台湾と中国で「国父」と仰がれる孫文は米国人だった!

日本は台湾の「中華民国」を政府として承認していない。昭和47年(1972年)9月29日、
中華人民共和国との共同声明で同国政府が「中国の唯一の合法政府」であることを承認す
ると同時に、中華民国との国交を断絶、「非政府間の実務関係」と規定している。

 しかし、台湾との交流は豊かだ。日本は中華民国からの観光客などは同政府が発行する
「TAIWAN」パスポートを認め、2005年9月からはノービザで来日できるようになって
いる。2007年からは運転免許証も相互承認し、台湾の運転免許証は日本でも使える。日本
に在住する台湾出身者の外国人登録証明書も、来年度から実施される在留カードの「国籍・
地域」欄では「台湾」と表記される。この表記改正には、在日台湾同郷会や在日台湾婦女
会などの在日台湾人団体、そして本会が大きく寄与したことは周知のとおりである。

 台湾の中華民国では今でも、孫文こと孫中山が「国父」と呼ばれ、中華人民共和国でも
「国父」と呼ばれ、仰がれている。

 孫文は1866年11月12日、清国広東省香山県翠亨村(現中山市)の客家の農家に生まれ、19
25年3月12日に肝臓癌により58歳で死亡しているが、この孫文の国籍が米国籍であること
は、知る人ぞ知る公然の秘密だった。

 時事通信の伝えるところによると、米国在台湾協会台北事務所(駐台アメリカ大使館に
相当)が「孫文は1870年11月24日にハワイ・マウイ島に生まれたとの出生届を米当局に提
出し、米国籍を取得したことを示す資料がこのほど見つかった」ことを明らかにしたとい
う。

 台湾でも中国でも「国父」と仰がれる人物がアメリカ人だった──。なんともショッキ
ングなニュースだ。

 一方、共同通信によれば、その公文書は、7月4日から国父記念館(台北市)と米国在台
湾協会台北事務所の共催で開かれる特別展で展示されるという。7月4日は、奇しくもアメ
リカの独立記念日だ。ブラックジョークなのか、底意が秘められているのか。

 6月17日から台北駐日経済文化代表処では、中華民国建国100周年を記念して「孫文と日
本の友人たち─革命を支援した梅屋庄吉たち」が開かれている。この11月5日からは香港の
アクションスター、ジャッキー・チェンが総監督をつとめ出演作ともなる映画『1911』(原
題「辛亥革命」)が日本でも公開されるという。孫文が大流行だ。

 しかし、振り返ってみれば、孫文と日本の関係は深いが、台湾との縁はほとんどない。
孫文の約30年に及ぶ革命運動中、日本には10年以上も滞在し、「中山」の号は、明治天皇
のご生母である中山慶子の父、中山忠能(なかやま・ただやす)公爵家の前を通ったとき
にその門の表札の字を気に入って「孫中山」と号すようになったと言われ、支援者の多く
も頭山満や宮崎滔天などの日本人志士だった。

 だが、孫文が台湾を訪れたのは2回しかないと言われる。明治33年(1900年)と大正2年
(1913年)の2回で、宿泊した日本旅館「梅屋敷」は、今でも台北駅から歩いて5分もかか
らないところに国父史跡館として残されている。

 台湾が戦後、中華民国に占領されて以来、蒋介石による暴政と圧政がはじまる。そのよ
うな台湾の中華民国体制を脱しようと李登輝が登場して民主化(本土化)を進めたのは周
知のとおりだが、いまだにその台湾が「中華民国建国」を礼賛しているのは、どうにも釈
然としない。違和感だけが強く残る。

 その違和感は、「国父」孫文が米国籍だったことを伝える時事通信のニュースにも現れ
ている。下記にそれをご紹介したい。国父が米国籍なら、総統の米国籍だって許される!?


孫文は米国人?=国籍取得が判明−台湾
【時事通信:2011年6月19日】

【台北時事】国父は米国人だった─。辛亥革命を主導して清朝を倒し、初代の中華民国臨
時大総統に就任した孫文(1866〜1925年)が、革命運動さなかの1904年に米国籍を取得し
ていたことが18日までに分かった。台湾で国父と呼ばれる孫文は当時、清朝政府から追わ
れており、身の安全を確保するために米国籍を取得したものとみられている。

 米国在台湾協会台北事務所(大使館に相当)が地元紙に明らかにしたところによると、
孫文は1870年11月24日にハワイ・マウイ島に生まれたとの出生届を米当局に提出し、米国
籍を取得したことを示す資料がこのほど見つかった。孫文は66年11月12日に中国・広東省
に生まれたが、94年11月24日に革命団体「興中会」をホノルルで設立したことから、この
日を誕生日にしたようだ。

 一方、米国籍をめぐっては、馬英九総統やその家族が保有しているとの「疑惑」が今も
一部で取り沙汰され、敏感な政治問題となっている。台湾の現行法では、公職者の外国籍
保有を禁じている。



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