台湾のWHO参加こそが世界の健康を守る鍵  陳 銘俊(台北駐福岡弁事処長)

【産経新聞:2023年5月22日】https://www.sankei.com/article/20230522-M4XU2XAPO5P4JE56LHOYZY5AKQ/

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックから4年目に入り、世界の感染状況は好転し、各国の国境も徐々に解放されて保健ガバナンスの重点はポストコロナ時代における「復興」に移行し始めている。

 各国は国連の持続可能な開発目標(SDGs)でうたわれた健康と福祉を達成するために懸命に取り組んでいる。

 21日からスイスのジュネーブで世界保健機関(WHO)の全加盟国で構成される第76回年次総会(WHA)が開催されるが、残念ながら今年もまだ台湾には招請状が届いていない。

 「一つの中国」を受け入れない台湾に対する中国政府の反対により、台湾は2017年以降オブザーバー参加すらできず、2300万国民は世界の医療ネットワークから不当に除外される状態が続いているのだ。

 しかし、新型コロナウイルスのパンデミック発生時に台湾は先手先手の準備をし、迅速な対応を行ってワクチンや薬品が実用化されるまで、感染の蔓延(まんえん)や拡散スピードを効果的に緩和した。このことは公衆衛生システムや疫学的調査分析システムとともに「台湾の奇跡」として世界の称賛を集めた。今も台湾はWHOから排除される一方で、高度な医療衛生技術や防疫経験を役立てるべく、世界各地への医療支援を通して全人類の健康改善に取り組んでいることを知っていただきたい。

 台湾はSDGsとともに、WHOが掲げる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC=すべての人々が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる状態)」を支持している。具体的には、より柔軟性があり平等な保健サービスのサプライチェーンを構築し、包容性があり公平なUHCを実践し、プライマル・ヘルスケア・システムを通じた疾病予防、ケアマネジメントを提供する取り組みである。

 そこには分野横断的、包括的、革新的なすべての人の健康を核とするグローバル保健アプローチにおけるわれわれの経験を共有し、健康と福祉に関するSDGsの実現加速に向けて支援することが含まれる。

 台湾の衛生福利部長(厚生大臣)の薛瑞元は、今後について「台湾はグローバル保健協力の重要性を実感したうえで、引き続き国際ネットワークと協力交流を進めていき、UHCの最善の運用方式などを共有していく」と表明している。

 われわれはWHOと関連する各関係者、日本のみなさまに呼びかけたい。「台湾のWHO参加は世界がより健康に、より持続可能に、より平等になるために寄与できる」ことを。また「何年に一度かは避けることができない世界規模の感染症などの対処ネットワークの中で台湾を抜け穴にしない」ことを。

 世界各国が手を携えて、共にWHO憲章の「健康は基本的人権」ならびにSDGsの「誰も取り残さない」というビジョンを実現するために、台湾がWHOの各種会合、メカニズム、活動に十分に参加できるよう、台湾をWHOに組み入れることを強く支持していただきたいと願うものである。

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陳銘俊(ちん・めいしゅん)1964年3月、台湾東部、花蓮県生まれ。台北市の中国文化大韓国語学科を卒業後、台湾外交部入り。大阪外国語大(現大阪大)や慶応大への留学経験がある。カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大学客員研究員。許世楷・台湾駐日代表(当時)の補佐官や台北駐ボストン経済文化弁事処の副処長などを歴任し2018年7月から日本の内閣官房にあたる台湾総統府で機要室長を務めた。2021年10月から現職。趣味は語学研究。

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