世界で相次ぐ中国のジェノサイド認定と日本のギャップ  黄 文雄(文明史家)

世界で相次ぐ中国のジェノサイド認定と日本のギャップ  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2021年3月4日】*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付したことをお断りします。

◆米国、カナダ、オランダが中国のウイグル人弾圧を「ジェノサイド」と認定

 オランダの下院は2月25日、中国の新疆ウイグル自治区でウイグル人に対するジェノサイド(民族大量虐殺)が起きていることを非難する決議を採択しました。このような決議はヨーロッパでは初めてとのことです。

 これで今年に入り、1月にアメリカがジェノサイド認定、さらに2月22日にカナダ下院がウイグルでのジェノサイドを非難する決議を採択したのに続いて、3例目となります。

 もちろん中国は反発し、在オランダ中国大使館は、ジェノサイドは「全くの嘘」であり、決議は「中国への意図的な中傷」と批判していますが、中国のウイグル弾圧を看過できないと、声を上げる国が増え始めています。

 アメリカは昨年6月、ウイグル弾圧に関わった中国当局者の資金凍結やビザ取り消しなどの制裁を加えることができる「ウイグル人権法」が成立しました。またイギリスでも、ウイグル人の強制労働によってつくられた産品を流通から排除するため、「現代奴隷法」を強化し、ウイグル弾圧に関わった組織と取引のある企業を政府調達から外すなど、規制を強化しつつあります。

 日本では、2月22日、ファーストリテイリングやソニー、日立製作所など、日本の小売や製造業12社が、ウイグル弾圧への関与が確認された中国企業との取引を停止する方針を固めたと、共同通信が報じましたが、まだ具体的なことはわかっていません。

 ウイグル問題をはじめ、中国の人権侵害をスクープし続けているのがイギリスのBBCで、先日も強制収容所でレイプされたとするウイグル人女性たちの証言を放送し、世界的な話題となりました。

◆中国のウイグル弾圧を「ジェノサイド」とは認めない日本の外務省

 一方で、日本ではウイグル問題を報じるマスコミやテレビはほとんどありません。しかも日本の外務省は、中国のウイグル弾圧を「ジェノサイド」とは認めませんでした。

 今年1月19日にアメリカ政府は中国のウイグル弾圧を「ジェノサイド」と認定しましたが、その1週間後の26日に行われた自民党外交部会で、外務省の担当者が「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」との認識を示したことを、毎日新聞が報じたのです。

 そしてその直後、中国メディアが「日本政府は新疆ウイグル自治区でジェノサイドが行われていると考えていないと表明した」と報じました。中国に発言を利用されてしまったわけです。

 こうした日本の態度に、日本ウイグル協会からも批判が出てきています。3月2日、国民民主党が日本ウイグル協会からヒアリングを行いましたが、同協会副会長のレテプ・アフメット氏は、「あと半年すればジェノサイドと認定する国が間違いなく増える。そうした中で日本だけが何もしないのは、私たちが見たくない光景であり、多くの日本人の国民が見たくない光景だと思う」と述べています。

◆モンゴル語教育停止はモンゴル文化抹殺というジェノサイド

 中国の少数民族弾圧は、チベットや内モンゴル自治区でも続いています。モンゴルでは昨年、モンゴル語教育が停止されました。その理由は、モンゴル語は科学技術や中国流の思想道徳を教えるのに不向きで、中国語こそがIT時代にふさわしいからだといいます。

 しかし、私がいつも主張しているように、中国語こそ近代科学や近代思想を表すことに不向きな言語なのです。そのため、19世紀から20世紀にかけて、中国は大量に和製漢語を輸入しました。いちはやく近代化した日本が、西欧の科学や思想を漢語に翻訳したことで、漢字文化圏に大きな影響を与えました。

 民主主義、哲学、哲学、文化、自由、革命、共産主義、理性、宗教、分子、原子など、枚挙に暇がありません。「中華人民共和国」の「人民」も「共和国」も和製漢語です。中国憲法の記述の7割は和製漢語だとも言われており、和製漢語がなければ中国は成り立たないほどです。

 中国語が近代の概念を理解できるのは、日本語をベースとした和製漢語があるからなのです。日本は表意文字である漢字と、表音文字であるカナを組み合わせることで、深い意思疎通や文章理解が可能となりました。

 表意文字だけの中国語では、意味が曖昧となり、論語にしても注釈や注釈の注釈、注釈の注釈の注釈と、後世が解説つけくわえていくことが続きました。また、表音文字のハングルでは、同音異義語が頻発し、こちらも文章の意味が非常にわかりづらくなっています。

 それはともかく、モンゴル語が科学技術や中国流の思想道徳に向いていないというのは、単なる方便で、モンゴル文化を根絶やしにしたいというのが中国の本当の意図です。文化抹殺もひとつのジェノサイドだといえるでしょう。

◆チベット文化も抹殺する中華思想

 チベットなどは、宗教指導者さえも中国政府によって消されてしまいました。ダライ・ラマに次ぐ地位のパンチェン・ラマは、ダライ・ラマ同様に転生を繰り返しているとされ、前のパンチェン・ラマが死亡したときに生まれた子供をチベット中から探し、ダライ・ラマによって新たなパンチェン・ラマに指名されます。このような子供を「転生霊童」といいます。

 1995年、ダライ・ラマ14世は、ゲンドゥン・チューキ・ニマという男の子をパンチェン・ラマ11世に認定しました。ところが中国政府はこの認定を認めず、別の子供を「真のパンチェン・ラマ」として指名し、ニマさんを拉致しました。

 昨年5月、中国政府はこのニマさんが大学を卒業して就職していると発表し、「現在の普通の生活」がかき乱されることを望んでいないと強調しました。

 もともと神仏を信じない中国共産党が転生霊童を選ぶということ自体が、矛盾と欺瞞に満ちた行為であり、チベットの文化をバカにし、抹殺しようとする行為なのです。

 中国は多様な文化など絶対に認めません。「大一統」こそが中国人の理想であり、すべてを統一することを良しとするのが中華思想なのです。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

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