一歩後退二歩前進・蔡英文の対米外交

一歩後退二歩前進・蔡英文の対米外交

「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)

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米下院議長のケビン・マッカーシーの訪台、蔡英文総統の訪米、
これが実現すれば台湾にとっては一歩前進である。

しかし3月6日英フィナンシャルタイムズの記事によると、
蔡英文総統の米国訪問は正式訪問ではなく、中南米のグアテマラとベリーズ訪問の際に米国中継(トランジット)をする形になったとリーク。
そしてケビン・マッカーシー下院議長とは台湾ではなく、アメリカで会うことになったと報道。

米下院議長のケビン・マッカーシーの訪台、蔡英文総統の訪米、
蔡英文とケビン・マッカーシーが妥協したとのことだが、これを見ると一歩後退。

フィナンシャルタイムズによると、蔡英文総統がケビン・マッカーシー下院議長に対し訪台をしないように説得(convince)したと書かれている。
この記事は事実か。
今までの台湾サイドとのやり取りの中で、この真意は真実とは思えない。

台湾サイドから事前に得ている情報によると、
1.ケビン・マッカーシーの訪台を歓迎していること
2.蔡英文総統の正式訪米をしたい意志が強いこと

この二つの件に関して台湾側はすでに準備を着々としていた。
米国会もケビン・マッカーシーこの準備をしていたのだが、バイデン政権が逆の意見を持っている。
バイデン政権にとって、この二つが実現されると困る。
なぜなら、バイデン政権は中国に対して融和主義、刺激をしたくないと思っているから。

蔡英文総統がケビン・マッカーシー下院議長に対し訪台をしないように説得した背後には、バイデン政権が蔡英文総統に圧力をかけたと考えた方が良い。
台湾政府は米現政権の圧力に抵抗できない。
ホワイトハウスはよくフィナンシャルタイムズに情報をリークして、世論の反応をみることが多い。

バイデン政権は23年2月21日に蔡英文総統の側近である吳釗燮外交部長(大臣)と顧立雄国家安全会議秘書長をワシントン近郊のバージニア州アーリントンにある米国在台湾協会(AIT)本部に呼び寄せ、アメリカ側はそこで台湾に圧力をかけたと考えてよい。

バイデン政権から歓迎されない立場にある蔡英文総統が、訪問の形を変えてでもアメリカに行く意味とはなにか。
1.台湾の存在感を示す。
2.アメリカ国民に台湾を直接アピールする。
3.アメリカ政界と財界とのパイプ作り。
4.無形のタブーを破る。

台湾だけにメリットがあるわけではない。
アメリカにもメリットがある。
1.アメリカは民主主義のリーダーであることを内外に示す
2.アメリカは法治国家であることを内外に示す。
3.アメリカ懐疑論を払拭する

バイデン政権が蔡英文総統訪米とケビン・マッカーシー下院議長訪台に積極的ではない理由。
1.ウクライナ戦争による米軍武器弾薬の不足、このタイミングで中国を刺激したくない。
2.台湾で米軍の武器弾薬を備蓄するための武器弾薬庫を進めるために中国を刺激したくない。
3.バイデン政権は中国と話し合いをしたいがために、中国を刺激したくない。

蔡英文総統がアメリカでケビン・マッカーシー下院議長と会うことはどういう影響をもたらすか。
1.蔡英文総統がバイデン政権に恩を売る。
2.中国の反応がヒステリックになればなるほど、アメリカ国民の中国に対する反感度は増す。
3.それでもケビン・マッカーシー下院議長はいずれ台湾を訪問する。
4.台湾は面子を捨て実を取る。アメリカ国内では法律を実行させるために、更に新たな法案が作られる動きが出た。

実際は一歩後退二歩前進ともいえる。


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