ボイコットすべき冬季北京五輪  浅野 和生(平成国際大学教授)

ボイコットすべき冬季北京五輪  浅野 和生(平成国際大学教授)

【世界日報「View point」:2021年4月15日】

 2022年2月、北京での冬季オリンピックが成功すれば、中国による新型コロナウイルスに対する勝利と、習近平の「中華民族の偉大な復興の夢」が世界に喧伝(けんでん)される。それは、その後に続くはずの「世界一の経済大国中国」実現に向けての格好の号砲となるだろう。

◆嘘にまみれた北京五輪

 08年の北京五輪開会式当日のテレビ国際映像では、北京の夜空を、大会会場「鳥の巣」に向けて大男の足跡を象(かたど)る花火が一歩ずつ近づいて行った。しかし、その29歩のうち本物の花火は最後の一歩だけで、あとはCGであったことが「後に」判明した。同夜のヘリコプターからの「生中継」映像は、事前に撮影された「録画」だった。さらに9歳の少女、林妙可による愛国歌の独唱は口パクで、実は7歳の別の少女、楊沛宜の声だった。つまり、北京オリンピックは、嘘(うそ)で塗り固めた大会だった。

 来年の冬季北京五輪では、中国の国威を発揚するため、さらに大規模で技術の粋を集めた虚構が、各種メディアを通じて世界に流布されることになるだろう。

 振り返ってみれば1936年のベルリン五輪は、ナチス・ドイツによる「アーリア民族の優秀性」とヒトラーの権力を世界に見せ付ける絶好の機会となった。アテネから大会会場までの聖火リレーが初めて実施されたのもこの時であり、ナチスにより採用された演出の一つだった。そしてオリンピックの3年後、ドイツはポーランドに侵攻し、第2次世界大戦の火ぶたが切って落とされた。オリンピック史に残る苦い記憶である。

 オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」として、「普遍的で根本的な倫理規範の尊重」を第一に掲げている。また、「スポーツをすることは人権の一つである」と高らかに謳(うた)っている。ウイグル族にジェノサイド(集団虐殺)を仕掛け、香港の民主を否定する中国が、「オリンピズム」に適合しないことは明らかである。だから自由と民主主義、基本的人権、法の支配を尊重する国々は、北京オリンピックの開催を支持せず、参加をボイコットすべきである。

 去る3月22日から28日にストックホルムで開催されたフィギュアスケート世界選手権では、男子シングルの上位入賞者7人が日本3、アメリカ2、カナダと韓国が1ずつだった(中国人は13位と22位)。女子はロシア勢がメダルを独占したが、以下は日本、アメリカ、ベルギー、韓国などである(中国人は21位)。だから、日米カナダ等が北京冬季五輪に不参加なら、フィギュア競技は事実上の地方大会に堕する。

 冬季スポーツは、スキーのノルディックおよびアルペン競技でも、スピード・スケートでも、状況は似たり寄ったりで、日米と欧州の自由主義国が不参加であれば、スポーツ大会として無価値になる。この点、夏季五輪よりボイコットの効果が顕著である。

 全ての競技を一カ所で開催する必要はないから、北京五輪と同日に競技ごとに決めた会場で「自由で開かれた世界冬季スポーツ大会」を実施し、北京五輪をボイコットした国の選手が集まって最高のパフォーマンスを披露するのである。五輪を凌駕(りょうが)する「自由で開かれた世界冬季スポーツ大会」の開催で、自由世界のメディアをくぎ付けにし、北京五輪が一顧だにされない状況を創出するのである。

 これは、オリンピックに向けて準備を重ねてきたアスリートの救済策ではなく、中国の世界戦略に対抗する自由世界諸国の一致結束した大戦略の発動でなければならない。

 今から準備すれば十分に実現可能であろう。東京オリンピックを成功させたい日本としては、国際オリンピック委員会(IOC)に反旗を翻すことを躊躇(ちゅうちょ)する向きがあるだろうが、「オリンピア精神」に反しない東京オリンピックは堂々と開催すればよいのであって、これは別問題である。

◆日米首脳会談で検討を

 1936年ベルリン大会の轍(てつ)を踏まないために、共産党独裁国家・中国のプロパガンダに世界を席巻せしめないために、迅速かつ積極的な対抗措置が必須である。まずは、来る日米首脳会談で、「自由で開かれた世界冬季スポーツ大会」開催を検討してほしいと思う。(敬称略)

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