台湾の声編集部 多田 恵 2017年12月5日
昨4日夜、台湾の立法院の「司法および法制委員会」では、刑法修正法案および組織犯罪防止法修正法案が第一次審査を通過した。
また本5日は、同院の本会議で、転型正義促進法の審査が進められている。
今回は、これらを中心に、台湾の政治ニュースをいくつかお伝えする。
1.刑法改正案
刑法外患罪の現行条文は、たとえば「中華民国国防にかかわる秘密にされるべき文書、図画、情報もしくは物品を漏洩もしくは交付した者は、一年以上、七年以下の有期懲役に処す。前項の文書、図画、情報もしくは物品を外国もしくはその派遣する人員に漏洩もしくは交付した者は、三年以上、十年以下の有期懲役に処す」(第109条)のように、「外国」、また第105条から107条までのように「敵国」という用語によって規定されている。
ところが、現在の台湾の司法実務においては、中国を「国」ではなく「中華民国の大陸地区」として扱っているため、国防上の機密を中国に渡したとしても、刑法では、ほかの国に渡した場合と同様の処分を科すことができなかった。
今回の修正案は、外患罪規定における「外国」を「外国もしくは敵」に改正することなどにより、中国への機密情報提供行為を防ごうとするものである。
2.組織犯罪防止法改正案
組織犯罪防止法(組織犯罪防制條例)の現行条文は、「犯罪組織」について、「暴力、脅迫、詐術、恐喝を手段とする、もしくは最も重い法定刑が五年の有期懲役を超える刑である罪に関与した三人以上からなる、持続性および営利性を有する構造を持った組織」と定義している(第2条)。
台湾では、「中華統一促進党」、「愛国同心会」といった中国統一派の団体が、暴力、破壊行為を重ねているが、これらの組織が、「営利性」を有していることを証明することが難しく、同法を適用できなかった。
今回の修正案は、「持続性および営利性を有する」を「持続性もしくは営利性を有する」に修正することで、「中華統一促進党」、「愛国同心会」のようなケースについても適用の対象とするものである。
3.転型正義促進法
本日、条文ごとに審査が行われている転型正義促進法(促進轉型正義條例)は、1945年8月15日(終戦)以降の不当な行為が対象とされている。高金素梅や中国国民党が1895年以降の日本統治期も対象にすべきだと異議を唱え、憲法解釈の申し立てを起こす構えを見せている。
実は、今日、大きく取り挙げられた立法院のニュースは、労働基準法修正案の委員会強行採決だが、その裏で与党・民進党は、台湾サイズの国家を建て直すための重要な法案の処理を着々と進めていたというわけだ。
4.国民党が不正に取得した資産の差し押さえ
行政執行署は、中国国民党の不正な党資産の回収を行う行政院不当党産処理委員会からの移送を受け、国民党が所有する不動産の差し押さえを進めている。本5日の報道によれば、国民党の台北市松山区の事務所、金門県の事務所を含む複数の不動産、および台北市中正区にある国民党シンクタンク「国家政策研究基金会」ビルに対し、差し押さえ手続きを進めているという。
5.モンゴル・チベット委員会を正式に廃止
11月28日には立法院で、「モンゴル・チベット委員会組織法」の廃止が決まり、中華民国に1928年に設置され、台湾に持ち込まれた「モンゴル・チベット委員会」が正式に廃止された。行政改革の一環とはされているが、台湾の国家正常化が一歩前進したといえる。
6.黄国昌・立法委員の近況
ひまわり運動から生まれた政党である時代力量の黄国昌・立法委員(汐止など新北市第12選挙区選出)のリコール(解職請求)の是非を問う投票が16日に行われる。これは「同姓婚」(婚姻平等化)に反対する人物が中心となって請求したもの。黄委員にはこのような試練に負けず、引き続き台湾の政治と司法の改革をリードしてほしいものだ。
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