いまや台湾土産として定着した感のある「カバラン(KAVALAN)ウイスキー」ですが、10年ほど前に目にしたときは「台湾でウイスキー!?」と誰もが疑っていました。ところが、一口ふくんでみると、鮮烈な味わいのある、ウイスキーらしいウイスキーだったので驚きました。
本会が昨年10月に催した第32回「日本李登輝学校台湾研修団」の野外研修でも、宜蘭のカバランウイスキー工場を訪ねています。
近年は「オマー(OMAR)ウイスキー」が席捲しはじめ、今年4月に世界でもっとも権威があると言われるイギリスの品評会「ワールド・ウイスキー・ アワード」で受賞するなど、評価も上々のようです。
一昨年(2018年)10月に本会の「役員・支部長訪台団」で、現在、監察院院長の陳菊氏が総統府秘書長(官房長官に相当)のときに総統府に表敬訪問しましたが、そのお土産にいただいたのがこのオマーウイスキーでした。まろやかなで洗練された芳醇な味に驚きました。
亡くなられた台湾独立建国聯盟主席の黄昭堂氏も李登輝元総統もお好みのウイスキーは「マッカラン」という銘柄で、李元総統は訪問したお客様へのお土産にも使われていました。このマッカランに似たオマーウイスキーがもっと早く世に出ていれば、お二人とも「これは、いいよ」と勧められていたかもしれません。
世界五大ウイスキーの産地はアイルランド、スコットランド、アメリカ、カナダ、日本だそうですが、下記に紹介する台湾国際放送の記事は、意気揚々とした筆致で「“美味しいウイスキーは寒い地方でしか作れない”というのも今や昔のこと。今では、世界中で様々なウイスキーが生まれ、それぞれの土地で進化を続けています。その代表ともいえるのが“台湾”です」と述べ、「台湾とインドを加え、“世界7大ウイスキー”と呼ばれることもある」と、世界から台湾ウイスキーが注目されていることを伝えています。
—————————————————————————————–世界が注目!“台湾ウイスキー”【台湾国際放送:2020年9月22日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/92861
台湾のお酒というと、“台湾ビール”や“高粱酒”が有名ですよね。でもこの十数年ほど、台湾の“ウイスキー”も注目を集めています。
ウイスキーといえば、アイルランドで芽生え、スコットランドから広がり、「世界の5大ウイスキー」と呼ばれる有名な生産国は、アイルランド、スコットランド、アメリカ、カナダ、日本とされていて、“美味しいウイスキーは寒い地方でしか作れない”といわれていました。日本でも北海道や山梨など北部で生産されているイメージが強いですよね。
しかし、“美味しいウイスキーは寒い地方でしか作れない”というのも今や昔のこと。今では、世界中で様々なウイスキーが生まれ、それぞれの土地で進化を続けています。その代表ともいえるのが“台湾”です。
台湾のウイスキーを世に知らしめたのは「KAVALAN(カバラン)ウイスキー」でしょう。
100年以上続く海外の蒸留所への憧れから始まり、新しいウイスキーの故郷となる事を夢見て2006年に蒸留所を設立。
2008年に最初のウイスキー「カバラン クラシック・シングルモルト・ウイスキー」を発売。2010年に、イギリスで開催された「ウイスキー ブラインド・テイスティング大会」で「カバラン クラシック・シングルモルト・ウイスキー」が優勝し、ウイスキーファンから注目を集めることになりました。
しかもその同じ年に「モルト��ぢウイスキー��ぢイヤー��ぢブック」のウイスキー生産地に“台湾”が初登場し、台湾がウイスキーの産地だという認識が広がりました。
そしてその後も、世界で最も権威あるイギリスのウイスキー・コンペティションである「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」やイギリスの酒類品評会「インターナショナル・ワイン��ぢアンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)」など、様々な有名コンペで毎年賞を獲得しています。
当初は、「亜熱帯地方である台湾でウイスキーなんて…」と思われていたそうですが、現在では技術の進歩によって、厳密な温度管理や湿度管理が可能になったために、気候はさほど問題にならないそうで、むしろ、上質な水をどれだけ確保できるかが重要なんだそうです。
この「カバランウイスキー」の工場がある台湾北東部・宜蘭は、昔から名水の地として有名で、 “台湾5大山脈”である「雪山」と、「中央山脈」から流れ出る雪解け水を使っているそうです。
そこに台湾の野生酵母を使って独自に培養した酵素を使っていることから、「カバランウイスキー」は南国フルーツのようなトロピカルなフルーティさが特徴です。
その「カバランウイスキー」では、今年の10月に、2番目となる、“シェーブ(削る)”、“トースト(焼く)”、“リチャー(強火で焦がす)”というS.T.Rの3行程を加えたカスク(樽)で熟成した、カバラン初の“ピートウイスキー”をクリスマス用の特別セットとして出荷するそうですよ。ピートウイスキーの魅惑的なスモーキーさによって、大胆でフルーティな香りになっているそうです。気になりますね。
でも実は、台湾のウイスキーは「カバラン」だけではありません!台湾最大の酒類公営企業である台湾●酒公司(Taiwan Tabacco & Liquor Corporation/TTL)のウイスキー「OMAR(オマー)」。(●=草冠に於)
台湾中部・南投に工場があるんですが、この工場では元々、台湾産フルーツを使ったワイン、ライチ酒、梅酒やブランデーなどを造っていたそうですが、ウイスキーの製造工程を習得するために酒造の専門家らをスコットランドに派遣し、正統のスコットランドのウイスキー醸造過程を学んだそうです。
そして2008年にウイスキーの蒸留工場を設立、2013年にはじめての「カスクストレングスのモルトウイスキー」のバーボン樽とシェリー樽の製品が発表されました。
2014年には国際的なスピリッツ類の品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」で「カスクストレングスのモルトウイスキー」のバーボン樽が金メダル賞を、シェリー樽が銀メダル賞を。そしてイギリスの酒類品評会「インターナショナル・ワイン��ぢアンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)」やアメリカ最大規模の酒類コンペティションである「サンフランシスコ世界スピリッツ・コンペティション(SFWSC)」など、数々のコンペで賞を獲得しました。そしてその後も毎年、様々な賞を獲得しています。
今年も4月に行われた世界で最も権威あるウイスキーコンペティション「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」や、6月に行われたアメリカ最大規模の酒類コンペティションである「サンフランシスコ世界スピリッツ・コンペティション(SFWSC)」で受賞したのに続き、先月、イギリスの酒類品評会「インターナショナル・ワイン��ぢアンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)」で「オマーウイスキー」が銀メダル2個、銅メダル4個を獲得しました。
受賞した2個の銀メダルのうちのひとつは、南投蒸留所の代表作「カスクストレングス・モルトウイスキー」のバーボン樽。そしてもうひとつは「カスクストレングス・ピートモルトウイスキー」で、台湾初のピートでスモークした麦芽で生産されたウイスキーでした。
そう、実は「カバラン」よりも先に「オマー」の方がピートウイスキーを作っていたんですよ。
共に世界各国の専門家かから高い評価を受けている「カバラン」と「オマー」。台湾産ウイスキーとして世に登場し、注目を集めたのは「カバラン」が少し早かったのですが、「オマー」もほぼ同時期に、いや、構想から入れるともしかしたら「オマー」の方が早くから台湾産ウイスキー作りに向けて取り組んでいたといえるかも知れません。
でも、ウイスキー作りへの憧れだけでなく、こういったライバルがいるからこそ台湾内でも互いに切磋琢磨して成長している“台湾のウイスキー”。どちらも台湾が有する大きな山々からの恵みの水を使い、南国台湾ならではの特徴を加えた香りと味わいは、これまでのウイスキーとはまた一味違ったウイスキーの世界を楽しませてくれます。
今や、5大ウイスキーに加え、この台湾とインドを加え、“世界7大ウイスキー”と呼ばれることもある、注目の台湾ウイスキー。20歳を超えている皆さん、ぜひ味わってみてくださいね。
なお、ご紹介した宜蘭にある「カバラン」のウイスキー工場も、南投にある「オマー」のウイスキー工場も、どちらも見学することができます。新型コロナが落ち着いて、また台湾を訪れることができるようになりましたら、ぜひ台湾ウイスキーを作っている様子も見学に行ってみてください。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。