日米2+2で台湾の政治的移行期を中国は挑発的行動の理由として使うなと牽制

7月28日午後3時15分から東京都内において、日米安全保障協議委員会(いわゆる「日米2+2」)が開催され、日本からは上川陽子・外務大臣とび木原稔・防衛大臣が、米側からは、アントニー・ブリンケン米国国務長官とロイド・オースティン米国国防長官が臨み、約1時間20分にわたって会談し、「共同発表」を表明した。

共同発表では「自由で開かれたインド太平洋地域を促進するとのコミットメントを再確認」するとともに「中国が国家、企業及び市民社会に対して、政治的、経済的及び軍事的な威圧を用いていること、また、目的を達成するために、技術の転用を通じて軍事上の近代化を促進していることを強調」し、「このような行動は、同盟及び国際社会全体にとっての深刻な懸念」を表明した。

加えて、中国の行動は「インド太平洋及びそれを超えた地域における最大の戦略的挑戦」と位置づけた。

台湾に関しても言及し、「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を改めて表明」して「両岸問題の平和的解決」を促した。

ここまでは、これまでの日米会談やG7サミットで採択された共同声明と同じだが、本誌が注目したのは、その直後に「台湾の政治的移行期が、台湾海峡における挑発的な行動の理由として使われるべきでないことを強調した」と謳われていたことだ。

中国が台湾の政治的移行期を理由に挑発的な行動に打って出ないよう牽制した文言だ。

「日米2+2」はもちろんG7などの国際会議では、広島サミット(2023年5月)やイタリヤのプーリア・サミット(2024年6月)で採択された首脳コミュニケで「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性」に言及してきているが、「台湾の政治的移行期」に言及したのは初めてだろう。

振り返ってみれば、2021年3月に行われた、茂木敏充・外務大臣、岸信夫・防衛大臣、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官による「日米2+2」の共同発表で初めて「台湾海峡の平和と安定の重要性」について強調した。

その後、同年4月の菅義偉総理とバイデン大統領の日米首脳会談における「日米首脳共同声明」で、初めて「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」という文言が現れる。

その後の先進7ヵ国(G7)外相会議、日EU定期首脳協議、日豪外務・防衛閣僚協議(2+2)、そしてG7サミット首脳宣言((2021年6月のコーンウォールサミット、2022年6月のエルマウ・サミット)でも同じ文言を採択したことは周知のとおりだ。

そして2022年5月、岸田文雄総理とバイデン大統領の「日米首脳共同声明」で初めて「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調する」と謳い、台湾海峡の平和と安定は「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素」と強調された。

これらはすべて日本側からの提案で、「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性」は英国やオーストラリア、ヨーロッパでも受け入れる「自由で開かれたインド太平洋」構想や戦略の基軸となっている。

今回の日米2+2において登場した「台湾の政治的移行期が、台湾海峡における挑発的な行動の理由として使われるべきでない」という文言が日米どちらからの提案なのかは不明だが、米国からは在日米軍を再構成し、部隊運用に権限を持つ統合軍司令部を創設する方針が示されたことを思えば、やはり日本側から提案した可能性は高い。

来年のG7サミットはカナダのカナナスキスで開かれるが、このサミットやその前に開かれるG7外相会議や日EU定期首脳協議などの国際会議の共同声明で「台湾の政治的移行期が、台湾海峡における挑発的な行動の理由として使われるべきでない」という文言が入ってくるか、期待しながら見守りたい。

◆日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表 外務省[7月28日]chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/バックナンバーです。