【 中国人に弱みを見せてはだめだ】李登輝元総統 インタビュー(3)

【 中国人に弱みを見せてはだめだ】李登輝元総統 インタビュー(3)

時局心話會 代表 山本 善心

山本:最近グアムに行って米軍基地のトップと会いました。アメリカのステル
スファントム22戦闘機、日本のF15戦闘機がコンビを組んで猛訓練してい
るそうです。アメリカは日本の軍事力、航空技術、パイロットの優秀性は世
界一だと言っていましたよ。中国に見せたいとも言っていました。そうすれば
軍拡をやめるだろうと(笑)。

李氏:それはぜひとも必要だ。

山本:「そうなれば中国は歯が立たないということを理解するだろう」と言っ
ていたのが印象的です。

李氏:そうかもしれませんね。ところで今回北朝鮮が韓国の軍艦を沈めて更に韓国領を
爆撃したでしょう。アメリカは一番大きい原子力空母「ジョージ・ワシントン」を
黄海にもっていった。そうなれば中共は黙って見ているしかない。だから、中
国人に対しては決して弱みを見せたらだめなんです。日本は外交で政府が
弱みをずっと見せ続けてきたから中国はいい気になっているんですよ。

山本:ああ、いまのお話、ぜひわが国民に聞かせたいですね。外務省のあ
る職員は『弱みを見せているんじゃなくて、中国の民主化を促進するため
にあえて言いなりになっているんだ!』などと馬鹿なことを言っているようで
す。中国に弱みを見せたらどんどん浸蝕してきます。尖閣が一つの例です
ね。

李氏:たとえば、私の総統選挙1996年のとき、中国はミサイルを撃ち込んで
きた。その後すぐに米国から空母がきました。そしたら中国は黙ってしまっ
たんです。

山本:空母がくるのがわかっていたんですか?

李氏:それはわかりますよ。今だから言えますが、当時日米台で数カ月かに
一度お互いに情勢の交換会議やっていました。ですから三国間の関係は非
常によかったのです。しかし、日本の外務省の連中はびっくりするほどだめ
だったなあ(笑)。

山本:朝鮮戦争のときも第七艦隊が台湾海峡にでてきました。米国が朝鮮戦
争で戦っているときも台湾を心配してくれたんですね。。

李氏:そう。朝鮮戦争があったから蒋介石政権は維持された。その代わり台
湾からもある程度応援にでたのでしょう。

台湾はあくまで「現状維持」だ

山本:70年前もこれからも、アメリカの台湾に対する重要性は変わらないでし
ょう。問題は米国発の「一つの中国」という誤ったシグナルです。中国の軍拡
や挑発を正当化する危険きわまりないものでした。中国の暴走を制止する
には米国は「国と国との関係」と発言すべきです。

李氏:そもそも、シーレーンの中心は台湾なんですよ。「台湾海峡の現状維
持」というのはアメリカが取り出した問題で、この台湾をどう活かすかを台
湾の指導者は考えなくてはいけません。しかし、今の政府はなにも考えてな
い。わかっていないんです。ただ、中国と行き来さえすれば問題は解決する
と思っていますが、それは違う。武者小路実篤の言葉を引用するならば、「君
は君、私は私、だけど仲良くやっていきましょう」ということですよ。

左翼勢力に牛耳られる日本の行政

いまの民主党も同じ。私は若いころ、唯心論も色々やったけど、唯物論、
マルクスの弁証論はだめ。物と物の関係しか言っていないから。人間の社
会は心と物と、そのうえに神がいる。この考え方が非常に重要です。日本で
はなにかあると右とか左に分けますが、これもよくないと思いますね。右も左
もないんですよ。

山本:残念ですが、今の日本ではそうはいきません。日本社会は、完璧に左
の勢力に牛耳られています。元北朝鮮工作員や元核マル派の流れが大量
に各省庁に潜入し、とくに法制局は完全に牛耳られていると聞きます。つま
り、彼らに日本の行政権力が仕切られていると言ってよいでしょう。当時航空
幕僚長だった田母神俊雄氏が愛国主義者的な発言をしたらその日に更迭さ
れたくらいですから。一方、民主党25人の職員のうち23人は旧社会党系出身
者や一部勢力に牛耳られていると聞きます。鳩山前首相は彼らが書いたも
のを会見で読み上げていただけとも言われ、日本は左翼勢力の天下だとの
見方があります。

李氏:そうですか。かつて日比谷公会堂で坂本竜馬の船中八策について講
演したことがあります。私は明治生まれの官僚を見ているので、そうしてみ
ると今の日本の官僚、総理が無能になっているということですかね。

山本:残念ながらまさしくそう言わざるを得ません。それは国民の大勢が思
う気持ちですが、日本の政治と外交は、国民の気持ちや時代の変化に適応
できないばかりか改革にブレーキをかける勢力がいます。すべてが、先送り
事なかれ主義で何も解決できないんです。

「日本は世界最大の個人資産を生かせる」

李氏:私にいわせると日本は日本銀行が問題です。まず日銀を整理してい
かないといけないと思います。個人資産について言えば、世界では日本が
一番高いんですよ。そういうのをうまく活用しないでバブルがはじけて20年
近く経ってもまだ国民を困らせている。国民の生活はいまのような苦しい生
活じゃなくて、もっと余裕のもてる政策をとるべきだと思います。3%くらいの
インフレ政策で、利息も3%くらいにあげたら年金生活者もずいぶん助かり
ます。このお金は正常な金融システムの中に入ってきますから、日本として
は効果的な対外投資をすることができると思います。

また日本の政治形態を変えるには「みんなの党」みたいに日本を道州制
のような形で8州に分けて地方に権力を持たせる。そうすると地方が少し強
くなって中央集権が強すぎるのを拡散し、バランスがとれます。それと、日本
はなんでも世襲するのもあまりよくないですね。作家の山崎豊子さんは、考
え方は左翼だけど日本の欠点をよく著しています。「華麗なる一族」とかに
ね。

山本:それはまさしく正論ですね。震災で見せた原発担当の経産省の事後
処理は機能不全でした。右往左往するばかりでいったい何をしていたのか
さっぱりわかりません。

李氏:私から言わせれば、日本で本当にしょうがないのは外務省です。1999
年に起きた台湾の大地震では、当時曾野綾子氏が会長だった日本財団が
すぐ援助に来てくれて、台湾でも非常に強い「捜救総隊」ができました。今回
の東日本大震災では恩返しの意味で、すぐにこの救援隊を派遣すべくずっ
と連絡をしていたのですが、外務省は「受け入れの準備ができていない」の
一点張りでした。結局日本へ行った救援隊の35人は山梨県甲府市にある
NPOの救援隊と共に被災地に行き、大船渡あたりで救助活動をして来まし
た。

山本:あ〜、もっとお話ししたいのですが時間です。あらためて今回の震災
でたくさんの義援金を頂き感謝申し上げます。また、たび重なる外務省の非
礼に対し日本国民の一人として申し訳なく存じます。また本日は中身の濃
い本音のお話を頂きましてありがとうございました。

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6月「時局国際会議」のご案内

「双英対決・2012年台湾総統選の行方」

講師/「台湾の声」編集長 林建良(りん けんりょう)

馬英九政権の下で、台湾経済の中国依存がますます深まり、台湾はいずれ中国に併呑されるのではないかと危ぶまれている。来年一月に行われる総統選挙の行方はどうなるか。
民進党候補に決まった蔡英文党首が政権奪還の任務を果たせるか。

日 時/6月29日(水)午後6時
会 場/ホテルルポール麹町 麹町会館
3F「アメジスト」
東京都千代田区平河町2−4−3
!)03-3265-5365

参加費/8,000円(食事付) ※当日欠席は会費をご請求いたします。
連絡先/?03−5832−7231

※すでにお知らせしている方には、重複してのご案内となりましたことをご
容赦ください。
※お弁当の準備等ございますので、ご参加希望の方は前日までにご連絡
いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。