台湾の声ニュース 2014.4.12 12:07
学生たちが立法院の議場から撤退した翌朝(11日)、立法院の入り口付近で座り込みデモを続けていた民衆が「ソフト」な強制排除を受けたが、これで、管轄署である中正一分署が千名の民衆に囲まれ、分署長の方仰寧が「口頭で辞意を表明した」と伝えられる事態に発展している。
第一の問題は、もともと方仰寧は「排除しない」と表明していたのに、早朝になって強制排除を始めたという点。
そして、第二の問題は、強制排除を受けた人々が、蔡丁貴氏のグループであり、彼らは、長年、道路の使用許可を受けて立法院の脇にテントを張って抗議を示している「公投護台湾聯盟(公民投票で台湾を護る連盟)」グループだったのに、警察側が「立法院占拠に手を貸した」ことを理由に、その許可を取り消し、「この団体には永遠に使用許可を与えない」と表明して、強制排除を行ったこと。
これらに怒った蔡丁貴氏が、抗議の自殺をしようと大型バスにぶつかっていったことで、この問題が人々に知られることになり、また立法院占拠をリードした黒色島国青年陣線も蔡丁貴氏を支持する立場で声明を出し、立法院占拠中の道路使用許可が蔡氏のグループが得ていたものであったことを明らかにした。
これらのことで、24日の流血の強制排除の問題への怒りもあり、ネットで台湾大学の大学院生が「(事前許可を取らない)通りがかりデモ」をすることを発表し(「呼びかけ」ではないことにより法の禁止している態様を回避している)、それにあわせて、自発的に千人近くが集まり、「違法な集会」として排除しようとする構えを見せた警官らともみ合いが発生した。
学生たちは、「どうして白狼(張安楽)の“通りがかりデモ”は取り締まらないのに、今回の“通りがかりデモ”を取り締まろうとするのか?」という警察側のダブルスタンダードが問題視されている。
このデモについて、評論家としても活躍する黄越綏氏が仲介役を名乗り出て分署長と交渉し、謝罪と辞職の申し出、執行が適正であったか審査を受けるという考えを引き出した。
「通りがかりデモ」は、警察署前に残って抗議をしたいという声もあったが、デモを発起した台湾大学の大学院生は、最初に「通りがかり」と言ったのに別の形に発展させるのは、騙すようになってしまうので、と帰宅をよびかけた。
これらのことがあったこともあり、立法院前の中山南路付近には、今日も、抗議の学生たちが座り込みをしている。学生たちの戦いは長期戦である。
今回の警察署「通りがかり」デモの背景には、中国国民党が政権に返り咲いてから、法律は同じなのに、政権に有利かどうかで恣意的に運用しているという不公平感が民衆に広まっていることがある。
また蔡丁貴氏はもともと台湾大学の教授であり、学生たちが敬意を持っていること、また蔡氏のグループにはわりと年配の人たちが参加しているが、長幼の序を日本よりも重視する台湾社会にあっては、その年配の人たちを、警官が無理矢理に排除したことが学生たちの怒りを集めたこと、そして2度も道に飛び出して自殺を試みる状況に追いやられた蔡丁貴氏への同情なども民衆の怒りの背景だ。
ちなみに、デモを事前申請しなければならないという法律について、集会の自由との関係で憲法判断が示され、突発的な事件の場合は申請を必要としないという判断が示されている。今回の警察署前のデモについて、司法の場で違法とするのは難しいであろう。「集会デモ法」が政権の道具となっている現実にも学生たちは抗議しているのだ。
今回のヒマワリ運動には、恣意的な国家権力の運用に対して、法による支配を守るという台湾人の意思があり、官庁街を管轄する中正一分署が国家権力の執行者として厳しい批判に直面している。