武漢肺炎の封じ込めに成功している台湾の国際的な評価が高い台湾で、その中心的な人物の一人が陳建仁・前副総統だ。国立台湾大学動物学科卒業後、医学部の大学院「公共衛生研究所」で修士号を取得し、米国のジョンズ・ホプキンス大学公共衛生学部流行病および人類遺伝学の大学院で博士号を取得した公共衛生の専門家だ。
2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行のときには衛生福利署長として感染防止の第一線に立って活躍、中央研究院副院長のときに蔡英文氏から副総統に指名されて当選している。
6月3日、イギリス議会下院のジェレミー・ハント委員長による要請に応じて、同委員会がテレビ会議方式で行った公聴会に出席、台湾における武漢肺炎への対応について説明したという。「Taiwan Today」が伝えているので下記に紹介したい。
なお、陳建仁氏は、副総統退任後、恩給受給や送迎車などの待遇が得られることになっていたが、この待遇を辞退して中央研究院での研究に従事すると公表している。いかにも篤実な研究者の一面を伝えるエピソードだ。
—————————————————————————————–陳前副総統が英下院のリモート公聴会に参加、コロナ封じ込めに称賛の声【Taiwan Today:2020年6月5日】
陳建仁前副総統が台湾時間の3日午後9時半から、イギリス議会下院(庶民院)保健・社会的ケア特別委員会(Health and Social Care Select Committee)のジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)委員長による要請に応じて、同委員会がテレビ会議方式で行った公聴会に出席、台湾における新型コロナウイルス(COVID-19)封じ込めの成果を説明した。陳前副総統はまた、感染経路追跡(track and trace)の経験を紹介し、参加したイギリスの国会議員から広く評価された。
この公聴会はイギリス前外務大臣のハント委員長が議長を務め、保健・社会的ケア特別委員会の11名のメンバー全員が出席。イギリスが新型コロナウイルスに対抗していく上で、個人用防護具(PPE)と感染経路追跡の面で果たす役割と執行戦略を探ろうとするもの。公聴会にはイギリス政府による防疫応用プログラムの開発にビッグデータで協力するオックスフォード大学のChristophe Fraser教授も証人として出席した。
ハント委員長は過去に受けた取材の中で、台湾におけるウイルス封じ込めの成果を評価する発言を度々行っており、今回の公聴会でも、台湾における感染調査と感染制御での卓越した成績はイギリスが参考にする価値があると改めて賞賛した。また、James Davies議員、Paul Bristow議員、Amy Callaghan議員、Rosie Cooper議員らも台湾の取り組みを高く評価したほか、「他国でも行える措置は何か」、「台湾が封じ込めに成功した最大の原因は何か」、「どうすれば人々を防疫政策に従わせることが出来るか」、「防疫教育の重要性」、「台湾が世界保健機関(WHO)から除外されていることは、台湾での防疫の取り組みに影響しているか」などについて陳前副総統に意見を求めた。
陳前副総統は席上、台湾が封じ込めに成功した主な3つの原因として、「注意深い態度」、「迅速な対応」、「先手先手の配備」を挙げ、台湾での実際の取り組みを詳しく説明。また、防疫に取り組む政府機関を人々が強く信頼していることの重要性も強調した。陳前副総統は、世界が協力してこそ感染症の制御が可能になると強く主張、台湾はWHOのネットワークから外されているため感染防止に関する全面的な情報の取得が困難であるほか、他国の防疫戦略を十分に知ることも出来ないと訴えた。そして陳前副総統は、台湾のWHO参与は3つの勝利につながり、台湾・WHO・国際社会の三者を同時に幸福に出来ると主張した。
この公聴会のノーカット映像は以下のリンクで視聴可能。https://parliamentlive.tv/Event/Index/7c6a6a33-f653-4eff-8157-ab6bba7e63cb?fbclid=IwAR09u4IkIkRi9oQCy3ISo39Je4H1P_Ddp621fd506pjXLO3loa2_Vfrirdk
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