李登輝前総統の「週刊東洋経済」連載「長老の智慧」(最終回)

李登輝前総統の「週刊東洋経済」連載「長老の智慧」(最終回)
台湾はすでに一つの独立国 「新台湾人」が育ってほしい

 李登輝前総統が昨年12月3日発売の12月8日号から「週刊東洋経済」(東洋経済新報
社発行)誌に「長老の智慧」連載されてきました。先週発売の1月12日号に「その5」
(最終回)が掲載されましたのでご紹介します。

 なお、下記にこれまでの見出しを掲載しましたが、第1から第4回までの「長老の智慧」
は本会ホームページに掲載しています。通読すると、李登輝前総統のおっしゃることが
よく分かってきます。                         (編集部)

■週刊 東洋経済
 http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/

・その1 台湾の基礎を築いた後藤新平 独自の精神性にこそ惹かれる
・その2 現実と仮想との混乱を憂う 最も重要なのは信仰心
・その3 アジアでは米中の覇権争い 日本は自信を持って行動を
・その4 有能な人間を特別部局に 試験だけに強い人材は無用
・その5 台湾はすでに一つの独立国 「新台湾人」が育ってほしい

■日本李登輝友の会ホームページ
 http://www.ritouki.jp/


「週刊東洋経済」1月12日号(1月7日発売)掲載「長老の智慧」

李登輝 その5【全5回】

台湾はすでに独立国で.今必要とされているのは台湾人としてのアイデンティティト。そ
の思いは李氏の信念になっている。本省人、外雀人といった区分けがなくなることが願
いだ。

■李登輝 り・とうき●1923年台湾生まれ。京大農学部を経て49年台湾大卒。米コーネル
大博士。72年に政界入り。88年蒋経国・総統死去により副総統から総統に就く。96年に
は直接選挙制による初の総統に。2000年退任。台湾の民主化を指導した。

台湾はすでに一つの独立国
「新台湾人」が育ってほしい

 今年3月に台湾では総統選挙が行われます。いろいろな人から選挙について尋ねられ
ますが、何も言いたくありません。私は国民党の指導者として台湾の民主化を進めまし
たが、国民党から見れば反逆者でしたので、潔く国民党から離れました。総統に誰がな
るかは台湾人民が決めることであり、私ではありません。

 ただし、こうしたことを指摘しておきたい。台湾では総統の権限が強い時代が長く、
総統選に勝つことが政治の実権を握ることだと誰もが思っています。しかし、本当は国
会(立法院)が政治の主になるべきなのです。国会が人民の声を反映して発表し、決め
ていく。それが(民主主義国では)当たり前のはずです。

 台湾では憲法改正が大きな争点になっています。陳水扁政権は改正に前向きで住民投
票も行いたい意向ですが、そんなに改正を急ぐ必要はないと考えています。少しずつ見
直していき、その後で名称の変更も含めて住民投票すればよい。

 同じように台湾の国連加盟についても、わざわざ住民投票にかける必要もないでしょ
う。実際のところ、住民投票で国連に加盟すべしとなっても、何も具体的なことはでき
ません。台湾は国際的に法的な地位を獲得しておらず、国連での加盟賛成は少数です。
逆に、中共(中国)は台湾は自国の領土だとあらためて持ち出してくるだけです。

 アメリカは台湾の法的地位についてあいまいな態度をとっています。1951年のサンフ
ランシスコ条約でも、日本が台湾をどこに返すか、一言も触れられていません。ちなみ
に米国は1898年のスペイン戦争の戦後処理でも、フィリピンやキューバの帰属をはっき
りさせませんでした。米国は台湾について明確には言わないのです。

 私は以前から、「台湾はすでに独立した一つの国である」と言っております。ですか
ら今さら独立うんぬんという必要もないと考えています。台湾は国際法上で判例のない
特殊な状態にあります。そうした状態で、台湾の人々に「台湾は自分たちの国だ」とい
う確信がないと誰も助けてはくれません。

 台湾人に必要なのは、台湾人としてのアイデンティティを持つことです。台湾人は自
国の歴史というと大陸のことばかりでしたので、私は総統時代に台湾の歴史を編纂した
新しい教科書もつくりました。「本省人(戦前からの住人)」、「外省人」という区分け
ではなく「新台湾人」が一人でも多く育つことが私の願いです。

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