台湾独立建国聯盟日本本部 林 省吾
中国の大プロパガンダメディア「環球時報」は11月7日、今年8月に再任した玉城デニー沖縄県知事への特別インタビュー記事を掲載した。玉城知事の「我々はもう米軍基地の負担に我慢がならない」発言を引用し、環球時報は日本が沖縄を「台湾有事は日本有事」となった際の盾と見做し、沖縄の民意を無視していると批判した。
第一列島線における沖縄の重要性は疑いのないもので、在日米軍基地の70%が沖縄県に集中していることがそれを証明している。沖縄県民にとって、基地によって多くの不便を被っていることも事実であろう。玉城デニー氏が代表を務める政治団体「オール沖縄」はこれまで建設中の辺野古飛行場に反対してきた。だが彼らが望む沖縄からの米軍の全面的もしくは部分的撤退の可能性はどれほどあるだろうか?
2009年に普天間飛行場問題に対し「最低でも県外」を打ち出し、政権を勝ち取った民主党の鳩山由紀夫は、首相就任から一年も経たないうちに、飛行場の県外移転は実現不可能であると公に認めた。それは安全保障の観点から米軍が沖縄駐留部隊を撤退あるいは減少することの可能性が「ゼロ」であることを示した。10年前の当時と比べて情勢がさらに深刻になった10年後の今も、この事実はもちろん変わらない。
米軍が沖縄から撤退する可能性がゼロであるなら、真に問題を解決しようと思う政治家であれば、米軍といかに共存し、基地が沖縄に与える影響を最小限に留めるかということに焦点を移すはずだ。しかし最近、玉城知事は度々公の場で「二度と沖縄を戦場にさせない」ことを理由に、自衛隊と共同訓練中の米軍の与那国島自衛隊施設の使用に反対するなどの発言をした。自分の反戦色を強化するため、米軍と自衛隊はまるで平和の破壊者であるかのように批判した。
第二次世界大戦後、日本人は戦争というこの二文字に対して著しく過敏に反応する。ロシアがウクライナを侵略した時にも、日本国内にはウクライナへの支援に反対する声もあった。さらには「ウクライナが抵抗をあきらめれば戦争はなくなる」とまで公に表明する者までいた。これも日本で反戦主義がもてはやさされる理由でもあり、また同時に、憲法改正がいかに難しいかも分かる。近年、日本国内の世論調査によれば、国民の九割が台湾海峡で戦争が起こることを心配し、七割が自衛隊は米軍とともに中国と戦争をするべきではないと考えている。このことは日本人が未だに自衛隊に「自衛」のレッドラインを遵守してほしがっていることを示す。だが同時に六割以上の日本国民が、自衛隊は敵地攻撃能力を保有すべきだと考えており、これは防衛に対する世論の考え方が消極的から積極的なものに徐々に変わりつつあることを示している。
わざと問題を解決せず、反対に問題を深刻化させて対立を作り出し、自己の政治利益を確保しようとする政治家は、日本でも台湾でも少なくない。同様に、台湾にも選挙が近づくにつれ、「反戦」を切り札にして、台湾独立建国聯盟の台湾安保協会が呼びかける「台湾を守り絶対に降伏しない承諾書」に署名する者は戦争がしたいのだと責め立てる国民党や民衆党の政治家も増える。こうした反戦論は国民の自己防衛意識を弱めようとするものであり、中国の思考と図らずも(?)一致するものである。政治家の言動が敵国の言い分と合致している時には、その背後に敵国勢力の支援があるかどうかにかかわらず、少なくとも利敵行為だと言っても過言ではない。
沖縄の話題に戻ろう。玉城氏は沖縄県知事選挙で勝利したものの、オール沖縄が推薦した候補者は那覇市を含む沖縄県市長選挙で七連敗を喫した。さらに、「政治化しすぎている」という理由により、オール沖縄を離脱した支援企業も出ており、オール沖縄からすでに民意が離れたとも論じられている。玉城デニーがこのような時に環球時報のインタビューを受けたことは、どう見ても、自己の政治生命を引き延ばしたいがために危ない賭けに出たように思える。だがこれはまた、日本の民主制度を利用して日本の民主主義を破壊し、反戦論を宣伝することによって戦争への地ならしをさせる機会を中国に与えていることに等しい。沖縄の基地問題を解決することはもちろん重要であり、どうすればよいのか明確な答えはまだ見つかっていない。しかし、その答えとは絶対に玉城デニーではない。
参考URL:
環球時報の玉城デニー沖縄県知事インタビュー(中文)
https://m.huanqiu.com/article/4AMmhhkVc7t
「捍衛台灣、絕不投降」フェイスブック
https://neversurrender.tw/
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