【訂正】【解説】「一例一休」—台湾の労働基準法改正

「台湾の声」【訂正】【解説】「一例一休」—台湾の労働基準法改正

〔1月6日配信の記事について、不正確な箇所があったので加筆・訂正いたします。加筆・訂正箇所は【 】で囲んであります。〕

多田恵(台湾の声編集部)

 12月21日に台湾の労働基準法(労動基準法)が改正された。「一例一休」というのは事実上の週休二日であるという。

 これにより、映画館や外食産業をはじめとする業界における値上げが不可避であると見られ、消費生活への影響が心配されている。これについて政府側は給与も上がると説明している。

 改正された第36条では「労働者は7日ごとに2日の休息を持つべきであり、そのうち一日は“例暇”とし、一日は“休息日”とする」と規定されている。これが「一例一休」と称される理由であろう。

 改正前の条文は「労働者は7日ごとに1日の休息を持つべきであり、これを“例暇”とする」と定めていたので、新たに定められたのは、“休息日”ということになる。

 この「休息日」について、郭芳煜(かくほういく)労働部長(いわば労働大臣)は、メディアに対し、労働者の休息日であり出勤しても良いが、規定の残業報酬を給付しなければならない、と説明している。他方、「例暇」は、天災や突発事態を除き、雇用者が労働者を休ませなければならない休みであるという。

 【なお第39条では、これらの休みおよび国定の休日について、出勤日同様に賃金を支払うように定めている。また休日の労働に対しては、平日の倍額の給付を定めているが、これは改正前と同様である。】

 時間外労働の報酬について定めた第24条では、「休息日」の労働について、それが2時間以内の場合は、平日の賃金にその【1と3分の1】以上を加えた額、その2時間を超えた部分については、平日の賃金にその【1と3分の2】以上を加えた額を支給するよう求め、また、休息日の労働時間の計算単位について、4時間(1時間でも4時間労働したとして計算する)と定めている。

 なお日本の労働基準法では、【第35条で「毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と定めているが、これは台湾の労働基準法の改正前と同じ水準である。また、国民の祝日に休ませる義務はなく、これらの休日に賃金を支払う義務もない。ただ、】第37条で「休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(ただし60時間まで)」としている【だけである。台湾の労働基準法は】労働者に対して日本よりも手厚い保護を与えるものであると言えるであろう。

 以上、今回の改正のうち、「事実上の週休二日」という点について紹介した。

〔なお、上記記事について、1月8日に次の反響を掲載した〕

「台湾の声」【反響】「一例一休」 — 台湾の労働基準法改正

〔1月6日午前9時に配信した記事(“「一例一休」 — 台湾の労働基準法改正”)について、その現場にいるペンネーム「老セールスマン」さんからコメントをいただきました。現場の人々が感じていることはもちろん重要ですので、そのまま皆様に御紹介させていただきます。台湾の声編集部(多田恵)〕

現地で事業をしているものとして一言付け加えさせていただくなら、このたびの法律改正は些か拙速の感を免れません。

法案成立・翌日施行のため準備が整わず、多くの企業では賃金計算ソフトの更新など対応が間に合っていません。産業界の異議に対して労働部長が「今後関係者と話し合う」と発言するなど、後手に回った感を否めません。施行前に労使双方に十分な説明を行い、意見を求めればこれほどの騒ぎにはならなかったと悔やまれます。

また、台湾の法律では残業手当算出の基礎給与は月額を30日で割ったものですので、時給に直すと最低賃金すら満たない場合もあるそうです。
直接には日本と比較することは難しいと思います。

新政権は台湾国民の広範な支持を受けていますが、実務レベルでの未熟さが続くと心配です。

2017.1.24 09:00


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