李登輝先生のご回復を祈りつつ研修─第16回李登輝学校研修団報告(2) 浅見 正

今回で16回目を迎えた本会の「台湾李登輝学校研修団」は去る11月3日から7日まで行わ
れた。参加者は26名、団長は新潟県支部幹事で研修団常連の井貝正基(いがい・まさき)
氏、副団長は早大卒業後、英語教師を務めていた浅見正(あさみ・ただし)氏。

 研修に入る直前の11月1日に李登輝元総統が大腸癌の緊急手術を受け、研修生はご回復を
心から祈りつつ諸先生の講義を拝聴し、野外活動に望んだ。昨日(12月8日)から浅見氏に
よる「研修団報告」を掲載している。本日はその第2弾。


16:00 [課程3]黄天麟先生による講義「日台経済の現状と共存合作の方向」

 黄天麟先生のお話を以下に要約する。

1.戦前戦後を通じ、同じ運命の下にあった日本と台湾は現状においても類似性を持って
 いる。「失われた20年」という言われ方はどちらにもある。

2.日本の抱えている問題は、為替と中国決起(興隆)による。台湾は周辺化という宿命
 的な働きの脅威にさらされている。周辺化とは、大きな経済体の周辺にある小さな経済
 体は必然的に弱体化させられるということ。

3.日本が自滅する道は、「良い円高(円高も悪くない)論」と「中国との共同体論」
 で、ゆがんだ市場の中では「円高も良い」といっていられるものではない。また共通な
 土壌がない日中間には共同体は不可能である。

4.バブルの崩壊と物価上昇という問題を抱えている中国と共同しようとすれば、いずれ
 中国に吸収され消滅する。歴史的教訓とも言える。

5.「台中共同市場」を阻止するための環太平洋経済圏として内圏と外圏の構築を。内圏
 とは日本、台湾、フィリピン、オーストラリア。外圏とは韓国、カナダ、アメリカ、中
 南米、インド。

6.日台共同経済戦略として考えられること。1)日台間におけるFTA締結と技術協
力、
 投資協議の推進、2)TPPへの参加、3)発展途上国への投資、4)各国と協力して
 人民元切り上げへの圧力。

7.やってはいけないこと。1)中国と共同すること、2)台日中の黄金三角関係を築こ
 うとすること、3)東アジア共同体をつくろうとすること。

 以下の質疑応答があった。

問い:デフレを解消するにはどうすればよいか?

答え:日本はお人好しである。1)各国が自国通貨安のための政策を意図的に行っている
   のに、日本だけが為替は自由市場にまかせるという原則を律儀に守っている。2)
   世界が反対するといって気兼ねしている。3)たまに介入しても額が小さすぎて効
   果がない。いまならインフレになるおそれはない。

問い:日台FTAの可能性はあるか?

答え:問題は少なくプラスの要素が多いが、中国が反対する。正式な国と国同士の関係を
   認めようとしない。ただ台湾はWTOの正式メンバーだから中国の横やりをはねの
   けることはできるはずだ。
 

 その他、以下のような質問が活発に出され大変熱のこもった時間となりました。

問い:デフレ対策には円を刷るだけではなく、同時に国民の生活向上に結びつくような適
   切な政策を伴う必要があるのでは?
問い:消費税を上げようとしているが、その政策については?
問い:デフレに消費税では日本経済がつぶされるのでは?
問い:宗教法人や天下り官僚に大幅課税をすれば良いのでは?
問い:中国のGDPの統計の中には台湾の分もかなり含めて発表されているように思われ
   るが、その割合はどのくらいか?
問い:台湾は対外的に負債はないと聞いているが?

 17時、第1日目の講義を終え、ホテルへいったん戻り、改めてホテルを出て徒歩で「海中
天」というレストランで夕食。黄天麟先生、副秘書長の郭先生もご臨席された。緊張と充
実の長い一日が終わり、テーブルごとに初めて研修生同士の自己紹介があり、気分がやっ
とほぐれたところで本格的な台湾料理に舌鼓を打った。

◆11月4日(金)研修第2日

9:00 [課程4]李雪峰先生による講義「台湾少年工と高座海軍工廠」

 大東亜戦争末期、日本本土で働く人員不足による募集に応じ、8000名を超える10代半ば
の台湾出身少年たちが日本に渡り、神奈川県の高座海軍工廠で少年工として働き、迎撃機
「雷電」の生産に携わった。その日本時代を経て、戦後、台湾に戻ってから今日に至る苦
難の歴史を拝聴した。

 厳しかった少年工時代を立派に乗り切った誇りと自信が、長い戒厳令下の台湾で頑張っ
てこられた原動力となったこと、少年工として働くうちに育んだ本土の人たちとの暖かい
交友関係が、今でも日台双方の高座会として続いていることなど、受講生に感動を与える
お話で、翌日、翌々日の台湾高座会の人たちとの興隆に期待を抱かせた。

10:40 [課程5]羅福全先生による講義「台湾の国際機関加盟について」

 かつて国連大学に10年間勤務された経験をお持ちの羅福全先生による台湾の国際機関加
盟についての歴史的経緯、台湾の抱える複雑かつ微妙な立場を踏まえた問題点、そして今
後の展望をわかりやすくご教示くださった。

 群策会本部講義室における主な受講はこれで終了。最終日の修行式とその前に行われる
李登輝元総統に代わる蔡焜燦先生による最終講義を3日後の楽しみとして群策会を離れ、午
後から野外活動の2泊3日の旅に出ることになる。

12:10 群策会からMRT紅樹林駅へ徒歩で行き、高速鉄道(台湾新幹線)の台北駅へ。
13:36 台北駅を出発。
15:02 嘉義駅に到着、専用バスで阿里山へ。
18:30 阿里山(沼平)ホテル阿里山閣大飯店に到着。夕食後、ホテルのバスで、少し下
    ったところの土産店街で買い物などに興じた。
                                   (つづく)


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