【AC論説】「台湾統一」計画の終焉

【AC論説】「台湾統一」計画の終焉

          Andy Chang

前号で来年の総統選挙で国民党の洪秀柱公認候補に反対する委員が
増えて党の混乱を招いたと書いたが、昨日7日に国民党本部で行わ
れた中央常務委員会(中常委)では洪秀柱を更迭する声が高かった。
しかし党本部の前では洪秀柱の支持者が大規模なデモを行っていた。
国民党は中央常務委員会で洪秀柱の更迭を票決する予定立ったが意
見がまとまらず17日の臨時大会で決めることになった。

洪秀柱を更迭する理由は彼女の「終極統一」が民意に反するからだ。
つまり中国と国民党の統一計画が頓挫したことである。中国と台湾
の在台中国人が推進してきた「終極統一」が失敗したのである。

●中央常務委員会の混乱ぶり

前号の「国民党の瓦解」に書いたように、来年の総統選挙に国民党
の公認候補となった洪秀柱の人気が低迷しているので、選挙に出る
立法委員の候補者たちが洪秀柱と一緒に選挙運動をやらなくなり、
彼女を交代して国民党主席の朱立倫を立てると言い出したのだ。

公認の候補者交代は党の規則に反するだけでなく前代未聞である。
それにも拘らず国会議員の選挙で3分の1の議席を確保できないと
言う危機感が強く、洪秀柱を降して朱立倫を立てれば立法院(国会)
で3分の1の議席を確保できると期待している。3分の1の議席を
確保できなければ憲法改正、国民投票法などの重要法案がすべて国
民党の意志に反する結果となり中華民国の台湾化が実現する。

中常委では洪秀柱を降して朱立倫を立てる提案に21名の中常委が
賛成したが、28名が賛成すれば提案が通ると言われる。10月2日か
ら7日の委員会の開催までの五日間に党首の朱立倫は洪秀柱と三度
会見したが、洪秀柱は交代を拒絶したため、7日の中常委で公認候
補のすげ替えを提案して投票に持ち込む予定となったのだ。

7日朝、中常委の開会前に国民党本部は洪秀柱の選挙対策に任命し
ていた4名の助理党員を更迭した上で、洪秀柱の支持者を内部に入
れないため門前に鉄条網バリケードを張るといった破天荒な処置を
行った。

中常委の開会では、馬英九総統が「党の決定に従う」と発表し、続
いて4人の元老、連戦、呉伯雄、呉敦義、王金平がそれぞれ「党が
危機に陥っている時は非常処置が必要である」と講演した。続いて
党主席の朱立倫が「洪秀柱の努力には敬意を表する。しかし彼女の
主張する『究極統一』は台湾の民意に沿わない。台湾は現状維持を
望んでいる」と講演した。

これに対し洪秀柱は「終極統一は馬英九総統がこれまで主張してき
た路線である。馬英九総統は私を支持している」と述べて交代を拒
否した。このため候補者交代の票決が取れなくなり、17日に臨時党
大会を開いて決定することになった。洪秀柱は臨時党大会でも最後
まで戦うと言うが、馬英九の支持を失えば敗北は明らかである。

8日朝の報道によると馬英九は洪秀柱に立候補辞退を要求したと言
う。彼女にとっては馬の統一路線を主張してきたのに今では馬に見
捨てられたら最後の防衛線を崩されたことになる。洪秀柱の支持者
は市内で抗議デモを行って交代に反対している。報道では候補者す
げ替えに賛成7・反対3と言う。結論として国民党は統一路線を捨
てて党生き残りの道を探っているのである。17日の臨時党大会まで
いろいろ違ったニュースが出てくるだろう。

●「終極統一」路線の終焉

洪秀柱の「終極統一」は馬英九の統一主張と同じである。馬英九は
「不統、不独、不武(中台の統一をしない、台湾独立をしない、武
力を行使しない)」と呼ぶ実質的な降参宣言をし、中国の台湾併呑計
画に合作してきた。最近になっても「九二共識」(92年に合意した
中国と台湾は一つの国と言う嘘)を繰り返し、今年の春に朱立倫が
中国を訪問した際にも「同属一中」と述べた。馬も朱も洪秀柱の統
一主張に一致している。

馬英九は中国の統一主張を援助するためECFA(経済合作協定)に署名
し、去年は服務貿易協定を国会で通そうとしたためヒマワリ学生運
動で国会を占拠された。11月の市町村選挙で国民党は大敗した。こ
の一連の発展があったので来年の総統選挙には朱立倫、呉敦義、王
金平などが立候補を拒否し、人気のない洪秀柱が公認候補となった
のである。このような状況で朱立倫を担ぎ出しても当選することは
ない。但し国民党はどうしても3分の1の議席を確保したいため、
洪秀柱を降して朱立倫が「現状維持」を主張すれば議員の選挙に効
果があると期待している。

●中国の台湾統一は失敗した

台湾統一は中国の夢であり、国民党の外省人も中国の統一計画に従
ってるに過ぎない。江沢民の時代に始まった台湾併呑計画は着々と
進んでいた。胡錦濤は2008年に令計画の立案した「戦わずして勝つ」
戦略を中共政治局大会議で通した。これによると2012年までに台湾
統一を果たす計画を進めていたのである。

令計画の統一計画は三部分に分かれている、(1)国民党を篭絡し、
(2)民進党を分裂させ、(3)傀儡政党を作る、のである。この計
画は順調に進んでいたが、ヒマワリ運動で挫折し、11月の選挙で頓
挫してした。2012年までに統一を果たせなかった胡錦濤は政権を習
近平に渡して沈黙し、習近平政権は令計画、薄煕来、徐才厚、周永
康などを粛清した。台湾は反中国となり国民党に援助すれば逆効果
になるから中国は傍観している。

●中国の覇権拡張にストップ

尖閣諸島、台湾統一、南シナ海の埋め立ては中国の覇権拡張の三部
作だが、このうち台湾統一が最重要だった。台湾統一に大切なのは
中華民国を温存しておくことである。国民党が選挙に負けてもつぶ
されてはならない。国民党が潰れたら中華民国は滅亡し、中国の台
湾統一はもっと困難になる。

逆に言えば台湾が独立すれば国民党、中華民国をつぶすことになる。
台湾人の独立派はこれまで中国の統一路線に手も足も出なかった。
次の選挙に勝ってもすぐに中国の路線を潰せるわけがない。たとえ
政権をとっても台湾人民は独立に対し準備が足りない。しかも人民
は今の民進党を信用していない。独立を達成するのは民進党ではな
く体制外派の団結が必要であると思われる。


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