(転載自由)
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以下は6年前に上梓した単行本「日本よ、こんな中国とつきあえるか」の一部ですが、参考のために再度掲載させていただきます。
「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
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■ 「愛国無罪」と「抗日有理」の本当の意味
日本人は「中国人は愛国心が強い」というイメージを抱いているように見受けられる。しかし、これは中国人に対するイメージの中でもっとも事実と異なり、むしろ錯覚と言っても過言ではない。
これは無理もない話で、例えば二〇〇五年四月に起こった反日デモや靖国神社や尖閣に反対するデモなどの映像は、中国人のヒステリックとさえいえる反応を映し出し、それが国を強く愛している民族だというイメージを日本人に焼き付けているからだと思われる。
現在、日本にはマスコミで活躍している約百五十名の中国人学者がおり、彼らは文章力に長け、宣伝力にも優れている。その中の十名ほどはコメンテーターとしてよくテレビにも出ている。特に中国にかかわる事件が発生すると、中国の宣伝機関に成り下がった感のあるNHKは中国人学者にすぐコメントを求める。
もちろん中国人学者は、ほぼ異口同音に中国人の愛国心を強調する。どうしてそうなるかというと、百五十名の中国人学者はすべて中国大使館の監視下にあるからに他ならない。彼らは定期的に大使館と連絡を取らなければならない立場にあり、従って彼らの発言は統制された言論活動といってよい。
では、中国国内には国民自らの意思で行う庶民レベルの反日デモはあるのだろうか。当時、ユーゴスラビアの中国大使館に対するアメリカの誤爆事件があって、アメリカ大使館にも激しい反米デモが行われた。一般的には庶民が自らの意思で行っている愛国行動と受け取られたようだが、果たしてそうなのだろうか。
これは、二〇〇五年四月の反日デモの際の一枚のプラカードを見れば分かる。プラカードには「愛国無罪」とあり、「抗日有理」とあった。「愛国無罪」とは「国を愛することは罪ではない」という意味であり、「抗日有理」とは「日本に反抗することは道理にかなっている」という意味である。
かつて中国では「愛国無罪」「造反有理」というスローガンが叫ばれた時期があった。造反(反逆)することは道理にかなっていると、次々と貴重な文化財を破壊し、権力の地位にある者を引きずりおろした。文化大革命のときである。
中国でのデモ活動は、実は庶民の娯楽になっている。なぜなら、言論の自由がない中国で唯一許されているのは「愛国」や「反日」に関してであり、デモは庶民にとっては日頃の鬱憤を晴らす絶好の機会として、愛国心の名の下であらゆる破壊活動をしているのが実態だからである。中国人の愛国心とは所詮この程度のものなのである。
なぜそう言えるのかというと、中国人の本質は自己中心的な民族であって、自分がいちばん大切なのである。その次が家族であり、そのまた次は宗族(信仰や血縁で束ねる部落)であって、それ以外の人間や組織は眼中にない。中国人にとって、自分の利益にならないことは大切だとは考えない。それ故、中国人の国民性からすれば、日本人がイメージする「お国のために」といような、愛国心に基づいた行動をとることはあり得ない話なのである。
■ エリート中国人学者の告白
私が一九八七年に日本に来たときにはまだ中国の開放政策ははじまったばかりで、外国に出られる中国人はごくわずかだった。留学という形で国外に出られるというのは、特権階級の子弟かエリート中のエリートに限られていた。
私は留学先の東大でいろいろな中国人に会い、彼らを家に招待して食事をしたこともある。そのときにもっとも多かったのは「どうしたら長く日本に留まることができるのか」もしくは「どうしたら中国に帰らないですむのか」という質問だった。
当時、非常に印象的だったのは、中国の武漢大学で講師をつとめていて東大に留学してきた朱さんの言葉である。すでに大学で教えているエリートの彼が、真剣な眼差しで「日本に残ることができるなら、皿洗いでも何でもして残りたい。そうすれば中国にいる家族をすぐに呼び寄せ、日本で暮らしたい」と訴えるように言った一言ことだった。
中国のエリート階級がこのような考え方をしているのであるから、一般の人々はなおさらである。つまり、中国の知識人から一般庶民に至るまで、人生最大の目標のひとつは国を出ることなのだ。国を捨てることなのである。中国人にとって、中国というところはほとんど未来のない居場所で、とにかく中国を捨てて出たいのである。これこそ中国人の真実であろう。
■ 嫌っているはずの日本の国籍を取る中国人
中国社会科学院の統計によれば、外国に出て行った中国人がどれくらい帰国しているのかというと、せいぜい二割で、八割の人間が帰国していない。だから、中国人は愛国心が強いというのは真っ赤なウソであるといってよい。
中国でアンケート調査をすると、どんなアンケートでも一番嫌っている国は日本と答える。しかし、日本では年間約一万人の外国人が日本国籍を取得しているが、実はその半数が中国人なのである。すべての外国人の中で、率先して日本人になろうとしているのが、日本を一番嫌っている中国人なのである。
しかし、この五千人というのは小さな数字だ。二十年ほど前、中曽根首相が十万人留学生計画を打ち出したが、今や中国からだけで十万人近い留学生が来日し、それよりはるかに多い密入国者が日本に入り込んでいる。彼らが犯罪の請負人になることも少なくない。未だ記憶に新しいのは、九州博多での殺人事件だ。ある中国人留学生がわずか数万円で一家四人を惨殺した事件だった。
中国人は日本にばかり来ているわけではない。中国と国境を接するロシアのシベリアにはすでに数百万人の中国人が流れ込んでいる。しかも、年間五十万人ずつ増えているという。生活環境が厳しいにもかかわらず、中国から脱出しているのである。
また、南米にもすでに一千万人以上の中国人が住みついていると言われている。南米は中国とは縁もゆかりもなく、文化もまるで違うにもかかわらず、それほど多くの中国人が中国を脱出しているのである。
■ 政府に操作される愛国心
私は栃木県に住んでいるが、ある日、近くのレストランに餃子を食べに行ったときのことである。その店のオーナーは中国人のお嫁さんをもらっていた。その店で手伝っていたのは奥さんの姪御さんだった。中国語で奥さんと雑談をしていると、突然、その姪御さんの旦那さんを探してくれないかという。初めて入った店で、初めて会って、単に言葉が通じるというだけでとんでもない依頼をされてしまった。
取りあえず私は「そういうことはよく分からないが、どんな条件の人がいいのか」と聞き返すと、その姪御さんは「条件などない。結婚して、日本に残れればいい」という返答だった。試しに「年をとっていてもいいのか」と聞いてみると、「どんなに年をとっていてもいい。日本に留まりたい」と真顔で訴えるのである。
つまり、結婚相手は誰でもいいから、日本に残るために結婚したいということだった。このような栃木県の片田舎の町にまで中国人が生活していて、ここに残ろうと必死になっている姿にある意味で新鮮な感じを受けたが、それ以上に、彼女たちに祖国への愛国心のかけらもないことに驚かされた。
中国人が国を捨てたいと考えているのは、先のロシアや南米の例でも明らかだが、中国人の高官はほぼ全員、子供を外国に送り出し、その中の大半は外国の国籍を取っている。中国人は外国に出たら絶対帰国しないということではないが、外国で国籍を取得したり永住権を取得した後で帰っている。つまり、いつでも中国から出られるという保障があってこそ、中国に帰ってくるのである。彼らが帰国する本当の目的は、勝手知ったる中国で商売することであって、国を愛して、国のために働くという意識からではさらさらない。
中国人の愛国心というのは、中国政府によって操作されているひとつの宣伝であり、もしくは中国人の大衆的娯楽にすぎず、中国人が国を愛することなどあり得ないと言ってよい。中国人の愛国はあくまでも仮面にすぎないのである。
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参考
「中国ガン・台湾人医師の処方箋」林 建良著 並木書房 2012年12月出版