昨6月12日、パナマが突然中国と国交を樹立し同時に台湾と断交すると発表した。台湾では大騒
ぎになった。これで台湾と国交のある国は20カ国となった。
蔡英文総統は国民に談話を発表したが、要点は以下の通り:
(1)台湾は常に中国に対し善意を表現してきたが中国は92共識を強要して両岸の関係が悪化した。
(2)台湾の国家の利益と経済に影響はない。
(3)台湾は長期的に国際関係で困難だった。今後も民主と自由を追求し国家の運命を把握してい
くことに変わりはない。
蔡英文政権が発足して以来、中国の「一つの中国」に対し蔡英文は現状維持を続けてきた。現状
維持はアメリカの要求である。台湾独立を推進せず、中国と経済関係を維持することが中国と台湾
はウインウインの関係だと言う。米中の武力衝突を避けて台湾の戦略的地位の重要性を維持するの
が目的である。
一方、中国もアメリカとの武力衝突を避けたいが、台湾を併呑すれば太平洋に進出できる。だか
ら台湾と諸国の外交関係を断ち切って台湾を窮地に立たせる政策を取る。つまり、中国とパナマの
国交樹立は台湾への圧力だけでなく、アメリカに圧力を加えたのである。
台湾は米中暗闘の中間で宙ぶらりん状態を維持する外はないのか。台湾が国として国際関係を増
進させるにはどうすればよいのか。
台湾民進党はパナマ断交について中国に対し強い抗議の声明を準備したが、国民党は声明書に署
名することを拒否した。実は国民党の洪主席が数日後に中国を訪問し、海峡論壇にも参加するから
と言う。
台湾国内では中国に対する意見が纏まっていない。
●米国と中国の「中国政策」
中国とアメリカにはそれぞれ台湾問題に対する「チャイナポリシー」がある。中国側の主張はい
わゆる台湾三つのノー(台湾独立の不支持、二つの中国もしくは一中一台の不支持、台湾の国際組
織への加入の不支持)である。そして台湾が独立すれば武力攻撃をすると恫喝している。
これに対し米国の台湾政策は2つ、「台湾関係法に拠る台湾の安全保障」と「台湾への6か条確
約」(Six Assurances)である。
1.台湾への武器提供に停止日限を付けない。
2.台湾と中華人民共和国間の仲裁をしない。
3.台湾に対し中台交渉に圧力を加えない。
4.米国の長期にわたる台湾の主権問題に変わりはない。
5.米国は「台湾関係法」の改訂をしない。
6.台湾への武器提供について北京と事前協商しない。
つまり、中国と米国は違ったチャイナポリシーがあり、トランプは習近平との電話会談で「米国
はチャイナポリシーを守る」と答えたが、両国のポリシーは違ったものである。
●台湾の「中国政策」はない
アメリカは台湾の安全を守ると言うが、台湾は自己防衛が出来るかどうかもわからない。台湾は
米中双方の間にいても、自国の立場を明らかにしない。国内でも台湾の中国政策が曖昧で、いろい
ろ違った主張があり意見が統一していない。台湾人は独立願望が強いがアメリカは支持しない、そ
して中国は武力で阻止すると言う。台湾は中華民国の国名を変更しない。公民投票に拠る正名制憲
は公民投票法案を通さなくてはならないが、法案はまだ提出さえしていない。
台湾と中国の関係も曖昧で、「親中」、「和中」、「友中」のどれかもわからない。台湾は中国
に善意を示し中国は台湾に敵意しか示さない。中国は敵国であり友好国でもあるとは明らかな矛盾
である。
このような矛盾は(1)国民党の勢力が今でもかなり強いことと、(2)蔡英文・民進党が台湾
独立を捨てて中華民国の体制を維持し二大政党政治を進めるからだ。だから国民党を潰して台湾人
の台湾国を建立することは出来なくなる。これも現状維持の一つであり、現状維持は阿片のように
台湾を廃人同様にしてしまう。
●アメリカは最新武器を提供できない
アメリカは台湾への6か条確約があるから武器を提供すべきと言う。トランプ政権が発足したあ
と台湾はアメリカに対し最新武器の購買を何度も申し入れたと言う。台湾が欲しいのは潜水艦とF-
35戦闘機だが、アメリカは潜水艦を売らないので自己開発をすると決定した。F-35の購買について
は許可を出していない。
アメリカが最新武器の提供を躊躇う理由は、台湾の立場が明確でないからである。中国は敵か友
かわからないのに武器を売って、それが中国の手に渡れば大変である。米中戦争になったら、台湾
は米国と共に戦うか、洞ヶ峠を決め込むか、中国側につくか、中国に寝返るか、内通するか。態度
がハッキリしなければ武器提供は出来ない。
台湾は中国の一部ではない、「92共識」は認めない。台湾は台湾と呼ぶ国で、中華民国ではな
い。たとえ諸国と外交関係がなくなっても台湾の立場をハッキリと世界に発表すべきだ。
台湾が中国を敵国と見なすなら、米国は友国と見なして最新武器を売る。台湾は早急に「台湾の
中国政策」を発表すべきである。台湾が自立するには「修身」「斉家」「治国」の前に「誠意」
「正心」を明らかにすべきである。