参議院選挙に出馬する「対中強硬派」平野雨龍
台湾独立建国聯盟日本本部 中央委員 林 省吾
来る7月に、第27回参議院議員通常選挙が開催される予定だ。
東京選挙区に、これまでにない異色の人物が登場した。
日本人でありながら香港の民主化運動に身を投じた平野雨龍(31)である。
活動家から「対中強硬派」の政治家へ
筆者は香港の雨傘運動の時期からすでに平野の存在に注目していた。
着物モデルとして活動していた彼女は、しばしば着物姿で抗議の場に現れた。
アジアの政治にあまり関心を持たない日本社会の中で、彼女の存在は際立っていた。
筆者は2年前、東京で開かれたアジア少数民族の活動で彼女と知り合い、昨年は筆者主催の「奔走護台灣」ウォーキングイベントにも彼女は参加してくれた。
SNSでは、平野氏は早くから「香港革命活動家」として活躍していたため、選挙活動を始める以前から、彼女の知名度は日本よりも台湾や香港での方が高かった。
昨年末に新宿駅南口で街頭演説を始めた当初は、ネット中継の視聴者数が現場の聴衆を上回るほどだった。
しかし、彼女の動画が拡散され始めると、直接彼女の主張を聞きに来る人が徐々に増加し、日本の有権者の中でも彼女の存在が意識されるようになり始めた。
そして平野氏が有権者の注目を集めることに成功した大きな理由は、「対中強硬派」としての立ち位置を明確に打ち出したことである。
「亡国の危機」で有権者の意識を喚起
平野氏は初期の街頭演説で、主に香港、ウイグル、チベットなどの民族が中国で受けている迫害を例に挙げ、日本も中国に対する警戒を強める必要があると訴えていた。
選挙が近づくにつれ、彼女の主張はより明確になり、「中国による人口侵略」が進行していると強調し、「中国人の移民・帰化規制」といった政策も打ち出した。
「亡国の危機」を有権者の危機意識に訴えかけているのだ。
実際、中国人による日本国内での迷惑活動が目立つようになっている。
最近では「蝦夷富士」として知られる北海道の羊蹄山が中国人によって無許可で開発・破壊されたという事例も報道され、日本での「中国による静かな侵略」が可視化された。
こうした背景から、平野氏の主張に有権者が共感し始めつつある。
もちろん、反中の急先鋒としての平野氏は「小粉紅(中国共産党支持者)」の標的にもなっている。
SNSでは彼女を中傷するアカウントが現れ、現場にも彼女にヤジを飛ばしたりゴミを投げつけたりする中国人がいる。
6月初め、新宿南口での演説中に、若い中国人男性が車道を歩いて近づき、背後から彼女を襲おうとしたが、警察に現行犯で逮捕された。
これらの行為が組織的なものかどうかの証拠はまだないが、昨年6月に平野が香港への入境を拒否された事実からも、中国当局にマークされていることは明らかだ。
東京選挙区は改選+補選で計7議席
参議院議員の任期は6年。
選挙は中選挙区制で行われ、3年ごとに半数ずつ改選される。
今回は東京選挙区で6議席が改選されるのに加え、残り3年の任期を埋める補選が1議席ある。
現在、出馬を表明している候補者は18名にのぼり、7議席をめぐる争いとなる(得票数7位は3年の任期)。
過去2回の選挙結果から見ると、公明党、立憲民主党、日本共産党、日本維新の会の各党に1議席ずつ確保する力がある。
自民党は2議席分の票を持つが、2議席目はぎりぎりの争いとなる場合が多い。
今回、変数となるのは国民民主党で、前回の衆院選では一定の成果を上げており、今回は東京選挙区に2人の候補を擁立している。
改革中道を掲げるこの党の動きが、各党の票を分散させ、選挙の行方をさらに予測困難にしている。
筆者の推測では、東京選挙区の当選ラインはおおよそ45万〜50万票と見られる。
素人の政治参入の壁は高い
問題は、平野雨龍がまったくの政治素人であり、組織票の支援がないことだ。
今回の選挙は「0.5議席」増えたことで、平野氏にとって突破口が開けるチャンスとなるが、依然として高い壁が彼女の目の前にある。
31歳の平野氏は、公約の中で国会議員に「定年制」の導入を打ち出し、「老人政治」を打破しようとしている。
しかし、ジバンカバンを備えた既成政党に囲まれる中で、わずか1か月あまりで当選ラインに届く票を獲得するには、「反中」という分野でさらに過激なアプローチを用い、知名度を全国区にまで押し上げ、有権者の意識を目覚めさせる以外に道はないかもしれない。
「政治に無関心でいれるが、政治と無関係ではいられない」
若者を含む有権者が政治に関心を持ち、実際に投票に足を運ぶかどうかが、平野雨龍の当選への鍵となる。
彼女は街頭演説でこう語っている:
「私たちは政治に無関心でいられるが、政治と無関係ではいられない」
この言葉は、日本だけでなく、台湾、さらには全世界に通じるメッセージだ。
政治への感度を保つことこそが、自分たちの暮らしと未来を守る手段なのだ。
選挙結果がどうなろうと、平野雨龍が今回の参議院選挙で「台風の目」になれるかどうかは、日本の有権者が中国にどれほど危機感を持っているかのバロメーターになる。
逆に言えば、平野雨龍にとって最大の「応援者」は中国そのものであり、彼女がそれをどう活用するかが鍵にもなるだろう。
中国の野心が世界中に及ぶ中、日本人がすでに「反中」で動き出しているのに、台湾人がまだ「親中」の国会議員を放置していてよいのだろうか?
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