――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習48)

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習48)
【知道中国 2382回】                       二二・六・念一

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習48)

64年に入ると、毛沢東とその周辺が蠢動を始める。

年初、康生は劉少奇支持派が押さえる文芸政策当局が推奨する古典に材を取った映画『桃花扇』を批判し、「投降主義だ。台湾やフルシチョフに送って見せてやればいい」と難癖を付ける。

2月に入ると毛沢東は「本は多く読んだからと言って良いというわけではない。マルクス主義の本は読まねばならないが、多くを読むことはできない。精々が数十冊だろう。読み過ぎると逆転して書迷(本の虫)になるか、教条主義や修正主義になるのが関の山だ」と、劉少奇や�小平が進める大躍進後遺症脱出策――ある程度の私有財産を認めることで労働意欲を刺激し生産活動を活発化させる――を修正主義だと批判する。

5月、国防部長の林彪が『毛主席語録』を全軍に配布し、人民解放軍の全兵士に毛沢東思想の徹底学習を指令した。

6月、毛沢東は革命現代京劇『智取威虎山』を観劇し、大感激の態で役者一同と記念写真を撮る。もちろん同行は江青である。

8月、京劇の現代化を目指す全国京劇現代戯観摩(コンテスト)会の総括大会に臨んだ康生は、劉少奇派が押さえる文芸政策当局を激しく批判した。

なお10月14日には毛沢東が蛇蝎の如く嫌ったフルシチョフが失脚している。

なにやら文革前夜を思わせる64年の出版で手持ちは『草原児童団』(上海人民出版社 8月)と『林紅和?的?伴』(費・林・陳・童子編絵 人民美術出版社 10月)の2冊。

『草原児童団』は「東の空が明るくなり、太陽が昇る。毛主席の英明な指導の下、カラチン草原は解放され、至る所に紅旗が翻る。農民は地主を倒し、田地を等しく分け、大地は精気に溢れる。児童団も喜び勇み、自らの持ち場を守り、地主と富農による策動の監視を怠らない」で始まる。

主人公の児童団長は「黒牛」と呼ばれる13歳の少年で、腰に拳銃を挿し、鋭い槍を手にした剽悍な姿が描かれている。民兵隊長から「土匪討伐から戻るまでの間、村を守れ。村に残る地主や富農がおかしな動きを見せたら、直ぐに連絡せよ」と指令を受けるや、黒牛は仲間の団員を指揮して地主や富農の動きに目を光らせる。

ふと見つけた怪しげな足跡を追うと、山中の洞窟に向かっている。監視を続けると洞窟から「大花蛇」と呼ばれる土匪が這い出してきた。みんなで大花蛇を追い詰め立木に縛り上げ調べた結果、洞窟の中に隠された大量の武器を発見する。毛沢東の説く「土豪劣紳(ごろつき)」が共産党に反攻を試みようとした動かぬ証拠であった。

かくて児童団は民兵隊と共に土豪劣紳を粉砕し、意気揚々と村に戻る。

子どもは子どもとしてではなく、毛沢東の革命に尽くす「小さな大人」として描かれている点は、紅衛兵より幼い世代の紅小兵の出現を予感させるに十分な絵本と言える。64年の時点で、すでに文革への導火線に火が点けられていたのでは・・・用意周到・深謀遠慮。

『林紅和?的?伴』は、古くから中国で見られた連環画――絵と簡単な文章で綴られる絵物語――である。

主人公の林紅は、農村の中学校を卒業したばかり。共産党下部組織の共産主義青年団々員で、可愛らしく気立てがよく、そのうえ肉体堅固で我慢強い娘さんだ。

両親が都市で仕事をしているので本来なら都市で進学できるのに、「農村こそ広大な天地。そこでは、なんだってできないことはない」という毛沢東の“有難い教え”を堅く信奉している。だから農村に留まり、自分から率先して困難な仕事に立ち向かおうと決意したというのだから、共産党にとって非の打ち所のない理想的な若者ということになる。《QED》

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