台湾の6大都市と里町村と県議員の選挙が国民党の惨敗におわり、記事がたくさん出ている。自
由時報の社論にあった通り、「人民の勝利、国民党の大敗、民進党の警鐘」とある通り、民進党の
勝利ではなく人民が勝利したのである。
国民党の大敗は国民党の腐敗、馬英九の中国接近、経済不振などが原因で、有権者は国民党拒否
で民進党に票を入れただけである。その証拠に無党派の候補者が多く当選した。つまり台湾人は反
中国、反国民党で、民進党が独立を放棄して中国路線を採ったことに警鐘を鳴らしたのである。
◆世襲政治家と派閥の敗北
国民党の敗北は世襲の敗北である。連戦の息子と呉伯雄の息子が二人とも落選した。これで政治
家の世襲は大打撃を蒙ったのである。民進党でも蘇貞昌、謝長廷などロートルはすっかり影を潜
め、わずかに蔡英文・党主席の健闘が目立った。
馬英九派の行政院長と国民党秘書長は引責辞任し、国民党副党首のカク龍斌も辞職した。来週の
国民党大会では馬英九が党主席を辞任すると言われている。そして閣僚総辞職となる可能性もある
という。連戦派、呉伯雄派、馬英九派とカク柏村派が壊滅し、内閣も総辞職すれば国民党は人材不
足で新閣僚の任命に苦慮する。
◆無党派の勝利は人民の勝利
台湾の政治は藍、緑、白、黒、紅であると言われている。藍(ブルー)は国民党、緑(グリー
ン)は民進党、白(無色)は無所属、黒はヤクザ(黒道)、紅は中共である。
これまでの選挙は藍緑対抗と言われてきたが、台湾では二大政党の闘争のほかに中国ヤクザ(チ
ンパン、ホンパン、竹聯幇)と中国の影響が強かった。人民は国民党独裁に不満、馬英九の性急な
中国接近に大不満だったが、三月のヒマワリ革命で若者たちが政治力を発揮したあと人民が政治に
興味を示すようになった。
今回の選挙で最も大きな影響を及ぼしたのは柯文哲という名医が台北市長選挙に民進党に入党す
ることを拒否して無所属で立候補し、政党色のない選挙で民衆の支持を得て当選しことである。
国民党の連勝文は国民党名誉主席・連戦の息子で大富豪、中華民国の腐敗を代表するような印象
で、名医とドラ息子の対決では勝負にならなかった。
柯文哲は台北市だけでなく全台湾に政治色のない選挙、台湾アイデンティティを喚起した。ヒマ
ワリ革命後の若者の決起と柯文哲の無所属出馬がピープルパワーを呼び覚ました。人民の覚醒が選
挙の勝利になったのである。
選挙の結果は無所属が12%当選して各都市、各県の県議会では民進党優勢、または民進党+無所
属で国民党議員を凌ぐ多数を制するようになり、今後の政治に大きな影響を及ぼす。6箇所の直轄
市のうち、新北市だけは朱立倫国民党候補が当選したが市議会は民進党多数となった。
◆アメリカと中国は台湾政策の見直し
まだ誰も書いていないが、今回の選挙の結果は中国とアメリカの台湾政策に大きく影響する。
馬英九が政権を取ってから6年の間に中国は台湾侵略で大きく進展した。馬英九の性急な中国接
近、ECFAにサイン、中国人受け入れや経済政策など、中国の台湾併呑は時の問題で後戻りはできな
いと言われてきた。
しかし3月に起きたヒマワリ革命と今回の選挙で国民党は大敗し、人口の約半数を占める6直轄市
のうち5都市が民進党と無所属の市長となった。反中国と反国民党が顕著となったので中国の台湾
併呑計画が大きく後退した。台湾人民は中国の統一(併呑)に反対の意志を明らかにしたのであ
る。
アメリカの台湾政策も大きな変更を求められる。アメリカは終戦から今日まで一貫して現状維持
と中華民国を支持してきた。アメリカは(1)台湾統治当局は中華民国とする、(2)現状維持を
要求し、台湾独立反対、(3)台湾問題は中国と台湾(中華民国)の間で平和的解決すべきという
三条件を要求し続けてきた。
しかし選挙の結果で台湾人民は反国民党と反中国。そして台湾アイデンティティが明確になり、
民主選挙による平和的変遷と台湾独立が可能となった。
アメリカは台湾政策の見直しをしなければならない。これまでアメリカはカーター、クリント
ン、オバマと民主党が親中国政策を維持してきたが、アメリカでも中間選挙で共和党大勝となった
ので今後のアメリカの政治も大変化が起きるだろう。
ピープルパワーとは真の民主主義である。アメリカが台湾人民寄りの政策を採ることに期待した
い。