Andy Chang
2月27日、米国の国務院次官シャーマン(Deputy Secretary of State
Department Wendy Sherman)はカーネギー平和基金会で行われた戦後
70周年記念会で「国家主義者的な感情につけこみ、政治家たちが、
かつての敵をけなして安っぽい拍手を浴びるのは難しいことではな
い。だが、そのような挑発はマヒを引き起こし、先に進むことはな
い」と指摘した。
日中が尖閣諸島を巡り緊張を高めていることや、中韓と日本がいわ
ゆる従軍慰安婦問題に関して争っていることなどを例に挙げ「理解
はできるが、イライラさせる」と述べた。韓国のメディアは早速、
米国は慰安婦問題で米国が日本の肩を持つようになったと報道した。
シャーマン次官は台湾についても問題発言をしている。日中韓だけ
でなく台湾でも強い反発を引き起こした発言は、彼女個人のアジア
に対する理解のなさ、オバマ政権のアジアピボットが口先だけで実
際には中国問題に対処できない証拠である。
●シャーマン次官の台湾の平和
カーネギー平和基金会の戦後70周年記念会議でシャーマン次官は
米国のアジア・リバランスについて講演した。講演のあと、記者が
台湾の現状について聞いたとき「最近の台湾はワシントンで余り議
題に上がらない。これはよい現象だ。これは台湾の状況が安定、繁
栄している、中国との関係が健全である証拠だ」と述べた。
次官は更に、「一つの中国と三つの連合公報は既に常態化(Standard)
して、台湾と中国の経済が一体化していることが「現状維持」の現
状である」と述べた。つまり台湾は中国の領土である中国の主張を
受け入れた発言であった。
続けてシャーマン次官は、台湾と中国の問題は時間が解決するはず
だと述べ、更に「世界各地と同じように、台湾と中国の関係は上下
があるに違いない。しかし今のところ憂慮すべきことが起きていな
いのはよい事だ。つまり平和と繁栄があることは適当な生活がある
こと(There is more just life)だ」と付け加えた。
シャーマン次官は、東アジアの平和はオバマ大統領の残る任期中の
アメリカ外交の焦点である。そしてアメリカと12カ国間のTPP協定
は年内に合意を見るだろうと述べた。
●台湾人民の反応
台湾では多くの人が彼女の発言に敏感に反応し、失望と警戒を顕わ
にした。シャーマン次官は台湾の政治についてコメントを避け、台
湾の政治は台湾人民に任せると述べた。だが台湾が平和で安定して
いるのはよい事、中国との関係が平和と繁栄があるというのはアメ
リカの勝手な親中路線、恐中病の証拠である。
シャーマン次官は「一つの中国と三つの連合公報が常態化した」と
言う意見を述べた。しかし彼女は「台湾関係法」と「レーガンの6
?条保障」がアメリカの台湾の地位の保障、つまり台湾を中国の武力
侵略から守る約束に言及しなかった。彼女が意図的に安全保障を避
けたのはオバマのアジア政策が中国に対処できない証拠である。
●オバマ政権は「見ざる、聞かざる」
シャーマン次官はアジア各地で起きた、例えば尖閣諸島近海におけ
る中国の艦隻の挑発行為や、韓国の慰安婦問題などは「理解できる
がイライラさせる」とは米国がイライラするという事なのだ。
米国は口先だけ、見ざる聞かざるで動かない、これがオバマの政策
である。アジアの他にシリアでイスラム国の暴徒が捕虜やキリスト
教徒を虐殺してもオバマは何もしない。シャーマン次官が「アジア
はオバマの残る任期中のアメリカ外交の焦点である」と言ったのは
紛争があれば米国はイライラするが何もしないと言うことだ。
●台湾の現状と米国の態度
台湾人民の民主と人権を無視し、中国の台湾に対する経済侵略を「平
和で繁栄はよい事だ」とは、台湾で実際に起きている現状を無視し、
「中国と事を構えるな、大人しくしろ」と台湾人民に圧力を加えて
いるのである。
台湾関係法も、レーガンの6ヶ条保障も「台湾海峡の安定を保証」
するアメリカの保障である。オバマは中国の覇権行為を抑えきれず、
台湾の安全も保障できない。中国に反対するな、アメリカは中国を
抑止出来ないこと、台湾人に対する圧力、人権無視である。
去年のヒマワリ学生運動で台湾人の愛国意識が高揚した。台湾は中
国の領土ではない、台湾人は中国人ではないという主張が公然と言
われるようになった。国民党独裁に公然と反対し独立意識が高まり、
独立を主張するようになった。去年11月の6大都市の市長選挙と地
方首長の選挙では国民党が大敗した。
シャーマン次官が述べた、台湾と中国の経済関係が安定すれば平和
と繁栄が得られると言うのは事実ではない。台湾の経済は10年以上
も衰退を続けているが、その最大の原因は中国投資で資金が還流せ
ず雇用が減少している事である。しかも馬英九は中国人の移入を助
長し、馬英九の中国優先政策が人民の憂慮の主因である。台湾の平
和と繁栄は事実に反する。
シャーマン次官は「台湾の政治は台湾人民に任せる」と述べたが、
事実はその正反対で、彼女が台湾と中国が平和を維持すれば経済が
繁栄すると言ったのは、台湾人民の独立意識を抑えて国民党が政権
を維持する、つまり来年の選挙で民進党が勝利しないよう干渉を行
っているのだ。
2012年の総統選挙のとき、アメリカのダグラス・パール元AIT主任
は投票二日前に台北で国民党支持を表明し蔡英文が落選した。明ら
かな政治干渉だった。今回の発言もそれに類似したものである。
●諸国は米国に期待するな
台湾はアジア諸島の中央に位置している。台湾を失えばアメリカは
アジア防衛力を失う。だがオバマは弱腰で、中国はオバマ米国を見
くびって暴挙を繰り返している。
シャーマン次官の発言で明らかになったのは、一部の台湾人が自己
欺瞞で主張する、米国は台湾の占領権を持つとか、決定権を持つ、
などはウソと言うことだ。米国は台湾の占領権は持たないし、台湾
防衛についても責任回避をしている。
有事の際には日米安保は機能しないだろう。台湾関係法も有事の際
は機能しない。アジア諸国はオバマ政権に期待してはいけない。ア
ジアピボットは口先だけで中国の尖閣近海の勝手な行動や南シナ海
の島々の占領と軍事構築を見て見ぬふりをしている。
オバマは信用できない。二年後の大統領選挙で共和党が勝てばアジ
ア回帰は現実となるだろう。だが大切なのは諸国が現在の中国の脅
威に自力で対処すべき、防衛力を増すべきと言うことだ。