新冷戦や制裁は、世界を分裂や対抗に向かわせるだけだ」と強調した。

 バイデン米新政権発足後、初めての習氏の国際舞台での発言である。トランプ前政権の対中強硬路線を批判することで、政策転換と協調を呼びかけたとみられる。

 ホワイトハウスのサキ報道官がただちに強硬路線の不変を表明したのは適切だった。

 中国との対決は、海洋などにおける現状変更の試みを阻止し、強権主義から民主主義を守ることが目的だ。そこには妥協の余地はないはずである。

 演説で習氏は、「違いを尊重し、他国の内政に干渉すべきではない」と語った。人権問題に厳しい姿勢を取るバイデン政権の機先を制する思惑があるのだろう。

 習氏は「対話で意見の食い違いを埋める」とも述べたが、発言をうのみにしないことが肝要だ。習氏は2015年に訪米した際、南シナ海について当時のオバマ大統領に「軍事化の意図はない」と語ったが、その後、軍事施設が建設されたのは周知の通りである。

 習氏の言葉を信じ、中国への関与政策を進めたのは、オバマ政権であり、副大統領を務めていたバイデン氏の新政権には当時の高官が多く名を連ねる。

 バイデン氏は、優先課題とする気候変動の分野では中国との協力を模索する姿勢を示している。そこをつけ込まれ、強硬姿勢が揺らがないか。内外でそんな疑念も強いと認識してほしい。

 気になるのは、バイデン新政権の対中政策が定まっていないことだ。サキ報道官は「新たな取り組みが必要だ。戦略的忍耐も持ちながら進めたい」と語っている。

 「戦略的忍耐」は、オバマ政権が北朝鮮政策で示した方針だ。忍耐という待ちの姿勢が、結果的に北朝鮮の核開発進展を許してしまった。これを想起すれば、相手が北朝鮮であれ、中国であれ、そうした態度には疑問符がつく。

 サキ報道官は対中政策の決定では「同盟国と話し合いたい」とも述べた。最も重要なのは、中国の隣国日本に他ならない。日米で急ぎ、方針を一致させたい。

──────────────────────────────────────※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

タグ: , , , , , , , , , , , , , , , ,