台湾独立建国聯盟日本本部 林 省吾(りん しょうご)
先日アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)は、中国が台湾に向けて侵略戦争を起こした際の状況について、異なる24パターンのシミレーションを行った。着目すべきは、全ての結果において中国は侵略に失敗することと、日本は必ず当事者になること、この2点である。対岸の火事を見物する余裕などないのが、日本の現実だ。
しかし、日本の政治家は事態の深刻さを理解していない。台湾有事の対策として、邦人保護についてしか考えていないのである。まるで日本人を台湾から脱出させることさえできたら、日本は安泰だと思い込んでいるようだ。現に最近流行りの国会議員の台湾訪問では、民進党政府に日本人が脱出する際の協力を要求するだけで、肝心の日米台安保に関する話は出てこない。
お忘れだろうか。日本に米軍基地があることを。
一度有事が起これば、中国は日米の援護を阻止するため、必ず駐日米軍基地を攻撃する。日本は台湾有事に巻き込まれるのではなく、そもそも日本自身が中国の標的であることを認識しなければ、誤った判断を下すことになりかねない。例えば、台湾に進出した日本企業は有事の際に備え、駐在員を退避させる対策を講じたが、各社の主な対策とは、航空券を予め確保することだという。
残念ながら、この対策は致命的な過ちを犯している。第一に、中国の第一波攻撃は必ず台湾を空から封鎖するため、民間機の出入りは極めて困難である。在台邦人15000人が脱出するだけでも100便近くが必要であり、有事の際にこれほどの数の民間機を飛ばすことは不可能に近いのは明らかだ。第二に、仮に船で日本人を台湾に一番近い日本領土の与那国島や、その先の石垣島まで運搬したとする。しかし、現地には15000人を受け入れる避難所やシェルターがない。あったにしても、そちらも台湾と同じく戦地と化すことは変わらない。
要するに、台湾有事に対して日本政府が講じようとしている邦人保護の対策は、むしろ日本国民の命を危険に晒すことにしかならない。台湾にいる日本人、日本にいる日本人を守るには、日米台の安全保障を築く以外には方法がない。先日行われた岸田総理とバイデン大統領の日米首脳会談でも同じ方向性が示された。今後は具体的なハウツーを精査することが急務になるだろう。
日本は台湾有事に巻き込まれるのではなく、台湾有事の前に日本有事があるかもしれない。この状況をしっかり理解した上で、当事者として課題に向き合い、解決する政治家を選び出すことは、日本国民全員の責任だ。
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