台湾の総統・立法委員選挙  傳田 晴久

台湾の総統・立法委員選挙  傳田 晴久
来年1月16日に投開票が行われる台湾の総統と立法委員のW選挙まで1ヵ月を切った。明日(12月
18日)が総統選の公示日だが、選挙はすでに終盤に入っている。

 近年の南シナ海や東シナ海における中国の覇権的行動や軍事力の増大を見るにつけ、台湾の地政
学上の重要性からも、運命共同体的関係にある日本としては無関心ではいられない。台湾の趨勢が
日本に及ぼす影響は大きい。

 本誌では、台南に住む傳田晴久(でんだ・はるひさ)氏の「台湾通信」を発行するたび紹介して
いる。昨日お送りいただいた「台湾通信」は、ズバリ「台湾の総統・立法委員選挙」。

 日本人にはたいへん参考になる解説だ。特に多くの台湾人が支持している「現状維持」の意味に
ついての解説は説得力に富む。同感だ。味読していただきたい。

 なお、傳田氏は世論調査として12月14日発表の「台湾指標民調」を紹介している。日本の報道で
はよく大手テレビ局のTVBSなどの世論調査を紹介することが多い。TVBSも12月14日に発表
しているものの、精度が高いのはやはり「台湾指標民調」だ。

 「台湾指標民調」は、男女、地区、10歳ごとの年齢、教育程度、政党支持傾向、政治的立場など
の項目を立てて調査し、それらを総合した結果を発表しているからだ。

 ちなみに、14日のTVBSは、蔡英文(民進党):45%、朱立倫(中国国民党):22%、宋楚瑜
(親民党):10%と発表し、蔡候補と朱候補の差は23ポイントとしたのに対し、14日発表の台湾指
標民調では、蔡英文:46.1%、朱立倫:16.1%、宋楚瑜:9.1%で、蔡英文と朱立倫の差は30ポイ
ントに開いている。

                ◇    ◇    ◇

台湾の総統・立法委員選挙
【台湾通信(第105回):2015年12月16日】

◆はじめに

 台湾は今、選挙直前である。日本でもいろいろ報道されているとのことであるが、台湾の様子を
知らせろ、とのリクェストがあったので、私にわかる範囲でお伝えしたい。

◆総統選挙

 台湾では昨年11月末に、国民党惨敗に終わった「九合一選挙」と呼ばれた統一地方選挙が行われ
た。これから行われる選挙は「大選」、すなわち国政選挙で、総統と立法委員の選挙が来年1月16
日(土)に投票、即日開票される。

 総統は日本語の大統領に相当し、被選挙権は40歳以上の中華民国国民に与えられており、正副両
候補がペアで立候補する。

 今回の選挙は現職の馬英九総統の任期(4年×2期)切れによって行われるが、11月27日に立候補
締め切りがあり、中国国民党から朱立倫(チュー・リールン)王如玄(ワン・ルーシュエン)のペ
ア、民主進歩党から蔡英文(ツァイ・インウェン)陳建仁(チェン・ジエンレン)のペア、親民党
から宋楚瑜(ソン・チューユイ)徐欣瑩(シュイ・シンイン)のペアが名乗りを上げた。いずれも
男女のペアであり、話題となっている。

◆立法委員選挙

 立法委員は日本の国会議員に相当し(台湾は一院制)、被選挙権は満23歳(選挙権は20歳)であ
る。2008年より小選挙区比例代表並立制が導入され、任期は4年、議員数は113名である。内訳は小
選挙区選出が73名、原住民枠が6名、比例代表・海外代表選出が34名である。

 今回の選挙の立候補者は選挙区の73名に対して356名、原住民枠の6名に対して23名が立候補して
いる。比例代表及び海外代表選出の34名に対しては18の政党がリストを提出している。台湾の政党
数は驚くなかれ、230以上ある(2013年)という。

 なお、比例代表で議席配分を受けるには有効投票の5%以上の得票が必要で、かなり高いハード
ルとなっている。台湾の有権者数は約1800万人であるから、5%の得票とは90万票である。

 選挙の焦点として、政権交代の可能性、政治の流れの影響、中国に対する台湾人の民意の表れに
ついて述べてみたい。

◆選挙の焦点(政権交代なるか?)

 馬英九総統の支持率は一時9%台に低下し、その名前にひっかけて「9%総統」と冷やかされたこ
ともあり、現政権の評判は極めて悪い。象徴的数字の一つが、「空手形633が142に化けた」であろ
う。

 これは今月7日の新聞(自由時報)に載った「2016総統大選青年対談」を伝える記事の見出し
で、民進党からの副総統候補陳建仁氏の発言である。前々回の総統選挙の際、馬英九候補は経済成
長率6%、失業率3%以下、国民所得3万米ドルをコミットし、「633」と称したが、7年間の執政の
結果は、経済成長率1%、失業率は4%に近く、国民所得は2万米ドル、すなわちコミットメント
「633」は空手形になり、「142」になったということである。

 安全保障、政治も重要であるが、国民の最大の関心は何と言っても経済である。それも口当たり
の良い政策よりも実行力である。公約を実現できなかった政権を果たして交代させることができる
かどうか、最大の焦点であろう。

 台湾の政権交代は総統のすげ替えだけでなく、立法院の勢力を変えなければならない。現在の勢
力は図のように113の議席のうち、与党、いわゆるブルー陣営(国民党と親民党)が68議席、野党
であるグリーン陣営(民進党と台湾団結連盟)が43議席、その他政党が2議席占めている。

 陳水扁が総統を2期務めた2000〜2008年、民進党は第一党ではあったものの、少数与党の悲し
さ、多くの法案が通らず、大変な苦労を強いられたと言います。

◆政治の流れはどうなるのか

 昨年3月の大学生による「ひまわり學運」の騒動はサービス貿易協定批准の審議が発端である
が、政府の強引なやり方に反対する大学生に一般市民が同調し、多くの国民が政治に関心を持つよ
うになった。その流れはその年の11月に行われた統一地方選挙(九合一選挙)に国民党惨敗という
結果をもたらした。今年の2月に行われた立法委員の5議席をめぐる補欠選挙では、国民党が辛くも
現状(2議席)を維持するという結果になった。

 今年の9月の新学期から使用される歴史教科書をめぐって、高校生による改訂反対運動がおこ
り、これまた国民党政権に対して打撃を与えることになった。

 そして、11月7日にシンガポールでいわゆる「馬習会」(馬英九・習近平会談)が開催された。
新聞やテレビの映像を見ていると馬英九総統が一人はしゃいでいるように見え、おかしかった。多
くの評価、コメントが発表されているが、劣勢を伝えられる国民党へのテコ入れにはならず、台湾
の人々は冷ややかに見ているようである。

 国民党が7月に正式に決めた総統選挙候補者の洪秀柱(ホン・シウチュー)女史があまりにも大
陸寄りの自説「一中」を述べるものだから、極めて評判悪く、国民党は遂に10月17日に臨時党代表
大会を開いて洪秀柱候補の公認を取り消し、新たに国民党主席の朱立倫を党公認候補に擁立した。

 この前代未聞の奥の手もあまり効果なさそうで、三候補の支持率に変化は見られない。昨年来の
国民党に対する逆風を果たして変えられるのか、一つの焦点である。

◆「現状維持」の意味

 台湾の国政選挙を見る場合、候補者並びに所属する政党の対中国問題に対する態度は重要な視点
である。いろいろな表現がなされるが、要するに1)台湾は中国の一部である、2)台湾は独立な
いし建国すべきである、3)現状維持、のいずれを志向するかということである。

 いろいろな世論調査、意識調査が行われているが、1)については、戦後中国人にさんざん痛め
つけられ、中国人のやり方、性癖を一番よく知っている台湾人が望むはずもなく、ごく一部の外省
人(戦後蒋介石と共に台湾に逃げ込んできた人々)の願いである。2)は恐らくほとんどの台湾人
の心にある願いであろう。しかし、それを口にすることを憚る体験をさせられている台湾人は表
立っては主張しない。独立とは中華民国からの独立である。しかし、台湾は中華人民共和国に一度
も支配されたことがないにもかかわらず、彼の国は台湾人が独立を口にすると武力をもってそれを
威嚇するので、それを口に出して言えないのである。したがって、3)「現状維持」を望む台湾人
が圧倒的に多いことになる。

 台湾独立、建国を前面に出す人々の目には、「現状維持」は極めて消極的と映るようであるが、
私は次のように考えている。

 台湾の多くの人々は世論調査などでは「現状維持」を選択するが、彼らは現状維持に満足してい
るのでは決してなく、それを選択せざるを得ない状況に置かれているのであって、この言葉の前に
は「独立、あるいは建国の時までは」の一語があるようである。すなわち、その時までは現状のま
ま(実質的な独立国)で有りたいということである。

◆おわりに

 投票日(1月16日)まで後1カ月を切ったが、果たして政権交代なるか、グリーン陣営が議会の過
半数を制することができるか、初の女性総統が誕生するか、台湾の方々には悪いが、一人の台湾大
好き日本人としては興味が尽きない。

 最新の資料(台湾指標民調2015.12.14)によれば、各候補者の支持率は蔡英文・陳建仁組が
46.1%、朱立倫・王如玄組が16.1%、宋楚瑜・徐欣瑩組が9.1%、不投あるいは廃票が12.4%、未
定が16.3%で、蔡英文組がリードしている。

 選挙は水物(みずもの)、何が起こるか分からない。インターネットを覗いていたら、「火事は
最初の1分、選挙は最後の1分」という言葉が目に入った。候補者始め、選挙関係者は十分に気を引
き締めていただきたい。

 私にはもちろん投票権があるはずもなく、投票日は屏東の竹田という所にある「池上文庫15周年
祭」に出席し、できるだけ早く家に戻り、開票速報を見たいと思っている。この日は私の誕生日で
もあり、選挙結果とともに祝杯を挙げたいものである。

[RelationPost]

【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

*本会取扱いの書籍やDVDはお届けまでに1週間ほどかかります。また、4月1日から送料が変わ
 りました。お急ぎの場合はお申し込みの際にその旨をお書き添え下さい。その場合、送料が変わ
 ることもあることをご承知おき願います。

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

* 現在、台湾ビール(缶)の在庫が切れています。【2015年7月28日】

 輸入元の総代理店からの連絡により、現在、台湾ビールの缶の在庫切れが判明しました。入荷は
 未定だそうでご迷惑をお掛けします。台湾ビール(缶)の入荷が分かり次第、本誌でお伝えしま
 す。ただし、台湾ビール(瓶)と台湾フルーツビールの在庫は大丈夫です。

●美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【随時受付】
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、1件につき1,000円(税込)を別途ご負担いただ
 きます。【2014年11月14日】

・奇美食品の「パイナップルケーキ(鳳梨酥)」 2,910円+送料600円(共に税込、常温便)
 *同一先へお届けの場合、10箱まで600円

・最高級珍味「台湾産天然カラスミ」 4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)
 *同一先へお届けの場合、10枚まで700円

●書籍お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・片倉佳史著『古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・手島仁著『手島仁の「群馬学」講座』
・李登輝著『新・台湾の主張
・漫画版『 KANO 1931海の向こうの甲子園
・李登輝元総統特別寄稿掲載の別冊「正論」22号「大解剖『靖國神社』」
・李登輝著『李登輝より日本へ 贈る言葉
・江畑哲男・台湾川柳会編『近くて近い台湾と日本─日台交流川柳句集
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・小林正成著『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)
・喜早天海編著『日台の架け橋
・荘進源著『台湾の環境行政を切り開いた元日本人
・石川公弘著『二つの祖国を生きた台湾少年工
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・廖継思著『いつも一年生』
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・井尻秀憲著『李登輝の実践哲学−50時間の対話
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

●台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム *第14号が入荷!
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

●映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『KANO 1931海の向こうの甲子園
・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『海角七号 君想う、国境の南
・『台湾人生
・『跳舞時代』
・『父の初七日』

●講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
・入会申し込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(小田村四郎会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:0110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。


タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,