李登輝先生のご回復を祈りつつ研修─第16回李登輝学校研修団報告(1) 浅見 正

研修生(副団長) 浅見 正

 第16回李登輝学校研修団には成田発の12名、現地合流の11名、そしてスタッフ3名の総員
26名が参加し、11月3日から7日までの5日間の研修に臨んだ。団長は新潟の井貝正基(いが
い・まさき)氏、副団長は浅見正(あさみ・ただし)が務めた。

 現地台湾では総統選挙と立法委員選挙の同時挙行を間近に控えていた。実際、今回の研
修課程の中にもその第一に「台湾総統選挙の現状と展望」というテーマが用意されていて、
実に時宜にかなった研修であると思われた。

現地合流以外の研修生は11月2日(水)18時40分、成田空港第一ターミナル南ウィングに
集合、20時10分(日本時間)BR−2195便に搭乗、台湾桃園空港に向けて出発した。

 同日22時45分ごろ(現地時間)桃園空港到着、現地案内を担当する勝美旅行社の李太太
の出迎えを受け専用バスで淡水の成旅晶賛飯店(研修期間中の拠点ホテル)に向かう。ホ
テル到着後、各部屋の鍵を受け取り翌日の講義に備えて各部屋で就寝。

◆11月3日(木)研修第一日

 ホテルで朝食後、9時30分ホテルロビーに集合、徒歩で研修場所の群策会本部に向かう。
エレベーターで29階に上がり研修室入り口まで来ると、両側に「日本李登輝学校」の旗が
出迎えており、一瞬気持ちが引き締まる。

 10時、始業式開始。群策会秘書長であり李登輝学校副校長である王燕軍先生に代わって
副秘書長の郭昆文先生によるご挨拶があり、引き続き映像による群策会の紹介があった。

実は前夜、桃園空港からホテルに向かうバスの中で引率スタッフの片木氏から、李登輝
先生は大腸ガンの手術を受けられたばかりで、入院中のため最終講義は叶わぬこととなり、
代わりに急遽、蔡焜燦先生にお出で願うこととなった旨伝えられていた。始業式のご挨拶
が副秘書長に代わったのもそのためと思われた。

11時[課程1] 許世楷先生による講義「台湾総統選挙の現状と展望」

 許世楷先生のお話は概略以下の通り。

 現職の馬英九総統の政策遂行能力に対する国民の低い評価と、対抗馬である民進党主席
である蔡英文女史の人間力に対する評価の高まりにより、両者拮抗した情勢。現状では蔡
英文女史が優勢だが、投票日までの80日間でどう変わるか余談を許さない。

 仮に蔡女史が当選しても、それから就任式までの間にも何があるかわからない。中国共
産党は馬を支持している。ほとんどのマスコミ(自由時報を除く)は国民党支持。国民党
は資金力で民進党を圧倒している。民新党はもっぱら個人の寄付金に頼る。

 以上、喫緊の選挙観測を承った後、自由選挙開始以後の台湾選挙制度の変遷と台湾固有
の選挙区事情について詳しい説明を拝聴した。

最後に以下の質疑応答があった

問い:なぜわずか13%の外省人に全土を支配されているのか。

答え:日本人が去った後、白色テロとそれに続く戒厳令が長く続き、恐怖感が植え付けら
   れたことと、その間、国民党政府の教育による洗脳が行われたことが大きい。例え
   ば、日系アメリカ人の調査によると、一世は自分を日本人だと思い、二世は半々、
   三世は自分をアメリカ人だと思う、という結果がでている。やはり教育の力は大き
   い。

14時[課程2] 黄昭堂先生による講義「台湾と日本の安全保障」

 この報告をまとめようとしている矢先に先生急逝の報が飛び込んできた。しばらくの間
キーを打つ気力が萎えてしまい、先に進めなくなる。

 それにしても2週間前にあんなにお元気に、わかりやすい日本語で時にユーモアを交えな
がらたっぷり1時間半も講義してくださったばかりだったのにと思い、信じられない気持ち、
悔しい思いで一杯である。謹んでお悔やみ申し上げます。以下にその時の先生のお話を要
約する。

1.戦中、アメリカは戦後の台湾統治のためにコロンビア大学を中心に綿密な研究をした。
 統治の困難さを読んで、台湾を素通りして沖縄にアジアの軍事的拠点を置いた。アメリ
 カが台湾を占領していたら、いずれ台湾は独立できていたのではないか。

2.戦後日本が中華民国を支持した本当の理由はその経済的価値に重きを置いたから。当
 時から90%以上の石油が中東からインド洋、東南アジア、を経て台湾海峡経由で日本に
 送られており、今もその事情は変わっていない。

3.戦後の日本人の間に言われた対蒋介石恩義論(1.シナ派遣軍100万を無傷で帰還させ
 た。2.国家賠償を放棄した。3.日本の分割占領を阻止した。4.天皇、国体を救っ
 た。)は岸首相主導による働きかけのため。

4.日本の国体が護持されたのはアメリカの知日家、親日家のおかげであって、蒋介石の
 おかげではない。8月15日に重慶における国民党の会議で蒋介石は昭和天皇は戦犯である
 と宣言していた。

5.日米安保条約の極東条項の「極東」とは「フィリピン以北から台湾、朝鮮半島、日本」
 つまり台湾は日本の安全のための死活的重要地域であり、安保条約が機能する限り台湾
 はなにもしなくとも平和は保たれるとも言える。

6.日本は千島列島の全部と南樺太の領有権を主張できる。?江戸時代の対ロシア千島樺
 太交換条約、?日露戦争後の南樺太の日本への割譲。

7.南沙群島への領有についても日本は口を挟む資格がある。昭和14年に日本の支配下に
 置き台湾に帰属させていたのだから。

8.今の日本に言いたいこと。「守れない領土は持つな」「日本が強くなることはどの国
 も求めている、安心して強くなって欲しい」「『沖縄』には油断するな、いくらお金を
 つぎ込んでも満足されない」「本土の日本人が沖縄の人たちと一体感がもてるか、とい
 うことが肝心」

 以下のような質疑応答があった。

問い:なぜ「台湾」と名乗ろうとしないのか。

答え:自信がないから。アメリカ、日本が反対するから。

問い:日本の政治家とのパイプはあるのか。

答え:言葉の障害が大きい。意思疎通が可能な共通語を持てるか。(英語?日本語?中国語?)

                                   (つづく)


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