日本の参議院選挙の投開票が終わった。
自民党と公明党の与党は141議席を有していたにもかかわらず、過半数(125議席)に届かない122議席しかとれず惨敗を喫した。
少数与党となっても、野党の一本化が難しいと見られるため政権交代はありえないと思われるが、与党の萎縮により、国内問題よりも対米関係や対台湾関係への影響が懸念される。
実は、台湾でも政権与党が少数派というねじれ現象のため、国会(立法院)運営に大きな支障が出ていた。
そこに起こったのが、野党の中国国民党議員をリコール(解職請求)対象とする「大罷免運動」である。
台湾で展開されている大罷免運動で、中央選挙委員会は7月18日、5人の立法委員に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票を8月23日に実施すると発表した。
5人はいずれも中国国民党に所属する下記の立法委員だ。
顏寛恒 台中市第2選挙区江啓臣 台中市第8選挙区(前中国国民党主席)楊瓊瓔 台中市第3選挙区(前台中市副市長)羅明才 新北市第11選挙区林思銘 新竹県第2選挙区
すでに8月23日には、南投県を選挙区とする中国国民党に所属する2人の立法委員(下記)に対するリコール投票が決まっている。
馬文君 南投県第1選挙区(元埔里鎮長)游[景頁] 南投県第2選挙区
これで、7月26日にリコールの住民投票が行われる中国国民党所属の24人の立法委員と前台湾民衆党所属の新竹市長1人(停職中)を合わせ、リコール対象者は31人にものぼる。
今後、7月26日と8月23日に賛否を問う住民投票が行われ、リコールが成立すれば60日以内に補欠選挙が実施される。
日本では都道府県知事と市町村長、地方議員や副知事など自治体役員への住民投票によるリコールは地方自治法に定められているが、国会議員を対象としたリコールは法的に定められていない。
しかし、台湾では憲法に定められている。
そもそも、今回の大罷免運動は2024年1月の立法委員選挙(全113議席)で与党が51議席と過半数(57議席)を割る「ねじれ現象」に端を発している。
野党側はこれまで、国民党52議席、民衆党8議席(現在は欠員1)、無所属2議席、計62議席の数の力をもって立法院を牛耳り、立法院の権限を拡大して総統権限を縮小化する法案や政府予算案の大幅削減案を通してきた。
それも、審議を十分に尽くさないまま、強引に採決に持ち込み、数の力で法案を成立させるケースが目についた。
それに加え、中国国民党議員がたびたび訪中したことと相俟って、中国による立法院を通した浸透工作、すなわち認知戦が行われている可能性が指摘されたため、中国国民党の立法委員をリコールしなければ立法院の正常化は難しいと判断されたことから、憲法と公職人員選挙罷免法に則り、立法委員就任から1年を経た2月1日にリコールを求める大罷免運動が罷免案を提出して正式に始動した。
笹川平和財団安全保障グループ研究員の早川友久氏が「台湾『大罷免戦争』」のゆくえ」と題して、今回の大罷免運動を詳しく分析している。
別途、ご紹介したい。
国民党籍立法委員5人のリコール投票、新たに決まる 8月23日実施【中央通信社:2025年7月18日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202507180008
(台北中央社)中央選挙委員会は18日、最大野党・国民党の立法委員(国会議員)5人に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票を8月23日に実施すると発表した。
即日開票する。
リコール投票の実施が決まった国民党所属の立法委員は今回の5人を含めて計31人になった。
いずれも住民投票の実施に必要な署名が規定数を超えた。
今回リコール投票が決まったのは、北部・新北市、新竹県、中部・台中市の各選挙区で選出された立法委員。
前党主席(党首)の江啓臣氏も含まれている。
同日には中部・南投県選出の立法委員2人に対するリコール投票が行われることもすでに決まっている。
今月26日には国民党立法委員24人に対するリコール投票が全国各地で実施される。
(頼于榛/編集:名切千絵)
。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。