台湾と外交関係を有しなくても、台湾には米国の米国在台湾協会(AIT:American Institute in Taiwan)や日本の日本台湾交流協会台北事務所など、多くの国が大使館機能を有する事務所を設置しています。
一方、日本に大使館機能を持つ台北駐日経済文化代表処が設置されているように、台湾も国交のない海外各国に代表処を設置しています。昨年11月18日には、北欧のリトアニアの首都ビリニュスに「台北」ではなく「台湾」を冠した代表事務所「駐リトアニア台湾代表処(駐立陶宛台湾代表処)」を正式に開設しました。
ちなみに、台湾は2020年8月17日、アフリカのソマリランド共和国に「台湾駐ソマリランド共和国代表処」を開設していますので、「台湾」を冠した代表処は2つ目となります。
すでにリトアニアは2021年6月末、台湾に代表機関を設置する計画を発表していますが、代表機関としての経済貿易事務所の設置は今年9月になることが明らかになりました。これは、6月12日から15日まで企業経営者など10人を率いて訪台したリトアニアのヨウィータ・ニューリップシエネ経済・イノベーション省副大臣が最終日の15日の記者会見で明らかにしたことだそうです。
ニューリップシエネ副大臣は記者会見で「台湾との関係深化によって、中国への第1四半期の輸出は『ほぼゼロ』になったことを明らかにした」そうです。これは、リトアニアが「駐リトアニア台湾代表処」の開設を承認したことに対する中国による経済的制裁による結果です。
中国は、ロシアによるウクライナ侵略に対して米国や欧州、日本、台湾などがロシアに経済制裁を発動したことについては「制裁が問題解決の根本的かつ有効な手段だったことはなく、関係国・地域の経済や民生に著しい困難をもたらすだけだ。関係国は真剣に考え、対話や協議による問題解決に努力するよう望む」と反対しました(2月25日付「時事通信」)。
ところが、リトアニアに対しては、大使を召還して外交関係を格下げし、「悪しき前例をつくった代償を払わなければならない」と、リトアニア製品が税関を通らないようにするなどの経済制裁を行っています。リトアニアばかりでなく、坊主憎けりゃとドイツやフランスなどの企業からであっても、リトアニア製の製品が含まれている場合は通関を拒否しました。
中国のこのダブルスタンダードは、いつものこととは言え、その身勝手さにはうんざりします。中国はよほど「台湾」の二文字が気に入らないようです。
9月に開設されるリトアニアの経済貿易事務所の名称はどうなるのか、中国がどう対応するのか、注目です。
—————————————————————————————–リトアニア、台湾に貿易事務所 9月開設へ 訪台中の副大臣が発表【中央通信社:2022年6月16日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202206160007
(台北中央社)台湾を訪問しているリトアニア経済革新省のヨウィータ・ニューリップシエネ副大臣は15日、台北に経済貿易事務所を設置すると明らかにした。9月に開設の予定で、来週にも別の政府関係者が台湾を訪れる予定だという。台北市内での記者会見で述べた。
台湾とリトアニアは関係が深化しており、リトアニアには昨年11月、事実上の大使館となる「台湾代表処」が設置された。これ以降、副大臣級の経済貿易当局の高官による訪台は初で、同氏が率いる訪問団は12日から4日間滞在し、経済や貿易面などでの連携強化に向け交流した。
同氏は記者会見で、台湾とリトアニアは民主主義や人権、法の支配などの価値観を共有していることに言及。権威主義の国から圧力を受けた際、理念の近い国々は結束する必要があると語った。
また、台湾との関係深化によって、中国への第1四半期の輸出は「ほぼゼロ」になったことを明らかにした同氏。政府は多様化を政策に掲げているとし、台湾やインド太平洋地域の信頼できるパートナーとの貿易を通じ補填できるとの考えを示した。
(游凱翔/編集:楊千慧)
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