在沖米軍基地の台湾移転が中国の覇権進出をストップ  アンディ・チャン

アメリカの国連大使をつとめたジョン・ボルトン氏が1月17日付の日刊経済新聞「ウォールスト
リート・ジャーナル(WSJ)」紙に「米軍の台湾駐留によって東アジアの軍事力を強化できる」
と、在沖縄米軍の台湾への一部移転を提言した。

 この提言に、ケント・ギルバート氏は「ボルトン氏の提言が実現すれば、沖縄の基地負担を減ら
しつつ、南シナ海や尖閣諸島周辺でのPRCの横暴を、今より効果的に牽制できる」と高評し、
「在沖米軍基地への反対運動を行う勢力にとって、これ以上素晴らしい提言はないはず」にもかか
わらず、基地反対派からは絶賛する声がまったく聞こえてこないと皮肉った。

 アンディ・チャン氏もケント・ギルバート氏と同じ観点からボルトン提案を評価し「あれから10
日以上も経つのに日本、沖縄、そして台湾でもボルトンの提案が有識者によって討論されていない
のは不思議……ボルトンの新提案について沈黙しているのはまことに歯がゆい」と述べている。

 アンディ氏はさらに論を進め、「沖縄の基地を台湾に移せば中国は台湾を攻撃できなくなる。つ
まり、沖縄の米軍基地を台湾に移せば中国の覇権進出をストップできる」とボルトン提案の実現を
力説している。説得力に富む有益な指摘だ。

 原題は「沖縄の基地を台湾に移転」だったが、掲載にあたり、論旨を反映させ「在沖米軍基地の
台湾移転が中国の覇権進出をストップ」と改題したことをお断りする。


沖縄の基地を台湾に移転  アンディ・チャン
【Andy ChangのAC通信(No.628):2017年1月30日)

 今月17日にジョン・ボルトン元国連大使がウォールストリートジャーナルに寄稿し「米軍の台湾
駐留によって東アジアの軍事力を強化できる」と述べ、沖縄の米軍基地を一部台湾に移転すること
を提案した。

 あれから10日以上も経つのに日本、沖縄、そして台湾でもボルトンの提案が有識者によって討論
されていないのは不思議である。しかもトランプ大統領は米国の革新的利益を強調し、「一つの中
国」原則に疑問を呈したはずなのに、ボルトンの新提案について沈黙しているのはまことに歯がゆ
い。

 数年前に私が提案した東南アジア平和連盟(PASEA)で述べたように台湾は東アジアの中央、お
臍にあたる場所に位置している。沖縄から台湾に軍事基地を移転すれば東アジア全体に睨みが効く
し、沖縄の基地問題が解消される。つまり台湾は中国の覇権拡張を抑える肝心かなめの要塞であ
る。

●中国は大反対

 もちろん米国が沖縄の軍事基地を台湾に移転すると決めたら中国は大慌てで反対し、戦争になる
と恫喝するだろう。しかし台湾は中国の領土であるという「一つの中国」を守る必要に疑問を呈し
たトランプにとって中国の反対は当然と見るに違いない。

 カーターが台湾の中華民国と断交して中国と国交を結んでからこれまで、中国はアジアにおける
領土の主張を何回も変更して覇権進出を続け、今では台湾、尖閣諸島、南シナ海までみんな中国の
領土と主張するようになった。オバマのアジア回帰はリップサービスだけで少しも中国の覇権拡張
を抑えることができなかった。

 中国が南シナ海で軍事建設を進めてもアメリカは反対しなかった。中国の勝手な進出をストップ
しなければアジアの平和は得られない。中国の進出を阻止するなら米国と東南アジア諸国の連合が
必要だし、台湾が最も重要な戦略基地となる。

●台湾独立で中国の進出を封じる

 第二次大戦の終結から今日までアメリカは台湾問題を曖昧にしてきた。日本はサンフランシスコ
平和条約で台湾澎湖の主権を放棄したが台湾の主権は未決のままだった。台湾はいずれの国の領土
でもない。台湾の主権は台湾人民のものである。「一つの中国」は中国側の勝手な言い分である。
アメリカは台湾関係法で台湾の安全を保障したが台湾独立を支持していない

 台湾が独立を主張すれば中国は台湾を攻撃すると恫喝し、アメリカは戦争を避けるため中国の
「一つの中国」に反対しなかった。トランプ大統領が初めてこれに疑問を呈した事は、東アジアの
安全保障に新しい展開の可能性を迎えたと言える。沖縄の基地を台湾に移せば中国は台湾を攻撃で
きなくなる。つまり、沖縄の米軍基地を台湾に移せば中国の覇権進出をストップできるのである。
台湾に軍事基地を建設すれば日本海から南シナ海まで監視ができる。

 台湾海峡は世界でも最重要な商業航路で、毎日800隻以上の商船が台湾海峡を行き来している。
台湾海峡の安全を守るには台湾が必要である。中国の太平洋進出をストップするには台湾とフィ
リッピン間のバシー海峡と、台湾と与那国島や石垣島間の海峡を守るべきで、台湾に海軍基地を作
れば中国の艦隊の通過を阻止することができるのだ。

 台湾に米軍基地を作る事に中国の反対は予期できるが不可能ではない。ベトナム戦争時代に米軍
は台湾中部に清泉崗空軍基地を作ったが中国の反対はなかった。つまり米国が沖縄の基地を台湾に
移すことで中国が抗議しても問題はないと思う。

●台湾の米軍基地具体案

 ベトナム戦争から50年近くも経過して台湾は大きな発展を遂げたので台湾中部の清泉崗基地を利
用するには困難かもしれない。しかし台湾にはまだ基地を作る箇所がある。私の新しい米軍基地を
作る具体案とは次のようになる:

 第一に、台湾東北部の蘇澳港と南部の高雄港の海軍基地を台湾の海軍と共用使用する。これで台
湾と石垣島間の海峡と、南のバシー海峡の安全を確保できる。高雄海軍基地は中国の南シナ海の
島々の勝手な建設を監視する重要拠点である。蘇澳港は太平洋に面しているので底が深く潜水艦基
地に最適である。台湾の海軍基地は日本の横須賀、佐世保と関連してアジアの海の重要な抑えとな
るだろう。

 第二に、東台湾の台東の空軍基地と、西台湾の屏東と嘉義の空軍基地を拡張する。ベトナム戦争
時代に米軍が使っていた清泉崗基地は既に台中国際空港となっているので使えないが、嘉義と屏東
の空軍基地はまだ商業化していないので米軍基地として活用できる。台東基地は台湾中央山脈の東
側にあり空軍基地として最適である。

●台湾の戦略的位置

 PASEA構想は数年前に安倍首相の提案したダイヤモンド構想と同じ構想で、昔の大東亜共栄圏と
も同じである。日本と台湾がこれを推進すれば中国の進出を抑えることができるのだ。

 前述したように台湾は東アジアの中央に位置し、台湾海峡の安全を確保するのに最適である。中
国が台湾を併呑したら中国の太平洋進出は容易となり、アジア諸国は南北が分断され、中国は太平
洋のハワイから西アメリカ海岸まで出没できるようになる。中国の太平洋進出をストップするには
台湾が最も重要な拠点なのだ。つまり台湾独立はアジアに大きく貢献する。トランプ大統領が台湾
独立を援助すればアジアに平和をもたらすことができるのだ。


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