ブリケン国務長官とバイデン大統領に見た深化する米国の台湾シフト

ブリケン国務長官とバイデン大統領に見た深化する米国の台湾シフト

 10月26日に米国のアントニー・ブリンケン国務長官が台湾の国連組織への参加を支持する声明に対し、中国が強く反発している。馬暁光・国務院台湾事務弁公室報道官は欲27日の記者会見で「国連は主権国家からなる国際間の政府組織であり、台湾は中国の一部で、参加する権利はない」と断固として認めない姿勢を明らかにした。米国としては織り込みずみの反応だろう。

 中国は、尖閣諸島の領有を論じるときには三段論法で「台湾は中国の一部だ。尖閣は台湾の領土だ。ゆえに尖閣は中国の領土だ」と主張していたが、国連や世界保険機関(WHO)、国際民間航空機関(ICAO)、国際刑事警察機構(ICPO)などでも同じ三段論法で「台湾は中国の一部だ。国連は主権国家からなる国際機関。ゆえに台湾は参加する資格がない」と言い張る。

 すべての根源は「台湾は中国の一部」という主張に基づいている。この主張の根拠はというと、それが「アルバニア決議」だ。1971年10月25日、台湾の蒋介石政権が国連で保持していた「中国」の代表権を中華人民共和国政府に認め、蒋政権の追放を求めたのが賛成多数で可決された「アルバニア決議」だった。

 今朝の産経新聞1面トップはブリンケン国務長官の声明を取り上げ、背景となる「アルバニア決議」可決までの経緯や台湾側の主張、米国の上院議員の声明などを紹介し、米国は「?台湾シフト?を鮮明」にしたと報じている。

 米国のバイデン大統領が10月21日にCNNテレビの番組に出演した際、「中国が台湾を攻撃した場合、アメリカは台湾を防衛するのか」と質問されたのに対し「そうだ、われわれはそうする責務がある」と答えたと報じられている。

 バイデン大統領が「台湾を防衛する義務がある」と発言したのは、CNNが初めてのことではない。最近と言ってもいい8月19日に放映された米ABCニュースのインタビューでも「台湾に対しても防衛義務がある」と発言していた。読売新聞は「もし誰かがNATOの同盟国に侵攻したり、実力を行使したりすれば、我々は対応する。それは日本や韓国、台湾も同じだ」と発言したと伝えている。

 米国はこれまで台湾の直接的な防衛については明確にせず「曖昧戦略」を取ってきているといわれる。バイデン大統領の発言について、政権側は「台湾に関する政策は変わっていない」と火消しに追われたというが、一国の元首が2ヵ月に2度も同じ問題で口を滑らせることなどあるのだろうか。

 台湾は中国の外洋への展開を扼する絶好の場所に位置する「ビンの蓋」の役割を果たし、台湾海峡はチョークポイント(戦略的に重要な海上水路)と位置づけられていることから、恐らくバイデン大統領自身も、バイデン政権内部も「米国は台湾を防衛する義務がある」という認識が普通に持たれているからであろう。

 日本の内閣総理大臣なら「舌禍事件」として野党の餌食になるのだろうが、政権側も火消しはしてみせるものの困った様子はなく、議会は「舌禍事件」として追及などしない。逆に、野党の共和党議員から「中国は(アルバニア)決議を使って台湾を国連や関係機関の参加から不当に排除するばかりか、台湾人が国連ビルに入ることも阻止している」との応援声明も出てくるほどだ。

 米国は大統領も議会も台湾シフトが深化していると指摘する産経新聞の記事を下記にご紹介したい。

—————————————————————————————–米の台湾シフト深化 国連参加を支援 国務長官声明 【産経新聞:2021年10月28日】

 【ワシントン=渡辺浩生】ブリンケン米国務長官は26日、台湾の国連組織への参加を支持するとした声明を発表した。声明は国連が中国の加盟と台湾の脱退を決議してから今月25日で50年を迎えた節目を踏まえ、この間の民主主義の成熟化や新型コロナウイルスの防疫の成功例などから、「台湾の排除は国連と関連機関の重要な活動を弱らせる」と強調。他の国連加盟国にも同調を呼びかけた。

 米国務省は22日には台湾外交部(外務省に相当)と台湾の国連や他の国際機関参加拡大に向けた高官協議をオンラインで開催。先立つ21日にはバイデン大統領が、台湾を防衛する責任があると明言するなど?台湾シフト?を鮮明にする。

 バイデン政権は、台湾を「不可分の領土」として威圧を強める中国に対抗し、外交・軍事的な対中抑止戦略と同時並行で、国際社会に台湾が占める「スペース(空間)」の拡大を後押しする方針とみられる。

 ブリンケン氏は、台湾の民主化成功が「透明性、人権の尊重、法の支配といった国連の価値観と一致する」と評価。先端技術経済や文化、教育などソフトパワー拠点としても不可欠であり、「米国は台湾を価値あるパートナー、信頼する友人と考える国連加盟国の一つだ」と強調した。

 その上で、「世界で一級の(台湾の)コロナ対応からわれわれは多くを学んだが、台湾は世界保健機関(WHO)総会にいなかった」と指摘。地球規模の複雑な課題に対処するには、台湾市民を含めた国際社会の取り組みが必要であり、台湾の国連組織への「意味ある参加は政治問題ではなく現実的な課題だ」と訴えた。

 台湾の「国連加盟」の是非には一切触れず、米国の「一つの中国」政策から逸脱していないとも言明した。

 国連では1971年10月25日、台湾の蒋介石政権が保持していた「中国」の代表権を中華人民共和国政府に認め、蒋政権の追放を求める「アルバニア決議」が賛成多数で可決された。台湾の代表は決議案の表決前に総会議場から退場し、国連を脱退した。

 台湾側は決議について国連での「中国」の代表権を処理したものにすぎず、「中華人民共和国に国連組織で台湾を代表する権限を付与したものではない」(外交部)として決議の「誤用」を批判してきた。

 米上院外交委員会の重鎮、共和党のジム・リッシュ議員は26日、「中国は(アルバニア)決議を使って台湾を国連や関係機関の参加から不当に排除するばかりか、台湾人が国連ビルに入ることも阻止している」との声明を発表。決議は台湾の国連排除の理由には当たらず、米国と同盟・友好諸国は台湾の国連参加を支援すべきだと訴えた。

 米国としては、台湾傾斜を強める欧州などから賛同が増えれば、対中包囲網を重層化できるという思惑もあるとみられる。一方、今回の声明は中国の習近平国家主席が国連加盟50年を記念した演説を行った後だけに、中国を刺激するのは必至だ。

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