3月22日夕刻、本会が主催した「台湾総統選挙見学ツアー」に参加した一行約50名は、
台北・淡水にある「海中天」というレストランにおいて、3台設置された大型テレビの
画面から台湾総統選挙の開票速報を見守っていた。
台湾の開票速報は「中選会」(中央選挙委員会)、「媒体」(報道)、「総部」(各
選挙対策本部)の3つの開票状況が同時に映し出される。「媒体」の数字が先行し「総
部」がそれに続く。もちろん「中選会」の数字が確定数字でもっとも遅い。
午後4時に投票が締め切られ、開票速報がはじまってから馬英九候補が終始リードして
いた。
私どもがレストランに入った5時半すぎ、中国国民党の馬英九候補は民進党の謝長廷
候補に100万票以上の大差をつけてリードしていた。すでに大勢は決まっていた。午後6
時過ぎ、馬英九氏に当確が出た。溜息がもれた。
開票結果は、馬英九候補が7,658,724票(58・45%)、謝長廷候補が5,445,239票(41・
55%)と221万票もの大差をつけて圧勝した。翌日の「中国時報」と「聯合報」は立法
委員選挙と同様、見出しに「狂勝」と付してにぎにぎしく報道していた。
投票率は76・33%とあまり伸びなかったが、例えあと10%(約170万票)伸びて、その
すべてが謝候補に投票したとしても、謝候補は当選できなかった。
総統選挙と同時に行われた2つの公民投票は、投票率が36%と、公民投票の全有権者
(17,313,854人)の半数以上という規定をクリアーできず不成立となった。
ちなみに、民進党が提案した台湾名による国連加盟には5,881,589票(有効得票率=
33・97%)、中国国民党が提案した中華民国などによる国連復帰には5,686,369票(有効
得票率=32・84%)と、公民投票では民進党が約20万票上回っていた。
台湾の総統選挙の分析はすでに多くのところで出ている。管見では、その中で最も的
確な分析はメールマガジン「台湾の声」だった。下記にご紹介したい。
この結果をもたらした最大の要因は、いろいろな意味で、やはり陳水扁総統とその政
権運営に対する台湾人の不満である。
民主化が定着し、台湾人意識が今や70%を超えようとする台湾において、いかに中国
国民党を台湾化できるか、これからが台湾人の真価を発揮すべきところだ。
中国は馬英九氏を全面的に支持しているわけではない。むしろ、米国との関係を懸念
している。日本人としては、馬英九政権が今後どのように台湾をリードし、中国、アメ
リカ、日本との関係をどのように舵取りしていくのかを注意深く見守りたい。
一方、大敗した民進党では大幅な世代交代が図られ、恐らく葉菊蘭・総統府秘書長が
謝長廷氏の後任として党内をまとめていくことになるだろう。すでに中国国民党に乗り
換えようとする議員も出ている民進党だが、台湾人の声なき声をどのように救いあげて
改革のエネルギーとしてゆくのかを見守りたい。
当選後、尖閣諸島を日本との領土問題にしようという意向を表明している馬英九氏で
もあるので、今後、反日姿勢を打ち出すことは考えられなくもない。しかし、今のとこ
ろ日台関係を決定的に変更し、敵対させるような要因は考えられない。民主化の流れも
変わるまい。とすれば、政権が変わっても、日本にとって台湾が生命線であることに変
わりはない。
したがって、今後も、WHOなど台湾の国際機関への加盟を推進することや、日本か
らの局長や事務次官級訪問の実現が、台湾の孤立化を引き止め、中国への傾斜を防ぐこ
とになる。日本との政府間交流を促進させ、またこれまで以上に民間交流を深めるべく
微力を尽くしたい。
(メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬)