日本の復興と繁栄を祈る「台湾歌壇」の人々

台湾には日本語が生きている。日本語を普通に話す人々がたくさんいる。美しく正しい
日本語を残そうと活動している「友愛グループ」があり、戦中に日本で戦闘機製作に従事
した台湾少年工出身者でつくる「台湾高座会」がある。

 話すだけではない。書くという方面では、日本の和歌を心の支えとして生きている限り
和歌を詠み続けていこうという「台湾歌壇」がある。俳句の「台湾俳句会」、川柳の「台
湾川柳会」だってある。『台湾万葉集』もあれば『台湾俳句歳時記』もあり、日本人顔負
けの歌や俳句、そして川柳を詠む。

 作家で本会名誉会長の阿川弘之氏は、かつて「文藝春秋」の巻頭エッセイ「葭の髄から」
で「台湾の川柳」について書いている(平成18年11月号)。李琢玉氏の川柳句集『酔牛』
の寄贈を受け、短歌や俳句までは知っていたが、「川柳を作る人たちがゐようとは、およ
そ想像すらしてゐなかつたから、先々月『酔牛』といふ題の台湾川柳句集の寄贈を受け、
内容を見て驚きましたねえ」と、その驚きをつづっている。

 阿川弘之氏と親しくお付き合いされているのが、川柳句集『酔牛』の故李琢玉氏とは大
の親友でもあった蔡焜燦(さい・こんさん)氏だ。ご存じのように、蔡焜燦氏は本会の台
湾側カウンターパートである李登輝民主協会理事長をつとめる一方、「台湾歌壇」の代表
でもある。

 その「台湾歌壇」の人々が、今回の東日本大震災に際して、日本を励ましたいと3月に開
いた歌会(かかい)に献詠の短歌を持ち寄り、募金までしていただいていた。募金は約43
万円(15万元)にものぼり、献詠の歌を添えて交流協会台北事務所に渡されたという。

 ご紹介しようと思いつついささか遅くなったが、ここに献詠の短歌をご紹介したい。一
首一首ていねいに読んでいくと、台湾の人々の日本に寄せる思いがずんずんと心に響いて
はたまっていく。心がふるえ、豁然と奮い起こってくるものを感じる。これが歌の力なの
だろうか。

 なお、献詠の歌は「台湾歌壇」のホームページに掲載され、また歌壇メンバーの新高百
合さんのブログ「台湾魂と日本精神」で紹介されている。

 また、台湾の短歌や俳句、川柳については、やはり阿川弘之氏の「文藝春秋」の巻頭エ
ッセイ「葭の髄から」を紹介した方がよいかと思い、下記に紹介する。

■ 台湾歌壇
  http://www.taiwankadan.org/

■ 台湾からの祈りと激励を短歌で・・・
  http://twnyamayuri.blog76.fc2.com/


献詠─東北関東大震災の被災者の皆様へ

 謹んで東日本大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申しあげます。そし
て被災された方々がご不自由な生活から一日も早く抜け出られますように、日本の一日も
早き復興と繁栄を台湾歌壇一同、心よりお祈り申しております。

国難の地震(なゐ)と津波に襲はるる祖国護れと若人励ます    蔡焜燦

大地揺れ大津波襲ふ難さけし東北の人に幸あれかしと       黄伯超

避難所の夜は寒からう不安だらう大震災を凌ぐ人らよ       高淑慎

国被ふ災厄かくも大なれど我信じゐる大和の民を         高井敬子

福島の身を顧みず原発に去りし技師には妻もあるらん       花城可裕

被災地の生と死の報道見続くる身の暖衣飽食詫びたき思ひに    劉玉嬌

原発にいざ立ち向かう武士たちよどうかご無事に生きてくだされ  陳姿菁

日本人よくじけないで悲しみの倍の喜び返ってくるまで      (同上)

筆談で「日本どうか」と聴く爺の手を取りぎゅっと唇噛み締む   舘量子

被災地に何かをすべきと思へども非力な我は寄付と節電      坂口隆裕

美しき心のふるさとくずれ落つサイコロのよう只黙祷を      鄭 昌

神あらば心の祖国の災難をとくとく鎮め幸ぞ賜はれ        林禎慧

大なゐに津波にも負けぬ日の本の雄雄しき友どち立ち直れかし   (同上)

再三の国難に遭ひし我が友よ春はそこまで近づきしものを     (同上)

冬されば春遠からじと人の言ふ日本の友よいざ団結のあれ     (同上)

神風の生れ代りか原発を護る勇士らに神の加護あれ        陳瑞卿

大地震津波襲へる友邦に両手を合はせ無事を祈らん        江槐邨

未曾有なる大災難に秩序正し日本民族は世界の典範        (同上)

一瞬にて村諸共に影消ゆる遥かより謹みて黙祷捧げむ       黄培根

テレビ見て心痛みただ涙ぐむ一日も早く復国あれかし       高寶雪

東北の大地震津波の情報をテレビで見つつ我涙する        謝白雲

幾度も電話にて無事確かむる昔なつかしき日の本の友へ      林百合

九度地震津波襲ひし日の本の友ら明るく生くるを祈る       陳珠璋

黙々と天災地変に耐へ抜きて復興に励む人ぞ美はし        李英茂

わが涙悲涙と感涙こもごもに被災にめげず生き抜く人ら      (同上)

石巻の大地震と津波独り居の卒寿の師母は如何にぞと聞く     林蘇綿

志して励めよ復興美しの日の本の国不屈の魂           陳清波

大地震原発事故の国難に従容として立ち向かふ日本        荘進源

巨大なる地震に命取られたる御霊の冥福只ただ祈る        荘淑貞

国挙げて未曾有の国難対処する大和魂存亡の秋          姚望林

大地震相次ぐ津波「艱難汝を玉にす」頑張れ!日本        林燧生

悲惨なる災害なれど日本の友よ畏れず出せ底力          林碧宮

涙のみ震災に挑む日本の友よしつかり頑張れ復興近し       (同上)

被災地の皆さまよ気を落さずに諸人こぞりて慰問を捧ぐ      蔡佩香

日の本の被災の民に神々の御加護あれかしとひたすら祈る     呉順江

持ち家もカーもことごと流れゆくテレビニュースに瞼がにじむ   李錦上

地震津波跡形も無く痛ましき慰めの言只祈るのみ         (同上)

荒れ狂ふ津波に退避報道す大和女の勲雄雄しき          (同上)

日の本の民よ頑張れ麗しき故郷(さと)復興の日ぞ遠からじ      黄振聲

何もかも失はれても勇ましく立ち上がる人に賛歌惜しまず     (同上)

雪の夜は如何に過すや校舎にて竦む避難者よ我も眠れず      (同上)

世界中が見てゐる応援してゐると伝へてあげたき避難所の人に    黄教子

恐怖不安寒さに耐へて秩序ある日本と言はれ悲しくもうれし     (同上)

この先の長き苦難の道の辺に咲く四季の花やさしくあれかし     (同上)

曾ての日「吾が国」と呼びし土地なれば此の災害の身に沁みいたし  鄭埌耀

理(ことわり)を忘れし神かや諍はず平和のみ願ふをかくも痛むる  (同上)

台湾歌壇三月二十七日(歌会の日に)

                              台湾歌壇代表 蔡焜燦
                              台湾歌壇  有志一同



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