台湾で今まさに起きている中台衝突―台湾大学「中国新歌声」事件
台湾の声編集部 多田恵
9月24日、台湾大学で学生ら独立派と統一派の流血の衝突があった。
「中国新歌声(Sing!
China)」という中国のテレビ番組が台湾大学の陸上競技場を使ってコンテストを行った当日、その経緯に学生たちが抗議し、コンテストを中止させた。抗議を受けて、台湾大学が貸し出しの中止を決めたためである。学生たちのグループは緑の台湾旗を掲げて抗議していた。また貸し出された陸上競技場は修復が必要だという。
この学生たちのうちの2人が「愛国同心会」や「中華統一促進党」のメンバーに取り囲まれた。それを救おうとした台湾大学歴史学科学生の張耿維氏(ちょう・こうい、32歳)に対し、中華統一促進党の胡大剛(61歳)が警棒で殴りかかり、後頭部に3センチの傷を負わせ出血させるなどした。これら統一派のグループは中国の国旗を持って集まってきていた。また、この衝突に関し、張安楽の息子が傷害の疑いで送検されている。
この問題について責任を問われた柯文哲・台北市長は、「内政部がウイルスをまいた」と内政部の責任であるかのように発言したが、民主進歩党の管碧玲立法委員は、移民署がこのイベントを許可したのは台北市文化局と体育局が共催なり主催としていたためであることを明らかにした。台北ユニバーシアード以来、独立派は、柯市長の対中姿勢に疑問を感じている。また中国の統一のための工作が台湾の地方自治体に食い込んでいることが伺える。
この陸上競技場の貸し出しの経緯について、また台湾大学が一度は、取り消しへと動き始めたものの、台湾大学農学部実験林に影響力のある高金素梅立法委員のスタッフからのクレームを圧力と感じ、取り消しを断念したという指摘もあった。高金素梅氏は「チケットを配ってしまったので、もし中止となれば、連絡をしなければならないため確認したものだ」とし、圧力をかけたことを否定している。
中国の国慶節である10月1日、中華統一促進党は、中国旗と青天白日満地紅旗を持ち、青地に中国旗と「私の国旗」という文字が描かれたTシャツを着て、台北駅付近で祝賀デモを行った。党総裁の張安楽は「中華民国を偲び、中華人民共和国を抱け」と訴えた。デモ参加者には、入れ墨を彫った若者も多かったという。このデモの参加者同士で覚せい剤の売買があったとして逮捕者が1名出ている。
台湾大学の「中国新歌声」衝突事件を受けて、新任の陳家欽・警政署長は、日本の原発事故被災地域の食品輸入再開についての公聴会、年金改革の地域懇談会、香港民主化運動家・黄之峰氏訪台時の暴力事件について、警察では、暴力団のメンバーが中華統一促進党の名義で暴力行為に従事していることを確認したこと、また今回の件で、竹聯幇系のグループについて捜査を行うこと、そして暴力団撲滅の意向を明らかにした。
台湾の国内で、今まさに、中国と台湾の衝突が起きている。