彼我(ひが)の差

彼我(ひが)の差
           王 明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)

通常、「彼我の差」という言葉を使う時、たいていは他者に対して劣る自分を省みる場合が多い。

が、今、私は誇りを持って、彼我の差を考える。つまり、中華人民共和国の若者と台湾の若者の差である。

中国で激しい反日運動デモが行われたことは記憶に新しい。2012年の反日デモの時には、学生たちによって、日本企業に対する大規模な襲撃、傍若無人な暴力行為が行われ、日本人を震撼とさせた。後に分かったことは、彼らは、政府からの動員された若者達だったということである。それもそのはず、一党独裁国家で、自由な言論活動は厳しく制限されているのだから、官憲の目の届く場所で自発的な大規模なデモなどできるはずがないのである。日当、バスでの送迎、横断幕、全て準備の上での官製デモであった。

それにひきかえ、今、台湾で行われている学生デモの素晴らしさよ!非暴力を徹底し、状況に応じて組織化し、伝達には、可能な限りの有効な手段を使って、公平に人々に周知している。まさに、民主主義とはこういうものだというお手本となるデモ活動である。世界史上、稀に見る、秀逸な民主活動であると言える。

学生たちが本気で台湾の民主政治を守ろうとする気持ちは、全島の学生達、教授達、親達はもちろんのこと、台湾の将来を憂える人々に届き、運動はまだ拡大している。

馬英九政権は学生たちの要求を単なる「中台サービス貿易協定」イシューとして取り扱おうとしているが、考え方の次元が違いすぎて噛みあうはずもない。金融、運輸、医療などの分野での市場開放の問題ではない。学生たちが守ろうとしているのは、自分の国「台湾の将来」なのである。

馬英九が台湾を売ろうとしている相手、中共の市場は共産党にコントロールされ、諸民族への弾圧、簒奪がまかり通る国である。国が生まれてわずか65年という点を考慮にいれても、この65年間、中共がどういう国づくりをし、国民を育てたか、非常に疑問に思い、憤激に堪えない。中共の若者は、民主主義の何たるかを台湾の若者から学ぶべきだろう。
国民党は、潤沢な資金を持つ世界一金持ちな政党であると言われている。それなのに、なぜ、中共との統一を図ろうとするのか大いなる疑問である。何か、もっと大きな見返りをもらう約束をしているに違いないと誰でもが勘ぐりたくなる。

台湾に陽が当たらないようにと、常に台湾に黒い大きな影を投げかける中国という存在。しかし、世界は今、台湾から漏れ出る光を見ている。私たちの先輩たちが固い土に撒いた種が芽を出し、ついにここまで育った。ひまわりの苗は、いつか大きな花を咲かせることができると私は信じている。(2014.4.1)

2014.4.3 20:00掲載


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