これはこれで一つの対応だろう。中国には「上有政策、下有対策(上に政策あれば、下に対策あり)」という格言があることを思い出させる。米国のアメリカン航空とデルタ航空も、台湾の各空港のみを表示し、国・地域名を表示していないという。
米国はすでに4月5日にホワイトハウス声明を発表し、『1984』で政府による監視社会を描いたジョージ・オーウェルを引き合いに、中国の要求は「オーウェル氏の作品を想起させるような馬鹿げたものだ」と批判するとともに「米国は国内外で民間企業が顧客と接触する際に享受する自由を尊重する」と表明している。
7月24日、国務省のナウアート報道官は「民間企業の表記の仕方について政府が要求を行うことに反対すると述べ、中国の行為に反対する米国の立場を改めて示した」(中央通信社)という。
日本の航空2社、国名記載せず 台湾表記問題 ウェブサイト変更【日本経済新聞:2018年7月24日】
全日本空輸と日本航空は24日、航空券予約サイトの国・地域を選ぶ欄で、中国と台湾をともに表記しない対応をとった。中台を含む東アジアは直接、都市名を選ぶようにした。中国の民用航空局が航空大手にサイト上で台湾を中国の一部と明記するよう求める一方、中国の指示に従う航空会社には台湾側が反発。2社は板挟みとなっていた。
これまで全日空と日航の航空券の予約サイトでは出発地や目的地に中国や台湾、香港といった国・地域の選択項目があり、その上で都市名を選ぶことになっていた。今後は選択項目にこれらの国・地域名を載せずひとくくりの「東アジア」に変更し、直接都市名を選ぶ形にする。中国と台湾の顧客向けを含む各国のサイトや日本語、中国語、英語などで表示する全てで適用する。
中国ビジネスへの影響を恐れた海外の航空会社の中には、中国当局の求めに応じた企業もある。日本の航空会社は国・地域名の表記を避ける手法を選択。大韓航空も同社の予約サイトで同様の対応を取り、中国当局から抗議などはない模様だ。サイト表記の変更で事態は「収束に向かうとみている」(全日空)という。
台湾の表記を巡っては、中国当局が4月、世界の航空会社44社に台湾を中国の一部として表記することを要請する通達を出した。変更しない場合は、法律に基づく処罰を含む踏み込んだ対応を取ると伝えたという。
全日空と日航は一時、中国と香港の顧客向けページのみで台湾の表記を「中国台湾」に変更した。日本や台湾向けは従来通り「台湾」の表記を維持したものの、台湾の外交部(外務省)は「(日本への)民衆の感情が特別」(李憲章報道官)という理由で、両社に抗議し訂正を求めると発表。中国と台湾双方に受け入れられる対応を模索していたなか、今回のサイト表記の変更となった。