台湾は日米と共に民主主義の礎を築く  蕭 美琴(駐米台北経済文化代表処代表)

台湾は日米と共に民主主義の礎を築く  蕭 美琴(駐米台北経済文化代表処代表)

 2020年7月から駐米台北経済文化代表処代表をつとめる蕭美琴氏。1月20日のバイデン氏の大統領就任式に正式に招待されたことが大きなニュースとして伝えられましたので、日本でもかなり知られるようになったのではないかと思います。

 長老教会牧師の父と米国人を母として神戸市に生まれ、米国の大学院修了後は政界に進出して立法委員を4期つとめ、総統府直属の国家安全会議諮問委員を経て、初の女性駐米代表となっています。

 本日の「WEDGE infinity」に「台湾は日米と共に民主主義の礎を築く」と題して寄稿しています。

 蔡英文氏が民進党主席時代に来日したときに同行してきたり、超党派の立法委員でつくる「台日交流聯誼会」の幹事長をつとめていましたので、生まれ故郷でもある日本に関心が深いとは思っていましたが、まさか日本のメディアに寄稿するとは思ってもみませんでした。

 昨日の本誌で、駐日台湾代表の謝長廷氏が米臨時代理大使のジョセフ・M・ヤング氏を港区白金台の代表公邸に招いて会食し、そこに日本の政界要人を同席させたことをご紹介しました。中国のこともよく知る謝長廷氏ならではのウィットに富んだ招待でした。

 蕭美琴・駐米代表の日本メディアへの寄稿も、謝長廷・駐日代表に負けず劣らずの意表を突くもので、これからバイデン政権とどのように渉り合っていくのか楽しみです。

—————————————————————————————–台湾は日米と共に民主主義の礎を築く─押し寄せる中国の脅威 危機は海からやってくる蕭 美琴(駐米台北経済文化代表処代表)【WEDGE infinity:2021年5月27日】https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23025

 今年2月、バイデン米大統領は国務省で就任後初めての外交演説に臨み、「外交を再び対外政策の中心に据える」と発言したとき、多くの人がその真意を測りかねた。「米国の最大の財産」である同盟国や重要なパートナーと「肩を並べる」と明言した大統領の次なる行動は何か ── 。

 しかしバイデン政権は、憶測が飛び交う余地を与えなかった。発足から2カ月後、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が「強固な日米同盟」を再確認するために、初の外遊先となる東京へ向かい、象徴的な第一歩として日米安全保障協議委員会(日米「2プラス2」)が開催されたのだ。さらに米アラスカのアンカレッジで開催された、ブリンケン国務長官と中国の楊潔?(ヤンジエチー)共産党政治局員との会談において、米国は明確で断固とした立場を表明した。

 こうした動きは台湾で歓迎された。バイデン政権がインド太平洋地域を重視し、米国の外交的な取り組みに同盟国やパートナーを積極的に巻き込む考えを持っていることがわかったからだ。台湾がとりわけ安心したのは、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が出席した東京での日米「2プラス2」会談後、日米が共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を発表したからだ。

 日米の共同声明が台湾に言及したことは、さまざまな面で重要な意味をもつ。米国側で注目すべきなのは、台湾への支持が長期にわたり超党派で行われてきたことだ。私は台湾の駐米代表就任以来、米国の対台湾政策には強い継続性があるということに着目してきた。バイデン政権が台湾に対する支持を「確固たるもの」と位置付けたことだけでなく、そのほかにも具体的な進展があった。

 今年3月に米台が沿岸警備の協力強化を進めることで一致し、覚書に署名したこともその一つだ。またバイデン政権が新たに定めた暫定版の国家安全保障戦略指針のなかで、台湾は「先進的な民主体制であり、重要な経済・安全保障上のパートナー」とされている。さらに米国は、中国による台湾に対する支配力と武力の行使に関する懸念も繰り返し強調している。

◆中国の抑圧の「最前線」日本の支持に感謝

 その一方で台湾は、日本政府が引き続き台湾への支持を公に表明してくれたことに感謝している。2020年5月、鈴木馨祐外務副大臣(当時)は、自身のブログで「台湾との関係は我が国の安全保障上も生命線と言っても過言ではない」と発信した。また、中山泰秀防衛副大臣も20年12月、台湾の安全保障を「アジアのレッドライン」と呼び、バイデン次期政権(当時)に対して、台湾を強力に支援するように要請した。

 さらに今年になって、茂木敏充外務大臣と岸信夫防衛大臣が、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて表明しただけでなく、菅義偉首相もまた「台湾の平和と安定は地域の鍵であり、日米で連携し、抑止力を維持する中で台湾と中国が平和的解決策を見出せるような環境を作る」と述べた。

 米国と日本の当局者が次々に台湾への支持を表明してくれるようになったのは、まさにタイムリーな動きだといえる。台湾は長年にわたって、中国による抑圧の最前線にいる。中国は、台湾の民主主義や自由、生活様式を弱体化させて破壊しようとしている。

 台湾は、新型コロナウイルス感染症の流行を封じ込めた自らの経験を世界中で共有したいと考えているが、中国の政治的圧力によって、17年以降、世界保健機関(WHO)にオブザーバーとして参加することを拒まれてきた。ジャーナリストやNGO関係者を含む台湾の人々は、国際的な問題に積極的に貢献し参画することを望んでいるにもかかわらず、国連施設に入り国際的な議論へ参加することを認められていない。中国が、国際機関の活動に台湾が参加することに強硬に反対しているためである。

 安全保障面では、中国がこの地域で威圧的な行動を強めており、不測の事態が発生するリスクが高まっている。中国は近年、台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入だけでなく、日本や周辺諸国でも上空飛行の頻度を増やし、範囲を拡大してきた。今年になって、中国はすでに「中国海警法」も施行している。これはアジアの地域情勢を不安定にして、台湾をはじめ近隣諸国との間に存在する問題を悪化させるものになるだろう。

◆日本にとって台湾は 普遍的価値共有する友人

 国際的な関心を集めているもう一つの問題が、不公正な貿易慣行だ。「フリーダム・ワイン」(編集部注・中国の制裁によって輸出ができなくなった豪州産ワインを、友好国が率先して購入することで支援する運動)という言葉を生んだ豪州産ワインに対する制裁に続いて、中国は3月1日から台湾産パイナップルの輸入も禁止すると発表した。害虫が検出されたというのがその理由だが、中国向けのパイナップルの99.97%は品質検査で合格していた。

 ありがたいことに、日本の消費者がすぐに台湾への支援を表明し、多くの台湾産パイナップルを即座に注文してくれた。日本のスーパーマーケットで台湾産パイナップルが売り切れ、棚が空っぽになった様子を写した写真は、台湾人の心を温かくした。また近年よく見られる、不公平な貿易体制を緩和するために志を同じくするパートナーが協力できることを示している。

 日本と米国が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の構築を提唱するなか、台湾は政治的・経済的・戦略地政学的に重要なパートナーとして、民主主義的価値観や共通利益だけでなく、インド太平洋地域の将来に関するビジョンも共有している。日本の20年度版外交青書では、「台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」と表現されている。

 台湾が民主主義国として存続することは、この地域のステークホルダーにとって確実に利益となる。常に圧力を受けてきたために、台湾の人々は自らを守る意思と決意を常に世界に示してきた。また、この地域の責任あるステークホルダーとして、台湾には、志を同じくするパートナーと協力して、自由で開かれたアジア太平洋地域の維持に一層貢献する準備ができており、またその意思もある。

 新政権のもと、日米同盟が力強いスタートを切るなか、台湾は日米両国にとって信頼できる有能で自然なパートナーとして役割を果たす準備ができている。そして一緒に力を合わせることによって、インド太平洋とそのほかの地域においても、共通のビジョンを達成できると期待している。

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蕭美琴(しょう・びきん)駐米台北経済文化代表処代表神戸市生まれ。台湾・台南で育つ。米オハイオ州オーバリン大学東アジア研究学科学士、ニューヨーク・コロンビア大学政治学修士。台湾の立法委員をのべ4期務める。20年7月より現職(駐米大使に相当)。

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