【2012台湾大劫難】2012年までの中国局勢 著者・袁紅氷にインタビュー(三)

【2012台湾大劫難】2012年までの中国局勢 著者・袁紅氷にインタビュー(三)

【大紀元日本】より転載

 今月25日、中国大陸の雑誌『読者』が台湾に上陸、大学などの教育研究機関と各県市町の図書館に並べられるようになった。台湾で初めて発行が許可された大陸の雑誌である。ほぼ同時期、海峡両岸の経済協力協定(ECFA)の締結で加速された中台経済一体化の進展として、中国広東省長が台湾の台南市で、農産物を大量に購入する契約に調印した。

 「市場一体」から「政治統一」へ、文化包囲から政治陥落へ。昨年11月に台湾で出版された法学者・亡命作家の袁紅氷(ユァン・ホンビン)氏の著書『台湾大劫難』で明らかにされた北京当局の対台湾謀略が、シナリオ通りに展開されているように見える。

 国民党を丸め込み、民進党を分裂させ、傀儡党を立ち上げ、メディアを統制し、学者と政治に染まった宗教家を飼い慣らす。そして2012年、中国共産党は戦わずして台湾に勝つ。台湾各界に衝撃を与えた中共の対台湾政治戦略、そしてグローバル拡張の戦略が、このほど『暴かれた中国の極秘戦略』と題する邦訳の出版で、日本国内の読者にも明らかにされた。

 邦訳の出版にあたって、著者は本紙のインタビューに応じ、共産中国のグローバル拡張や、対日戦略の中核、2012年までの中国の政局などについて、日本の読者にメッセージを送った。第二回の世界における拡張の話題を続けて紹介し、更に今年のストライキブームや中共の少数民族問題など、国内の情勢について著者の考えを紹介する。

 かつて北京大学法学部で教鞭を執っていた袁氏は、天安門六四事件に参加したため、その後貴州省に転任させられ、貴州師範大学法学部学部長を務めていた。2004年豪州訪問中に政治亡命し、現在シドニー在住で、中国の民主活動を行っている。

 世界における共産中国の拡張(続き)

 Q:このような拡張に対して、日本や国際社会はどう対応したらいいでしょうか?

 袁:今の肝心な問題は、国際社会は大物の政治家や思想家が欠如しており、世界各国は目先の短期的利益に惑わされ、特に一部の民主国家の政治家やリーダーたちは、共産中国のグローバル拡張戦略についてはっきりとした認識と理解に欠けているということです。

 中共のグローバル拡張戦略の第一歩は、台湾をコントロールすることです。もし我々人類全体として、台湾を自由民主の土地から中共の特別行政区に変身させることを黙って傍観するならば、人類全体が時代的な大災難に近づいているということでしょう。共産中国はそれを利用して更なる強大な政治パワーと経済パワーを吸収するからです。現在日本を含む世界の民主国家は、もし中共が世界を共産主義化させるという人類の大災難の日を目にしたくなければ、まずは台湾の自由を守らなければなりません。それは人類全体の自由を守る重要な第一歩で、現在の急務です。

 世界における中共の拡張は、全方位的に行われています。文化の浸透やメディアの買収、宗教に対するコントロールや知識人の買収などなど。近く出版する『台湾大国策』で詳しく紹介しています。

 2012年までに社会対立が激化

 Q:世界における拡張とは対照的に、国内情勢では多くの不安が見られます。今年から広まったストライキブームはどのような影響を与えるでしょうか?

 袁:ストライキブームはただひとつの現象で、マイルストーンのような事件と言えます。今回のストブームから見て、中国の農民工やリストラされた工場労働者を中心とする権利主張運動が全面的に広まる前兆だと言えるでしょう。89年の六四事件で見られた全国規模の抗議運動に発展することも考えられます。

 近いうち、中共政権に対して全国民が反抗することになると思います。中共暴政が現在、社会全ての階層の利益に害を与えているからです。中共政権に守られている唯一の階級は、権力貴族階層です。

 現在農村部では、土地の略奪が広く行われており、大量の農民たちは急速に土地のない「遊民」になってしまいました。そのほか、大量の退役軍人も職を失い、生存の手段を失っています。更に十数年前に始まった大学拡大募集制度は、大学で大量の失業予備軍を作ってしまったのです。中国の大学は実際、大量の学生に対して有効な学術的教育や訓練はできず、卒業した大学生は実際には、失業集団の主力となっています。現在大学卒業生の失業問題は、年々顕著になっています。とにかく、2012年の中共第十八回党大会前後に、これらの社会コンフリクトが激化すると思います。

 Q:最近中国で起きたことから、中共内部が混乱しているというメッセージが読み取れます。例えば、国内のBaidu(百度)検索エンジンでも、江沢民前国家主席が海外で訴訟されたニュースが見られたり、李鵬前総理の六四事件についての回想録が海外で出版されたりしています。これについてどう読めばよいでしょうか?

 袁:混乱しているというメッセージを生じさせた原因は主に、内部官僚のコンフリクトが激化しているからです。現在内部の対立は非常に激しく、権力闘争と富への争いを繰り返し、そしてお互いに責任を回避しようとしています。彼らは皆、中共政権が60数年の間に重ねた罪をほかの人に押し付け、自分の関わりを回避しようとしています。

 Q:袁さんは六四事件後、長い間、体制内の教育機関の上層部に務めていました。六四事件の後、多くの中国知識人は中共体制の受益者となっているようですが、中共体制の下で袁さんのような人はほかにもいるのでしょうか?

 袁:良識ある人はたくさんいます。ただ六四事件の後、共産党の国家テロの圧制下で、多くの人が恐怖を感じています。また、当局は知識人に対して大規模な経済買収を行っているため、中国の知識層は一時的に中共の共犯者に堕落しました。腐敗した権力、汚れた金銭、堕落した知識、その3つが合わさり、現在の中共暴政と鉄血同盟を組む形になっており、中国15億の国民に対して独裁専制を行っているのです。

 ただこの20年間、中共政治の発展と変化につれて、中共暴政の政治危機の進展と同時に、知識層も目覚め始めています。中共政権が危機に近づければ近づくほど、知識人は覚醒します。その点に私は確信を持っています。

 中国の民族問題:中共の党文化と各民族の伝統文化の間の対立

 Q:あらゆる社会危機の中、新彊やチベット人に対する圧制が顕著となっています。著書『自由在落日中』(自由の落日)の中で、内モンゴルでの中共の民族ジェノサイドについて詳細に書かれていますが、中共の少数民族政策はどのように理解していますか?チベットや新彊での抗議事件は民族対立が原因なのでしょうか?

 袁:中国の民族コンフリクトは、漢民族と少数民族の間の対立であるという見方は、非常にずれていると思います。共産党が中国を統治してきた60年の間に、まず絶滅させたのは漢民族文化、つまり中国の主体文化です。1957年の反右派運動から文化大革命まで、徹底的に中国の伝統文化を破壊しました。漢民族の大量の文化人が迫害され死に追いやられたのです。これらの知識人を歴史上から消滅した結果、中国文化の精神は消えてしまいました。文化的には、中国という国はすでに滅びたのです。中共暴政が漢民族の文化を徹底的に壊滅した結果、漢民族は、文化的精神、文化的基礎のない、魂のない「生ける屍(しかばね)」となってしまいました。

 中共政権と各少数民族との間のコンフリクトの根本は、中共はマルクスレーニン主義という共産党文化を用いて、少数民族に対して徹底的に文化的なジェノサイドを実施したいと考えたところから来ています。それがいわゆる中国の民族対立の核心なのです。中共の民族政策の中で、いわゆる漢民族と少数民族の区別は存在しません。漢民族であれ、少数民族であれ、共産党の幹部はみな同じ政治塹壕に立っています。彼らの言葉で言えば、「同志」です。共産党はある人をチベット族だとか朝鮮族だとかいうことで迫害することはありません。共産党の思想を信じ、共産党の政治、経済や文化的な奴隷になれば、共産党から経済的・社会的な利益を獲得できるのです。だから、中国ではいわゆる民族対立というものは存在しません。唯一存在する対立は、共産党と少数民族の間の対立であり、その焦点は、共産党の党文化が少数民族に対して文化的なジェノサイドを行うことです。つまり中国での民族対立は、共産党文化と各少数民族の伝統文化の間の対抗なのです。

(完)

(記者・趙莫迦Zhao Mojia)


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