――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習152)
72年には、ヨーロッパにおける革命をテーマにした『普法戦争』(呉機鵬 4月)、『第二国際』(張友倫 5月)、『拉薩尓』(丁建弘 6月)、『巴枯寧』(南開大学歴史系 9月)、『1848年 法国革命』(韓承文 9月)が出版されている。
体裁は13cm×18.5cmで簡易装丁。いずれも40頁余から60数頁で「歴史知識読物」の6文字を冠した小冊子であるところからして、分かり易く「歴史知識」を学ばせようという狙いから叢書形式で出版したものと思われる。ここで注目しておきたいのが、この「歴史知識読物」シリーズの出版元が“紙の爆弾の兵器工廠”である上海人民出版社ではなく、北京の商務印書館であるという点だ。
四人組の最大拠点であった上海であればこそ、上海人民出版社が四人組にとっての宣伝・教育の中枢であったことは当然だろうが、はて北京の商務印書館は文革メディア戦線において、どの辺りに位置づけたらよいのか。出版内容から読み取る限り、上海人民出版社ほど浮き足だった形で文革原理主義路線を過剰なまでに猪突猛進(妄信?)している風でもなさそうだが。
文革時のメディア状況を考える上で、北京の人民出版社、商務印書館、中華書局、上海の上海人民出版社、さらには各省レベルの人民出版社の動きを探ってみることも必要だとは思う。だが、ここでは深入りは避け、後日の“努力目標”として心に留めておくことにして、以下、各書のテーマを時代順に追って概要を綴っておきたい。
『巴枯寧』:ロシアの代表的無政府主義者バクーニン(漢字で「巴枯寧」/1814~76年)を一貫して「陰謀家」と捉え、執拗なまでに糾弾し、「偉大なる革命の導師であるマスクス、エンゲルスが陰謀家のバクーニンに反対する闘争は、永遠に我々が学習すべき模範である」と力説する。革命闘争における「陰謀家」との戦いを疎かにするな、との警鐘だろう。
『拉薩尓』:1863年に全ドイツ労働者同盟を創設したラサール(「拉薩尓」/1825~64年)を「ドイツ労働者運動のおける日和見主義者の始祖であり、国際労働者運動における日和見主義者・修正主義者が崇拝する偶像」であり、「その存在と突然の死はドイツ労働階級による革命事業に極めて大きな障害となった」。「極めて明らかではあるが、ラサ-ル主義と修正主義への反対はマルクス主義者にとって長期に亘る、大きく、且つ厳粛な任務である」と説く。
『1848年 法国革命』:1848年の法国(フランス)革命の結末を、「プロレタリア階級が現に機能している国家装置を簡単に手中に収め、それを援用して自らの目的を達成することは容易ではない。むしろブルジョワ階級の国家装置を徹底して打ち砕き、ブルジョワ階級を打倒し、プロレタリア独裁を打ち立てねばならない」。「マルクス主義の輝ける思想は共産主義の基本原理の1つとして人類の思想の宝庫に収め、併せて世界のプロレタリア階級が推し進める革命闘争の鋭利な武器とすべきだ」と結論づける。
『普法戦争』:1870~71年の普仏戦争を「プロシャ(普魯士)とフランス(法国)の統治階級がヨーロッパの覇権を争って起こした」「世界近代史上の有名な戦争」と捉え、「戦争が革命を引き起こし、パリ・コミューンに見られるプロレタリ階級革命の爆発を導いた」とする。その結果、普仏戦争がドイツの統一を促し、ヨーロッパ大陸の全般的状況が重大な変化を来たし、併せて第一次大戦(1914~18年)へとつながる禍根を残してしまった。
「両国の統治階級が引き起こした戦争の結果、各国の労働者階級による国際主義は却って永遠の輝かしき光りを放つことになった」。だからこそ「我われはプロレタリア階級の国際主義の旗を高く掲げ、地球上からヒトがヒトを搾取する制度を消滅させるため、全人類の徹底した解放と団結のための戦闘を実現しよう!」と煽り気味に結ばれる。《QED》