日台間の留学支援策を強化せよ  浅野 和生(平成国際大学副学長)

日台間の留学支援策を強化せよ  浅野 和生(平成国際大学副学長)

【世界日報「View point」:2022年10月10日】https://vpoint.jp/opnion/viewpoint/221693.html

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が、去る9月14日の記者会見で、新型コロナウイルスのパンデミックについて、「終わりが視野に入っている」と語り、9月の感染状況の分析から「パンデミックを終わらせるのにこれほど良い状況はない」と述べた。日本でもコロナ禍以後に向けた動きが活発化してきたが、中でも途絶えていた日本と海外との人的交流の回復が急がれている。

 岸田文雄首相は22日のニューヨーク証券取引所での講演で、日本は世界と人・モノ・カネの自由な往来によって繁栄してきた国だと述べ、訪日観光客の重要性に触れ、新型コロナ感染拡大による人的往来の遮断を切り替え、水際対策を大幅に緩和すると表明した。

◆コロナで短期留学激減

 これにより10月11日から個人旅行客の受け入れを解禁、日本人を含めて入国者数の上限が撤廃される。ビザなし短期滞在制度も復活。2020年2月から始まった入国規制が、32カ月ぶりにほぼ撤廃される見通しとなった。しかし、将来を見据えたとき、観光客の往来より重要なことは、海外から留学生を受け入れ、日本の若者を海外に送り出すことである。

 文部科学省は6月下旬、留学生の往来について、27年をめどにコロナ禍前の水準に回復するという目標を明らかにした。しかし、18年に日本から海外に飛び立った留学生が11万5146人だったのに対して20年度には1487人まで激減したから、その回復は容易ではない。

 台湾の教育部(文科省に相当)のまとめによると、台湾に滞在する日本人留学生は、14年の5816人が19年には1万1064人へと5年間でほぼ倍増したが、21年には5224人と、13年以前の水準まで落ち込んでしまった。中でも落ち込みが大きいのが、半年や1年といった短期留学生で、19年の2709人が21年にはわずか366人となった。

 他方、日本に滞在する台湾人留学生は、14年の6231人が19年には9584人と1・5倍に増大していた。しかしこれも21年には4887人となって、10年前より低い水準に落ち込んだ。このうち短期留学生は19年の約1600人から21年には152人にまで減少した。

 留学生往来のメリットは、留学した本人が外国語の高い運用能力を修得し、その後の人生においてそれを活用できることばかりでなく、相手国の文化を理解した人材が双方で増加し、自国文化の価値に新たな光が当てられることにもある。さらに留学中に結ばれた現地の人びととのつながりが生涯続くので、その人と人のネットワークが新たなビジネスチャンスや学問研究の可能性を高め、災害時や国際戦略上の相互支援の枠組みにまでつながる。

 無論、留学には多額の費用が必要である。だから日本は、国家として戦略的な留学生支援策をもたなければならない。今日の日本が関係を強化すべき対象は、安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」をおいて他にない。つまりQUAD(日米豪印)と台湾および東南アジア、さらには太平洋諸国である。当然、日本はそれらの各国に向けて留学生を送り出すべきであり、またそれらの各国から留学生を迎え入れなければならない。

 中でも一番大事なのが台湾である。ロシアのウクライナ侵攻から我々が学んだことは、小国が大国による侵略に対抗するには、周囲の支援国との紐帯(ちゅうたい)を信頼し、孤立感を抱くことなく、侵略国に立ち向かう強い心を長期にわたって保つことが最も重要だということである。「台湾有事は日本の有事」とは故・安倍元総理の卓見であるが、だからこそ日本は、台湾との紐帯を深めることで、台湾併合に邁進(まいしん)する中国に対抗する強い心を、台湾の人びとが抱き続けることを支援しなければならない。これは日本自身のためであり、東アジアの平和と安定の礎を築くためである。

◆中国の膨張防ぐ防波堤

 文科省肝煎りの「トビタテ!留学JAPAN」が、来年度から5年間で5000人の日本人留学生派遣を目指すなど、さまざまな支援策が強化されようとしている。今こそ日本は、公的資金と民間資金を動員して、台湾に向かう日本の若者を支援し、台湾から多くの若者を迎え入れるべく、戦略的に留学生支援策を展開しなければならない。それが、日本、そして台湾を中国の膨張主義から守る防波堤構築へとつながるのである。

(あさの・かずお)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

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