日本李登輝友の会愛知県支部・岐阜県支部共催 秋季講演会
講師:安倍晋三元内閣総理大臣
「国家主権の確立と東アジアの安定」
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わが国は二つの大きな課題がある
 外交で混迷する民主党政権だが、わが国は二つの大きな課題がある。ひとつは財政問題。二つ目は、台頭する中国と如何に付き合っていくか。これは、どこが政権を獲っても取り組まねばならない問題。一つ目は、時間がないが簡単にいえば、経済を成長させるしかない。長い年月で出来た借金、皆で飲み食いしたわけではなく(一部、そんな人もいるが・・・)インフラが残っている。借金がなければ、これらも無いのだから、皆で返して行こう。家を建てるのに借金をする。それが悪いわけではない、分相応かどうかが問題。今の借金は分不相応。ならば支出を抑えなければならないし、経済成長をさせる。。今、民主党政権は収入が借金を下回る事が生じた。自民党政権時代には1回もない。日本で一回、昭和21年終戦翌年、経済活動が出来ないときに起きた。戦争中ですら税収が上回っていたが、民主党政権で子供手当、高校無償化などのばら撒きで易々と、そのハードルを越えてしまった。安倍政権の時は、54兆円の収入に借金25兆円、ま、自慢話をしている訳ではないが、もっとも大切なこと。成長していくことで株価が変わる、年金に影響が来る。成長していくアジアのパワーを日本に取り込む。成長させようとしていく精神が必要。

もうひとつの問題「中国」
 共産党一党が支配しながら市場経済を導入している、史上例を見ない国。共産主義とは一党独裁「我慢しろ」という理屈は、将来は結果が平等、格差の無い社会を作る。必要に応じて収入があるから、ユートピアまでは、堪えろ。となるが、結果の平等を捨て、アメリカに代わる経済大国を目指したが、共産党の一党支配が残っている。これは、おかしいだろうと普通は思う。
成長の保障、つまり「今年より来年の方が収入が多いですよ」と徹底した愛国教育。これが、反日教育になっている。「日本を負かしたのは我々だ」というもの。
 しかし、現実に日本と戦ったのは国民党であるが、彼らの歴史では、そうではない。また、今でもその危険性(日本からの侵略)があるかも知れない。あなた方(人民)を守れるのは中国共産党。世界に威信を見せ付けられるのは中国共産党としている。経済成長には資源が必要。2020年には米国の石油消費を上回るといわれている。そこで海外に資源を確保する。1980年にひとつの論文が中国の雑誌に載った。国力に応じて領土・領海、排他的経済水域を決めるというもの。
 かつてナチスドイツが唱えた「生活圏」と似ているといわれる。国力が増強すれば、そのためには資源を確保しなければならない。この資源を確保するために軍事力があり、その軍事力があれば、国境を変えることが出来るというもの。
 中国はこの20年間で軍事力を20倍にした。彼らは、はっきりとした目的を持っている。国民の生活を削って軍事力を増強し、成長させ資源を確保する。これが、中国共産党の支配を支える大事な柱であり国家意思である。その延長線上にあるのが、東シナ海の活動であり南シナ海の活動、尖閣でのチャレンジングな対応である。
 フィリピンは、反米運動が起き、米軍を追い出してしまったが、間髪いれず中国が獲った。漁船が行き、次に軍艦が出てくる。今回も同じパターン。通常、漁船はその領域で漁をするもの。国家がやっていることであり、国益を鎬ぐ戦いを行っている国への対応をしっかりしないといけない。かつて李登輝さんが立候補したときに落とそうとして台湾海峡へミサイルを撃ち込んでいる。

誤った政治メッセージが危機を招いた
 冷戦緩和のためにケネディとフルシチョフが会談した。フルシチョフは、カストロから要請されているミサイル基地を断り続けたが、ケネディとの会談後、ケネディを見誤り、建設を推進した。しかし、ケネディはタフであった。誤った政治メッセージが、世界を核戦争の渕にまで立たせるような危機を招いた。
 民主党政権になり、鳩山さんが「日・米・中」を正三角形と言った。わが党でもそんなことを言うのがいるから参っちゃいますが・・・。日中韓首脳会談があったときに鳩山さんは、「日本はややもすれば、日米同盟を重視しすぎた。中国を大切にしたい」と言った。アメリカはこれにビックリした。
 アメリカの国防高官は、おそらく中国はこう言うでしょう「自分たちのことを重視する、アメリカよりも重視する。そう言っていただくことは『本当に有難い』と思うと同時に、この日本の指導者は本当に『バカだなあ』と思う・・・」 「日米同盟の重要性を全く分っていないんだなあ、コイツは・・・」と。
 その間に自分達は準備をしようとしたのだと思う。そして習近平国家副主席と天皇陛下の会談。天皇陛下のご健康を維持するためにも会談は1ヶ月前に申し込まなければならないというルールがあり分があった。
 日本に来る首脳は、天皇陛下との会談を望んでくる。それを大きな国とか小さな国とかで差別せず、ルールに則って選別する。しかし、それを変えてしまった。天皇陛下は日本の権威であり、それを中国側が言えば、この権威を変えることができることになる、ということをやってしまった。
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