【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2022年5月11日】https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。
◆憲法改正に賛成60%の世論調査から見えてくるもの
5月3日は憲法記念日でしたが、新聞各紙が憲法改正に関する世論調査を行ったところ、読売新聞では賛成60%で反対38%、朝日新聞は賛成56%、反対37%、毎日は賛成44%、反対31%と、いずれも賛成が反対を大きく上回ったことが報じられました。
とくに読売新聞の調査で賛成が6割に達したのは、郵送方式となった2015年以降で最も高く、朝日新聞の数字も郵送調査を始めた2013年以降で最多だったとのことです。
それぞれ調査法が違うこともあり数字にばらつきがありますが、朝日、毎日のこれまでの偏向ぶりからして、私は読売がいちばん正確だと思っています。
やはりロシアのウクライナ侵攻が影響しているのでしょうか、これまで以上に世論が改憲に前向きになってきていることが明らかになりました。そうした危機感からでしょうか、改憲反対派の改憲派批判は過剰なほどでした。
とくに衆院憲法審査会で野党筆頭幹事を務める立憲民主党の奥野総一郎議員は、「ロシアより許せないのが今の与党」「どさくさ紛れに改憲を試みよう、国民を騙そうとしている」などと発言、ロシア以上に自民党のほうが危険だという暴論に批判が殺到し、謝罪のうえ発言撤回する事態となりました。
いつもながら思うのですが、護憲派は意図的か無意識なのかわかりませんが、敵対する周辺国の軍事的脅威を軽視し、日本が他国並みの安全保障体制を整えるほうがよほど危険だとする思想を持っているようで、これは非常に不思議なことだと言わざるをえません。
かつて最大の護憲勢力だった政党といえば社会党ですが、北朝鮮による拉致を「ありえない」と頑なに否定し続けてきました。結局、その北朝鮮が拉致を認めたことで、社会党のメンツは丸つぶれ、その後、衰退の一途をたどりました。
社会党は朝鮮労働党と友党関係にありましたが、「親友」だと思っていた北朝鮮の真実を見抜けず、むしろ北朝鮮の拉致疑惑を擁護したため、結果的に日本国民を「裏切った」ことになってしまったわけです。
◆日本国憲法「前文」の異常な内容
日本国憲法の前文には、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という一文があります。
しかしこれは、大陸から渡ってきた国民党の中国人による台湾人虐殺228事件や、中華人民共和国による「文攻武嚇」(言葉と武力による威嚇)を体験してきた台湾人からすると、なんとも平和ボケした異常な内容だとしか言いようがありません。
このメルマガでも何度か紹介しましたが、1992年、韓国が中国と国交を樹立する際、台湾は韓国が台湾との国交を破棄するのではないかと何度も韓国側に問い合わせましたが、その答えは「断交はありえない」というものでした。そのうえで、韓国は台湾に対して韓国車を5万台も売りつけたのです。台湾は、国際市場で人気のない韓国車を大量に買うことになりましたが、それでも韓国の言葉を信じました。
しかし韓国は、中国との国交樹立を発表すると、すぐに台湾との断交を発表、その日のうちに台湾大使館の保有資金を中国名義に変更し、台湾の大使を追い出しました。そのとき韓国側は「我が国の外交的勝利だ」などと大いに喜び、台湾を侮辱しました。
こうした経験があるだけに「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼する」ことなど、絵空事でしかなく、しかもそれによって「自らの安全と生存を保持する」などというのは、自殺行為以外の何ものでもないと言わざるをえません。
ところが護憲派からすると、この「諸国民の公正と信義に信頼する」ということが崇高なことに映るようです。
この前文について、経済学者の浜矩子氏は「いつ読んでも、この決意表明には胸が打ち震える。他者を信じて疑わず、そこに自分の安全と生存を委ねてしまう。何たる勇気。何たる清廉」と絶賛する一方、この前文に疑問を投げかけている安倍晋三元首相を批判しています。
しかし、旧社会党も、北朝鮮の「公正と信義に信頼」して日本人拉致を否定していたわけでしょうが、北朝鮮を信頼した結果、社会党は消滅してしまいました。歴史に学ぶならば、独裁制の「ならず者国家」を信頼してはいけないのです。
同じ過ちを犯して、日本が消滅しないことを祈るばかりです。
◆「宋襄の仁」の宋襄は「間抜け」の代名詞
相手を信頼するということは、たしかに素晴らしいことかもしれません。ただし、これは相手を騙さないという相互信頼の土壌がある日本国内の日本人同士でだけ通用することです。「人を見たら泥棒と思え」と教えられているような相互不信の国では、全く通用しません。
中国には「宋襄の仁」ということわざがあります。これは、宋と楚の戦争に際し、宋の君主である襄公が、息子から「楚軍の準備がまだ整っていないので、これを撃ちましょう」と進言されたのに対し、「相手の弱みにつけ込むのは君子ではない」と言って退け、楚軍の陣形が整うのを待ってから出陣したところ、宋は楚に大敗を喫してしまったことから生まれたものです。
日本人同士なら、相手に情けをかけるということは、美談になることでしょう。しかし、中国ではこのことわざは、つまらない情けをかけたために大損することのたとえであり、宋襄は「間抜け」の代名詞として、後世の笑いものになってきたのです。
これだけ文化風土が違うのです。昔から「日本の常識は世界の非常識」と言われてきましたが、日本人同士なら通じることが、中国や海外ではまったく通じないことを知るべきです。
◆前文に込められた米国の意図
そもそも日本国憲法が、アメリカから押し付けられたということは、歴史的な事実です。よく護憲派は「芦田修正などにより日本人が手を加えたのだから、独自の憲法だ」などと強弁しますが、現在のバイデン大統領も、かつて「我々が(日本を)核武装させないための日本国憲法を書いた」と発言しています。
この発言からすれば、憲法前文で「諸国民の公正と信義に信頼」して、「自らの安全と生存を保持する」という内容にしたのも、安全保障において日本人の自己決定権を奪い、弱体化させようという意図からであるということは、容易に想像できます。
このような発言は、バイデン大統領だけではありません。ケネディ元駐日大使も、現役の大使時代に、「ベアテ・シロタ・ゴードン−日本国憲法に女性の権利を書き込みました」と自身のツイッターで発言しました。
ベアテ・シロタ・ゴードンは、GHQの憲法草案に関わったアメリカ人女性ですが、つまりケネディ大使は、日本国憲法はアメリカがつくったということを、明言したわけです。
護憲派がいくら「日本国憲法は日本人がつくった」と言っても、アメリカ政府の高官や大統領などは、そう思っていないのです。よく韓国では武士やキリストまで何でも「韓国発祥」だという「ウリジナル」を主張する人がいますが、アメリカでは大統領までもが日本国憲法は「アメリカ発祥」だと言っているわけです。
もしもこれが間違っているというなら、護憲派はアメリカ政府に抗議すべきでしょうが、そのような話を聞いたことがありません。
加えて、護憲派が目の敵にしているのが、安倍元首相であり、ロシアのウクライナ侵攻についても、「24回も会談したのに、お金だけ巻き上げられて何もできなかった」と批判しています。
もちろん、政治家である以上、外交や政策の失敗については批判されるのは当然ですが、野党の護憲派政治家が、絶対に「では自分たちはどうするか」「これから自分がプーチンに直談判する」などとは言わず、いつまでも安倍批判ばかりしていることについて、あまりに人任せで無能だと思わざるをえません。
結局、国外の現実は無視して、国内の政敵批判ばかりしているのが護憲派や護憲野党なのです。その根本には「諸外国の公正と信義に信頼して」いるため、海外の脅威は脅威と映らず、危機を危機と感じられず、あるいは意図的に無視して、日本人の安全はそっちのけで、与党の揚げ足取りにばかり奔走しているのではないかと思います。
私からすれば、諸外国はみんな善で、日本だけが悪だというように見えてしまう、「日本国憲法脳」=GHQの洗脳に、いまだ侵されていると思わざるをえません。
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