1956年3月、台南市に生まれた呉氏は、記事にもあるように、台湾大学歴史学科卒、東京大学大学院で修士号を取得後、同大学院で博士課程を修了している。台湾大教授の後、成功大学教授や台湾歴史博物館館長、国史館館長などを歴任している。
伊能嘉矩生誕150年の一昨年は、8月に岩手県遠野市で開かれたシンポジウム「日本と台湾の神話・伝説・昔話」にはパネリストとして登壇し、昨年7月には、台湾大学図書館に収蔵されていた伊能嘉矩文庫を解明したことにより遠野文化賞を受賞している。
主な著書に『台湾近代史研究』『一個台湾人的日本経験』『台湾対話録』『日本観察―一個台湾的視野』などがあり、日本語の編著に『台湾史小事典』『記憶する台湾―帝国との相剋』など。
特に『台湾史小事典』は、その原著が李登輝政権下の1997年に中学生用歴史教科書『認識台湾・歴史篇』の副読本として編纂され、2007年に日本語訳が出版され、2010年に増補改訂の第2版、2016年に第3版が出されていて、日本人が台湾史を知るうえで手ごろな文献となっていて好評を博している。本会の『取扱い図書』となっているので、別途ご紹介したい。
————————————————————————————-故宮博物院の新院長に台湾史学者 文化と観光、併せ持つ空間への転換目指す【中央通信社:2019年2月14日】
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201902140002.aspx
(台北 14日 中央社)国立故宮博物院の新院長に14日、台湾史を専門とする歴史学者、呉密察氏(62)が就任した。呉氏は13日、中央社の取材に応じ、故宮の重要な観光資源への転換を図り、文化と観光両方の意義を併せ持つ空間として発展させる方針を示した。
呉氏は台湾大学歴史学科卒、東京大学大学院で修士号を取得後、同大学院で博士課程を修了。台湾大教授のほか、国史館館長や国立台湾歴史博物館館長などを歴任した。呉氏について行政院(内閣)のKolas Yotaka(グラス・ユタカ)報道官は、歴史に関する豊富な知識や博物館の運営・管理の経験を持つと紹介し、これらのキャリアを故宮の発展に役立ててもらいたいと述べた。
呉氏は、故宮は国際的にも有名な博物館であり、人類の文明史において非常に重要な文化財を多く所蔵していることに言及。これらこそが故宮が持つ最大の資源だとし、新しい時代に合った全く新たな解釈で文化財を展示する方針を示した。これまでの故宮の展示方法は静的なものだったと指摘し、現在は新技術を使ったさまざまな展示が可能だとも語った。また、重要な文化財を今後は北部院区(台北市)と南部院区(嘉義県)で交互に展示するという。
台湾では先月11日、昨年11月の統一地方選での与党・民進党の大敗を受け内閣が総辞職。蘇貞昌氏が行政院長(首相)に就任したが、故宮博物院院長だった陳其南氏の後任は決まっていなかった。
(鄭景ブン、顧セン、温貴香/編集:楊千慧)