4/14(火) 夕刊フジより
中国発の新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが利かない。米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、世界全体の感染者は12日、180万人を超え、死者も11万人を超えた。日本の感染者は同日、累計7378人(クルーズ船除く)、死者は計150人。こうしたなか、毒性学や生物兵器・化学兵器の世界的権威である、米コロラド州立大学名誉教授の杜祖健(アンソニー・トゥー)氏(89)を、ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急寄稿第10弾で再取材した。中国では国内流行が終息段階と伝えられるが、信用できるのか。「人工的ウイルス」の可能性は。結核を予防するBCG接種と新型コロナウイルス死亡率の相関関係などを、一気に聞いた。
「中国は自宅で亡くなった人を死者数に加えておらず、症状が軽い患者は退院させて、患者数を低く操作しているとも聞いている。習近平国家主席の側近が、発生地である湖北省武漢市に送り込まれたので、『患者が少なくなったのは、習氏の指導のおかげ』と宣伝したいのだろう」
杜氏はまず、こう語った。
米ブルームバーグ通信が今月初め、米情報機関が「中国政府は、新型コロナウイルスの感染者と死者を、実数よりも少ない虚偽の数字を公表している」という機密報告書をホワイトハウスに提出した-と報じたことを受けた感想だ。
杜氏は1930年に台北生まれ。台湾大学卒業後に渡米、スタンフォード大学やイエール大学で化学研究に従事し、コロラド州立大学教授に。天然毒が専門で、80年代にはソ連の生物兵器開発について、毒物のデータベース作成などで米政府に協力した。オウム真理教による一連のサリン事件で、サリンの分析方法を日本の警察当局に指導し、2009年に旭日中綬章を受章した。
先月初めに緊急来日した際、政府・与党関係者と接触したうえ、日本の複数メディアに登場して、新型コロナウイルスについて「世界(の専門家の間)では『人工的なウイルスだろう』という意見が多い」と発言して、注目された。
この発言に対して、異論・反論もあったが、杜氏は続ける。
「反論の根拠を聞くと、『ウイルスはいずれ自分の所にも戻ってくる。そんな危険なものを使うはずがない』といった希薄なものだった。だが、2001年の米中枢同時テロ後、米国では炭疽(たんそ)菌によるテロ事件が発生している。攻撃用として生物・化学兵器を準備している国は存在する。米国は『防御のため』に研究している。ウイルスが漏れたり、使用される可能性はある。先入観を排除して情報収集すべきだ」
海外では、結核予防のBCGワクチンが、新型コロナウイルス感染症の発症や重症化を防ぐ可能性が指摘され、オランダやオーストラリア、英国、ドイツなどで臨床治験が始まっている。
日本では0歳児を対象に定期接種が行われているが、米国やイタリアなどでは一律での接種を行っていない。新型コロナウイルスの死亡数とBCG接種国を色分けしたグラフを見ると、接種中止国などに死者数が多い。
杜氏は「(医学的な効果は不明だが)グラフを見る限り(BCG接種との)関係はあり得る」といい、「日本が他国と比べて感染者や死者の増加が遅いのは、衛生環境が優れていることが背景にあると思う」と述べた。
ちなみに、日本ワクチン学会も、BCG接種による効果は科学的に確認されていないとの見解を公表している。
米国では昨年10月以降、季節性インフルエンザで1万6000人が亡くなっている。そのため、一部では「実は、新型コロナウイルスだったのではないか?」との噂が出ている。
この件については、台湾初の医学博士となった杜氏の父、杜聡明博士を尊敬する日本在住の台湾人医師、林建良氏が次のように答えた。
「新型コロナウイルスが、季節性インフルエンザと明らかに異なる点は、肺に体液が一気に充満して、肺が溺れたような状態となって死に至ることだ。それから、肺だけなく、ほぼ全ての臓器にウイルスが入り込む可能性があること。SARS(重症急性呼吸器症候群)のようにウイルスが消えるかどうかは、現時点で誰にも分からない。ウイルスの抗体ができても、エイズのように体内から消えない可能性もある」
ともかく、「死のウイルス」には厳重警戒すべきだ。
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