台湾公聴会を提起したマッカーシー下院議長と「米中戦略競争特別委員会」

 米国連邦議会下院に「米中戦略競争特別委員会」(米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会)が設置されたのは1月11日。対中強硬派で知られる共和党のマイク・ギャラガー議員が委員長に就任した。

 設立は、15回の投票で1月7日に下院議長に就任したケビン・マッカーシー下院議長(共和党)の提唱による。中国がもたらす深刻な脅威に対抗するため、委員会は政党の枠を超えた共和党員9人、民主党員7人で構成される。経済を強化してサプライチェーンを再構築し、軍事的な威圧行為に立ち向かい、米国民の個人情報や知的財産、雇用の窃取を止めるための強力な政策を提言してゆくという。

 中国による軍事的な威圧行為に関しては台湾の自衛を支援すると標榜していて、マッカーシー議長が台湾での公聴会開催を提起していることから、今春にも台湾訪問を計画しているという。

 一方、米国ではすでに米中経済関係が米国の安全保障に及ぼす影響を精査して政府と議会への政策勧告を目的とする「米中経済安全保障調査委員会」が2000年10月に設立されていて、上下両院の共和、民主両党議員が12人の専門委員を指名し、与野党の共通認識を反映する年次報告書を発表している。

 「2017年度年次報告書」では台湾をリムパック(環太平洋合同演習)など米国が主導する軍事演習に招待すべきと提言し、「2018年度年次報告書」では中国の一帯一路経済圏構想、南シナ海での軍事化などに強い懸念を表明するとともに、国際社会における台湾の地位向上や台湾の自己防衛能力維持に協力すべきだと提言している。

 米国連邦議会は大統領よりも深く台湾問題にコミットしているが、これまでは「米中経済安全保障調査委員会」の影響力が強く、今度は下院に「米中戦略競争特別委員会」が設置されたことで、さらに台湾へのコミットは深化しそうだ。今後、「米中戦略競争特別委員会」の動きから目が離せない。

 下記に、マッカーシー議長が台湾での公聴会開催を提起していることを報じた台湾国際放送の記事をご紹介したい。

—————————————————————————————–台湾での公聴会も検討、米下院中国特別委員会が台湾への支援増強【台湾国際放送:2023年1月26日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/96523

 アメリカ連邦議会下院の米中戦略競争特別委員会は、中国に対抗して台湾への支援を増強、台湾への武器売却の重要性を高めるだけでなく、マイク・ギャラガー委員長も台湾での公聴会開催を提起しています。

 ギャラガー委員長は20日、インタビューを受けた際、委員会は2つの大きな仕事がある。一つはTik Tokの禁止など具体的な問題を主導すること、2つ目は、既に下院で議論され進行している問題を強調すること。例えば、「国際日付変更線西側のハードパワー」などだと語りました。

 ギャラガー委員長は、「我々は『今日のウクライナは明日の台湾』これをどう防ぐか?これは委員会が取り組むべき課題だと考えている」と話しました。

 16名の委員からなる米中戦略競争特別委員会は、下院共和党保守派が国防予算引き上げに懐疑的な時期に超党派の強い支持を得て設立。軍事、経済、科学技術など広い問題を扱います。

 軍事方面では、退役軍人で下院軍事委員会のメンバーであり、国防のタカ派を自称するギャラガー氏が、米中戦略競争特別委員会が資金調達の問題よりも、政策提言に重点を置くことを期待しています。

 台湾方面では、ギャラガー氏は、既に承認されたものの交付が延期された180億米ドルの台湾への武器売却に焦点をあてたいと考えています。先月、共和党のケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)下院議長と共同でコラムで発表した米中戦略競争特別委員会に関する文章の中で、「台湾の自衛を助けることは緊急課題とする」と公約しています。

 ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の報道によりますと、米中戦略競争特別委員会のメンバーである共和党のロブ・ウィットマン(Rob Wittman)下院議員は25日、シンクタンク「プロジェクト2049研究所」の活動に参加した際、中国はアメリカがこれまでに直面した最大の課題の一つだが、アメリカはそれに対応し、最終的に勝利できる能力があると述べました。

 さらにウィットマン氏は、台湾問題が委員会の焦点であることは間違いないとし、「実際、委員会のギャラガー委員長は、台湾で公聴会を開くことを望んでいる。我々もそうするべきだと思っている。私はこれが全世界にとって、そして台湾にとっても非常に有意義な事だと思っている」と語りました。

(編集:中野理絵/王淑卿)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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