【AC論説】西部(中国)戦線異状ナシ

【AC論説】西部(中国)戦線異状ナシ

         Andy Chang 

昨9日、米ホワイトハウスは、トランプ大統領と中国の国家主席習
近平は“長くて非常に友好的な”電話会談を行い、トランプ大統領
は習近平氏の要請により「一つの中国」政策を尊重すると述べたと
発表した。この発表についてメディアはトランプが習近平に一歩譲
った、または「トランプ0:習近平1」と勝ち負けの表現をしたの
もあった。一方ではトランプは「一つの中国」を認めなかった、ト
ランプの勝利と言うメディアもある。

ホワイトハウスの正式発表によると、トランプは習近平の要請によ
り、“我々のour「One China」政策を尊重する”とある。つまりトラ
ンプは習近平の要請により、中国の「一つの中国」を尊重すると言
ったのではなく、「米国本来の一つの中国政策」を尊重すると答えた
のだ。これは大きな違いである。

米国のOne ChinaとはA、三つの米中コミュニケ、B、台湾関係法、
C、台湾安全保障6か条、である。

中国の「一つの中国」とはA、中国と台湾は一つ、B、中国の首都は
一つ、C、中台92共識があった、である。

つまりこの電話会談の結果、中国は「トランプが中国の「一つの中
国」を尊重するとした」と発表した。しかし米国は「アメリカの一
つの中国政策を維持することにトランプと習近平が同意し、発表し
た」、と言うのである。

●米中双方の違った解釈

この電話会談の前日に、トランプは習近平氏に8日遅れの旧暦正月
の年賀状を送ったと発表していた。トランプが大統領に就任したあ
と、16か国の国家首脳とメールや電話の交換があったが中国とはな
かった。だから8日にトランプが先に中国に年賀状を送り、これが
9日の電話会談となった経過は米国が中国に一歩譲ったと解釈され
ている。

電話会談のあと、中国は早速、習近平の要請によりトランプが「一
つの中国」を尊重すると言ったと発表し、米国を含めた諸国のメデ
ィアは早速このニュースをトランプの譲歩と解釈した。ところがそ
の後のホワイトハウスの正式発表を見たらトランプは米国の中国政
策を重ねて述べただけで、譲歩していないことがわかった。

●汝説我説、西部戦線異状ナシ

米中合意に解釈が違うことは双方の主張に違いがあり交渉が難航す
ることである。合意がないのに合意があったと強弁するのは南シナ
海や尖閣諸島が「中国古来の領土」と言い張るのと同じく無頼の手
口である。

92年に中国と台湾が初めて会談を行った。会談のあと中国側は「中
国と台湾は一つ」であることに共識(つまり双方の合意)があった
と主張し、台湾側は「会談は“汝説我説”つまり双方が意見を主張
し合っただけ。合意は無かった」と言う。これが中国の強弁する「92
共識」である。台湾が蔡英文政権になったあとでも中国は「92共識」
を認めろと要求し、台湾は「92共識」を認めない。このため中台交
渉は停頓したままである。

トランプ・習近平会談は、米国が「一つの中国」を認めた、認めて
いない、と言う水掛け論である。米中間の共識に双方の譲歩はない。
交渉は長引くと思われる。

●狸と狐の化かし合い

トランプは「一つの中国」を米国の政策と主張し、習近平は「一つ
の中国」は中国の原則と主張した。習近平は電話会談の「結果の発
表」を提案しトランプは同意した。ところが習近平は米国が原則に
同意したと言い、米国は中国が我々の政策を認めたと言った。狸と
狐の化かし合いである。米中関係は少しも変わっていない。米国は
将来いかなる状況においても中国の嘘の主張を承認しないだろう。
中国が「嘘を引っ込めて」譲歩しない限り新しい発展は困難である。

「一つの中国」は「中台92共識」と同じく嘘である。この二つは中
国交渉の阻害となるだろう。トランプ政権となっても米中関係は少
しも進歩していない、西部戦線異状ナシである。そして諸国にとっ
ても「一つの中国」は中国と交渉する際の阻害となるだろう。

トランプ・習近平の電話会談は米国の現状維持政策がまだまだ続く
ことを示唆していると思える。トランプが当選した後「一つの中国」
に疑問を呈したので台湾側はトランプが米国従来の現状維持政策を
少しづつ変えていくかもしれないと期待した。だが米国の政策がト
ランプ政権でどのような発展をするかはまだ見えていない。


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