――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習90)

【知道中国 2424回】                       二二・九・仲九

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習90)

毛沢東は劉少奇の農業政策を批判する一方、「広範な貧農下層中農を鼓舞し合作社化による社会主義の積極性を導きだした」。さらには「1955年後半以来の1年ほどの間で、全国5億の農民は社会主義の輝かしき大道を喜び勇んで進んだ。プロレタリアは広大な農村の陣地を確保し、労働者と農民による挟撃でブルジョワ階級を孤立させ、社会主義への改造を受け入れざるをえない立場に追い込んだ」のである。

さらに56年には、「我が国では資本主義商工業と手工業の両部門での所有制において社会主義改造を基本的に実現した」。このような大変動にもかかわらず、「工業と農業の生産は破壊を受けなかったばかりか発展を重ね、党の過渡期総路線は偉大なる勝利を勝ち取った」わけだ。

 だが、劉少奇一派の悪辣極まりない悪知恵のタネは尽きない。「毛主席に背き、〔中略〕全党を資本主義の道に引きずり込もうと妄動を続ける」。そこで毛沢東が伝家の宝刀を揮って文革に踏み切った、というわけだ。

かくして「いまや帝国主義は全面崩壊に瀕し、社会主義は全世界で勝利に向かう輝かしい時代となった。共産党が生まれた半世紀昔を思い起こすなら、全世界の革命情勢は空前の素晴らしさである。帝国主義、修正主義、反動派の滅亡は目の前に近づいている。団結して、さらなる勝利を勝ち取ろう!/マルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想万歳!/偉大なる、光栄なる、正確なる中国共産党万歳!/毛主席のプロレタリア革命路線勝利万歳!/偉大なる領袖毛主席万歳、万歳、万々歳!」で、共産党建党50年を記念する公式見解は閉じられる。

以上が半世紀昔の共産党による公式的世界観と言えるだろう。習近平政権3期目続投目前の現時点で読み返しても判ったようで判らない。だが、千変万化する共産党の振る舞いを理解する上からも、少しガマンして“革命的ヘリクツ”に付き合う必要がありそうだ。

そこで次に『哲学闘争与階級闘争』(中央党校革命大批判写作組 人民出版社)を読んでみたい。

『哲学闘争与階級闘争』には建国から同書出版までの22年余の間に起きた論争――①経済的な基礎と上部構造に関する闘争。②思惟と存在の間に同一性が存在するか否かに関する闘争。③「一が分かれて二となる」と「二を合わせて一とする」に関する闘争――について、『人民日報』『光明日報』『紅旗』などに掲載された論文が収録されている。

 毛沢東が「共産党の哲学とは、つまり闘争哲学」と定義するだけあって、哲学論争は哲学闘争と位置づけられ、強引にも階級闘争として扱われてしまう。ここにも学術論争が政治闘争を引き起こす中国支配階級の伝統が生きているから、なんとも不思議なことだ。

かくて「この3回の大闘争は凡て2つの階級、2本の道、2つの路線闘争のカギとなる時期に起こっており、叛徒、内なる敵、労働匪賊である劉少奇が背後で糸を引き演出し、叛徒の楊献珍が跳ね返って飛び出し逐一挑発してくるのだ。これは弁証法的唯物論と歴史唯物論、唯心論と形而上学の2つの陣営間の激越な闘争であり、国際・国内における哲学戦線上の尖鋭な階級闘争の反映である」となる。

 そこで、この本で「東奔西走し、到るところで反動哲学をばら撒き、さらには毛主席の輝かしき哲学思想に狂ったように反対している」「1匹の犬」と罵倒されている楊献珍(1896~1992)の人生を概観し、哲学闘争と階級闘争のなんたるかを考えてみたい。

 楊は若くしてモスクワ東方大学に学び、建国後はマルクス・レーニン学院院長、中共中央直属高級党学校校長などを歴任したというから、正真正銘の正統派マルキストであり50から60年代の中国を代表するマルクス主義哲学の大権威と言っていいだろう。《QED》


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