やっぱり中国の「一国二制度」など絶対に信用できない  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2019年6月12日号】

*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。

◆基本的人権を無視した「逃亡犯条例」に反対の大規模デモ

 日本のメディアでも大きく報道されていたので、ご存知の方も多いでしょう。香港で大規模なデモがありました。「逃亡犯条例」に反対するためです。

 これは、中国本土での事件に関与した疑いがある容疑者を香港当局から中国当局に引き渡す制度であり、この条例が成立してしまうと、冤罪(えんざい)で拘束された民主運動家などが中国大陸に移送され、不当な扱いを受ける恐れがあるのです。香港人たちは、人権も法律も無視した一方的な強制力を行使され、常に中国共産党の強権を恐れなければならなくなるのです。

 いかに香港が「一国二制度」の名の元に中国化を強いられているとはいえ、基本的人権を無視するような条例の成立を黙った受け入れることはできないということです。

 報道にもあるように、デモには103万人以上が参加したとのことです。これは雨傘革命以来の大規模なデモであり、香港政府施設周辺では警察とデモ隊が衝突しケガ人も出ました。警察は催涙スプレーなどでデモ隊に対抗したとのことです。

 このデモに参加し、デモの翌日には日本で記者会見を開いて香港の窮状を訴えた周庭さんは、「香港はあきらめない」と誓うと同時に、日本人にも他人事ではないと警鐘を鳴らしました。

 周庭さんは、17歳で雨傘革命に参加して以来、香港の「民主の女神」などと呼ばれる人物で、日本でも何度も講演活動を行っています。周庭さんは、条例が成立することで香港に公平な裁判や法律がなくなれば、国際金融都市としての魅力はなくなると訴えて、国際社会の関心や協力を呼びかけました。政治活動にも積極的に参加していますが、議員に立候補することさえ許されなかったようです。

 しかし、はっきり言って香港はもうすでに中国の一部です。一国二制度というのは口実で、中国共産党に呑み込まれるのは時間の問題でした。今後、「逃亡犯条例」が成立してしまった後は、デモをするだけで逮捕され中国に移送されて、非人道的な扱いを受けることになるのです。

◆「逃亡犯条例」が証明した「一国二制度」というまやかし

 この騒動は、2020年の総統選挙を控えた台湾にとってはいいクスリです。中国の「一国二制度」という言葉がいかにまやかしかを証明してくれました。

 以前もこのメルマガで書きましたが、世界全体がバランスを失ったコマのように迷走しているように思えてしかたないのです。

 ロシアでは、政府に批判的な新聞記者が麻薬販売容疑で拘束されました。モスクワ市・州の大規模汚職について追及していたところだったそうで、口封じのために拘束されたのではないかと報じられています。また、ロシアの有力新聞3紙が共同で「事実無根だ」とする共同声明を発表しました。メディア規制が厳しいロシアでこのような動きは珍しく、大規模な市民デモも計画されているとのことです。

 米中貿易経済戦争もまだまだ収束の様子はありません。トランプ大統領は、中国が首脳会談に応じなければ報復関税を発動するとも発言しています。その影響かどうなのかわかりませんが、香港のデモに対して中国政府は、デモの背後に外国勢力の存在があるという認識を示し、「断固反対する」と言っています。

 2018年にサウジアラビアの記者が殺害された事件がありました。この時も、各国が自国の利益を守るため、それぞれが殺人事件を利用しようとしました。サウジアラビアは石油大国ですから、アメリカやトルコだけでなく日本も一枚かんでいます。殺人事件の真相など、この際どうでもいいのです。結果は、政治的判断でどうするかが決まるのです。

 オーストリアのデモでは、警察官がデモ隊の一人を何度も殴る動画が報道されました。

 権力、民主、自由、正義。今、世界ではその定義や枠組みが混とんとしており、日本を含め世界各国は向かうべき方向を失っているように思えます。

◆中国に返還されて「アジアの真珠」の輝きを失った香港

 香港の運命は、アヘン戦争(イギリスは貿易戦争と呼んでいます)後、南京条約の締結をめぐって、イギリスははじめ長江出口にある舟山群島を要求しましたが、長江の出入口を押えられるのを嫌った清国はそれを断り、代わりに人口5000人の離島である漁村をイギリスに渡したことから始まりました。

 そもそも支那人はアヘン嗜好が強く、国外からアヘンを手に入れることができなくなると国内栽培を始め、戦後は戦前の約100になったともいわれています。

 上海マフィアの杜月笙が経営するアヘン売買会社「三●公司」は、アヘンの売買で巨額の富を得ました。その年収は、中華民国政府GDPの6分の1にものぼると言われています。そして、雲南や満州は世界最大のアヘン栽培地として有名になり、中華人民共和国の時代になると、4人に1人がアヘン経験者となったとの統計もあります。(●=金の下に金金)

 一方で香港は、イギリスの植民地になってから中国人の駆け込み寺となり、1994年の中国返還に至るまでに、香港の人口は700万人以上にふくれあがると同時に、中国の金融センターにもなりました。隣接の深圳(シンセン)も開放都市のシンボルとして人口は急増し、1000万人近くになりました。あまりに人口が増えたため、上海と広東、広州と香港の人口を合わせると4500万人のメトロポリスができるとの計画までありましたが、中華人民共和国が文革を経験している間に香港は法治と自由の地として中国人の逃げ場となっていたのです。

 香港は一時、中国からカネ、ヒト、モノの逃亡先として利用されていましたが、中国に返還されてからはアジアの真珠としての輝きを失いました。中国の掲げる「一国二制度」は、50年間は不変だという約束がありましたが、中国は一党独裁の国ですから、約束はあってないようなものです。

 イギリスは約束を守っていましたが、もはやイギリスも香港とは無関係となりました。中国からすれば、「昔は昔。今は今」ですから、香港は自分のもので好き勝手にできる場所なのです。

 さらに中国は、経済が豊になるにつれて国民をデジタル管理しはじめました。その上、盗み、裏切り、約束反故というメンタルは中国の文化風土であり不変のままです。南シナ海や尖閣諸島などの問題も、そうした歴史的歩みの上に中国の主張が成り立っていることを知ることで、対処法を練ることができるでしょう。


【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

*台湾ビール(缶)は在庫が少なく、お申し込みの受付は卸元に在庫を確認してからご連絡しますの
 で、お振り込みは確認後にお願いします。【2016年12月8日】

● 美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【常時受付】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、宅配便の都合により、恐縮ですが1件につき
 1,000円(税込)を別途ご負担いただきます。【2014年11月14日】

*本会でご案内してきた台湾の高級調味料XO醤は、このほど台湾メーカーの都合により日本へ出
 荷できなくなったことが判明しました。今後も入荷できない状況となりましたのでご案内を取り
 止めます。ご了承のほどお願いします。【2019年4月16日】

● 2019年:特選台湾産アップルマンゴーお申し込み【締切=7月18日】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/j1nloiu8pdbz

● 2019年:パパイヤ・マンゴー詰め合わせセットお申し込み【締切=6月28日】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fy8rd2eheoo7

● 台湾土産の定番パイナップルケーキとマンゴーケーキのお申し込み【常時受付】
  2,900円+送料600円(共に税込、常温便)[同一先へお届けの場合、10箱まで600円]
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/2018pineapplecake/

● 最高級珍味 台湾産天然カラスミのご案内【常時受付】
  4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)[同一先へお届けの場合、10枚まで700円]
  http://www.ritouki.jp/index.php/info/20160427karasumi/
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/20160427karasumi/

● 書籍お申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・浅野和生編著『日台関係を繋いだ台湾の人びと(1)・(2)』*new
・劉嘉雨著『僕たちが零戦をつくった─台湾少年工の手記』 *在庫僅少
・渡辺利夫著『決定版・脱亜論─今こそ明治維新のリアリズムに学べ』
・呉密察(故宮博物院長)監修『台湾史小事典』(第三版)  *在庫僅少
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』 *在庫僅少
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

● 台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

*第1号〜第15号(最新刊)まですべてそろいました。【2017年6月8日】

● 映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『海の彼方』
・『台湾萬歳』
・『湾生回家』
・『KANO 1931海の向こうの甲子園』*在庫僅少
・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『台湾人生

● 講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・2018年 李登輝元総統沖縄ご訪問(2018年6月23日・24日)*new
・2014年 李登輝元総統ご来日(2014年9月19日〜25日)
・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
・入会申し込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(渡辺利夫会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1
 Twitter:https://twitter.com/jritouki

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:00110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。



投稿日

カテゴリー:

投稿者: